?「絶対に許早苗」
甘い物には苦いもの。
ケーキにはコーヒー。
……そう思っていた時期が私にもありました。
ジュエルタピオカミルクティーの相棒に選んだのはチョコレート。
しかも苦いのを頼んでみたんだけど、これ失敗だったわ。
確かに口の中の甘さはチョコレートで中和されていい感じになるし、何ならチョコレートの苦みが勝つ。
――だけど、そのおかげで、次の一口のジュエルタピオカミルクティーがまた新鮮な甘さを与えてくるんだ……。
これなら、チョコレートを挟まずに味覚が甘さに慣れた状態で飲み干した方がよかったかもしれない。
いや、それも無理だろうけど……。
「……ふぅ」
ちなみにミルクティーは既に飲み切って、カップの中に残ったタピオカと格闘中。
これがまたつらいんだ。
ミルクティーでさえ、このタピオカたちの甘さのクッションになってくれていたことを痛感するね。
「もっきゅもっきゅ」
なおガーディアンさんは頼んだよく分からんクレープを元気に咀嚼中。
あれだね、俺らがイメージするクレープじゃなく、ホテルとかで提供されるお皿に乗ってくるタイプのクレープ。
しっかりフランベも目の前でされてた。
「一口いる?」
「大丈夫です」
こちとら甘いタピオカにヒーヒー言ってるのに、追加で甘いものなんて食べるわけが無かろう。
明らかに甘そうな見た目してるし。
「ちなみに美味しいです?」
「クレープはふんわりしっとり香ばしく、プリンはソースとの兼ね合いで砂糖不使用。チョコも甘さより苦さが目立つけどソースと合わさると絶品。総じてめちゃウマ」
「そりゃよかったです」
まぁ、うん。
その他にもフルーツやら、アイスやらモリモリだし、あれも下手したらかなりカロリー高いんじゃなかろうか?
にしても、ハンバーガー四個分のこのドリンク飲んでるおかげでもうじきお昼だってのに全然お腹減らねぇな。
……ドワーフツアーの最後の食事がタピオカドリンクってマジ?
*
「すぴー」
……えぇっと、何とかタピオカドリンクを飲み干した……ってか食べ終えた俺は、余裕でクレープを完食したガーディアンさんの頭を撫でてたわけですよ。
もちろん自発的にじゃないよ?
頼まれたからやったんだよ?
そしたら、勝手に俺の膝を枕にして寝息立ててやがるんですけど……。
色々と理由付けて町を探索したかったのに、こうされると身動き取れない……。
待てよ?
「分体さん」
「……何?」
俺の呼びかけに、どこからともなく現れる分体さん。
とてもいい子。
「俺と場所を変わってくれません?」
「……見返りは?」
話が早い。
「次回異世界に来た時に、分体さんがリクエストしたお菓子を持って来ます」
「……もう一声」
「分体さん専用でそのお菓子をお納めしましょう」
「乗った」
というわけで交渉成立。
分体さん、激しくいい子。
「……うぉ!?」
と思ったら妙な感覚。
こう、座っていたのに強制的に立ち上がらされて、お辞儀をさせられるような……。
「チョコ。大きいチョコ、食べ応えがあるチョコがいい」
「分かりました」
そしたら、さっきまで座っていた俺のポジションに分体さんが座っていて、ガーディアンさんは分体さんの膝の上に頭を乗せている絵面に。
よし、これで町を散策できる。
じゃ、町に繰り出しますわぞ~。
*
「宝石と酒しかねぇ」
流石というべきかドワーフの国。
視界的にはキラキラしてて面白いんだけど、景色がほとんど変わらねぇ……。
あと、お酒打ってるお店は試飲を勧めてくるんだけど、勧められる酒がウォッカやスピリタス、泡盛にテキーラとかなんかもう色々とツッコみたくなるラインナップしかないのよ。
試飲の量ですら飲むと酔っぱらうんですけどそれは……。
「ショートウロボロスのかば焼きはいらんか?」
「あー、遠慮しときます」
あと、ところどころ屋台もあるんだけど、売ってあるのが……。
ちなみに今勧められたショートウロボロスとか言う魔物。
蛇と思うじゃん?
ヤモリなんだよね、見た目。
それのかば焼き? いやぁ……ちょっと……。
「お、兄さん、暇かい?」
と、通りを歩いていたら、何やら声をかけられて。
「うちにはおっぱい大きい子いっぱいいるよ? どうだい?」
まぁその……そういうお店の客引きでした。
はいはい、って思いながらその声をかけてきた男ドワーフの持ってたチラシを見て驚いたね。
デッッッッッカ。
顔より胸の方が大きいんじゃねぇの? ってくらいデカい。
ここまで大きいとギャグなんよ、もはや。
いやぁ、遠慮しときます。
「大丈夫です」
「まずうちさぁ、屋上あるんだけど……焼いてかない?」
異世界にまで浸透してるのかよ。
無視してスルーっと。
「ん……」
とかなんとかしてたら、リストバンドが振動。
加工が終わったって事ですわね。
じゃあ、取りに行きますか。
「お待たせしました」
「無茶な加工をお願いして申し訳ありません」
「いえいえ、久しぶりに骨のある加工だった、と技術者も大変満足しておられました」
何だろうな、難しい加工なほど燃える職人気質な人だったのかな。
ともあれありがとうございました。
「お客様のお帰りはあちらだと仰せつかっております」
と言って案内されたのは、専用ロビーと書かれた方。
あれを通って日本に戻るんですね、分かります。
というわけで、ドワーフツアーから現実に戻るとしますか。
――追伸、両親に今回の旅行のお土産を渡したところ、母親はぼろ泣きして身に付けずに部屋に飾ると言い出し、親父は早速ぐい吞みに装着してブランデーを飲んでた。
ぐい吞みでブランデーを? と思ったけど、まぁ飲む容器は好きにすればいいか、と。
ブランデーが俺の生まれ年に作られたものだった気もするけど、深くは考えないようにしたよ、うん。




