普通にダメでは?
……よし、コツを掴んだぞ。
羽ばたく速度や強さ以外に、羽ばたく角度っていうの?
羽を下に下ろす時の角度も重要なんだな。
この角度調整で、その場待機や前進、後退までお手の物さ。
「滅茶苦茶神経使いますね」
「そう? 怪我しないだけスノボやスキーよりは気軽に出来ると思うけどなぁ」
「落下したら怪我しますよね?」
「翼から着地したらノーダメージだよ?」
まぁ、それもこの相部屋の人からのアドバイスあってからだけど。
……というか、もういいよね?
「日本人ですよね?」
「そうだよ?」
あっさり白状するじゃん。
いや、確率が低いものの例えがパチスロだったり、今も日本のレジャーを例に挙げていたりとあからさま過ぎたんだよな。
だからまぁ、隠してはいないんだろうなって。
最初は翻訳魔法か? と思ったけど、何と言うか、今までの感じよりしっかり伝わってる感じがしたし。
……というか、
「絶対パッキー食べたことあったでしょ」
「まぁね。でも、人から貰った食べ物のほうが美味しく感じるじゃん?」
「否定はしませんけど」
他人の金で食べる焼肉がいっちゃん美味いってそれ一番言われてるから。
ちなみに現在は相部屋の人と一緒に次のチェックポイントに向かっているところ。
俺の空中移動の速度に合わせてくれてるから、この人、結構このツアーに参加してるんだろうなって。
「ちなみにだけど」
「何でしょう?」
「明後日くらいに背中の筋肉痛凄いから」
「へ?」
「艇内のお店で買える筋肉痛に効く軟膏、買っといたほうがいいよ」
まぁ確かに、普段使わない筋肉使ってるからなぁ。
筋肉痛もやむなしか。
これ知らなかったらツアー中に筋肉痛で動けないとかならない? 大丈夫?
「お疲れ様でした」
「気を付けて甲板に着陸ください」
というわけで最終チェックポイントも通過。
これより着陸態勢に入る。
「真っ直ぐ降りるんじゃなくて、斜めから着陸するイメージで」
「ふむふむ」
「最初は五点着地法がいいよ。一番安全」
「甲板でやると痛くないです?」
「骨折るよりマシでしょ」
「それもそうですね」
で、当たり前に流したけど、五点着地法って何?
両手両足を同時に地面につけて着地する方法か?
でもそれだと四点だな。あと一点……顎? な訳ないか。
「お手本見せるよ。よく見てて」
あ、ありがたい。
これを真似すればいいわけね。
えーっと? 着地した瞬間に膝を曲げて衝撃を殺しながら倒れ込んで……。
どこが五点?
めっちゃ簡単そうにしてたけど……。
「着地と同時に膝曲げて、衝撃を殺しながらお尻、肩って順番に接地していって」
……あー、五か所に衝撃分散させる降り方なのね。
難しくない?
そう一発で出来る代物とは思えないけど……。
とりあえず見よう見真似でやってみるか……。
「あ、早い」
「え?」
俺の足の裏が接地する寸前、相部屋の人が何か呟いた気がしたけど……。
俺には届かなかったというか、それどころではなくなったというか……。
「折れてはいないと思うけど……」
という言葉が全てを物語っていますね。はい。
「……いってぇ……」
*
「五点着地法なんて練習してないのに無茶過ぎるでち」
「いやぁ、やれそうだなぁって」
「それで怪我したら洒落にならんでしょうよ……」
現在飛行艇内の医務室。
なぜかって?
初めての五点着地法で全く勢いを殺せずに着地した結果、尻と背中をしこたま強打したからです。
ちなみに足の裏と膝の曲げは上手くいってたらしい。
ただ、着地する速度と、お尻、背中と衝撃を分散するどころか集める形になってしまい、現在に至る。
「普通は着地寸前に羽ばたいて、ブレーキをかけて降りるんでち!」
「あ、なるほど」
「次から気を付けなよ?」
誰のせいでこうなったと……。
容体的には打撲だけだけど、お尻と背中は青あざが凄いらしい。
ちなみにお尻は流石に自分だけで確認した。
そもそも医務室行ったら即鑑定魔法で診断されて、打撲との事だったし。
「お詫びに何か奢るよ」
「ついでに治療費も」
「まぁ、そうだね、うん。少し待ってて」
冗談のつもりだったんだけど、何やら医務室から出ていった相部屋の人。
そしてすぐに戻ってきたと思ったら……。
「そちらの綺麗な方は?」
「知り合いのハイエルフ」
なんか綺麗なハイエルフさんを連れて再登場。
お? 嫁自慢か?
「特に必要は無さそうですけれど……」
「痛み吹き飛ばすついでに、耐久力も上げといてくれたらなって」
「まぁ、あなたの頼みは断りませんけれどね」
と、怪しい会話の後に俺に向けて手をかざすハイエルフさん。
そして、
「へくちっ!」
……くしゃみした。
あの……。
「あ、手をかざした段階で魔法はかけておりますわ。もうすぐ痛みも引くかと」
「はぁ……」
「あと、言われた通りに耐久力も上げときましたわ。そうですわね……ちょっとやそっと転んだりした程度ではダメージが無い位ですわ」
「はへー」
「効果期間はツアー内で設定しておきましたので、日常に戻る頃には耐久力も元通りですわ」
「じゃ、お礼にどうぞ」
――?
俺に手を伸ばして何を?
「お菓子」
「へ?」
「パッキー、この人の好物だから」
というわけで言われるがままにパッキーを渡すと、大変満足そうに医務室を出て行かれました。
……え? なんで俺がお菓子をあげる必要があったの?




