後日ドワーフでブームに
「……お、トルマリン宝鍾乳洞についたみたいよ?」
とグリムダさんに言われ、窓の外を見てみると……。
え、すげぇ。
めっちゃカラフル。
トルマリンってこんなにカラフルだったのか……。
「虹を通った宝石、と言われるくらいには色にバリエーションがあるわ」
「ほへー」
「異なる色が合わさったトルマリンもあったりするわよ?」
ん? どういうこっちゃ?
「例えば、アレ」
「どれ?」
「あのピンクと緑のトルマリン」
「あー、ありますね」
「あれはウォーターメロントルマリンと呼ばれる配色で、削り方でピンクと緑の両方のトルマリンを一つの宝石に出来るのよ」
「ほうほう」
あまりイメージ沸かないけど、多分、半分から右がピンク、左が緑、みたいに色が沸かれた宝石が出来るって事なんだろうな。
「青と緑、ピンクと緑、ピンクと黄色みたいな組み合わせもあるし、その辺探してみると面白いかもしれないわね」
「なるほど」
エメラルドの時は色の濃淡、反射した時の色とかに着目したけど、トルマリンはそもそも色自体が複数あるのか。
こりゃあ、探索の時間が溶けそうだ。
――というわけで、スタッフさんに申し出て、宝石の選定へ。
マーカーを貰いまして、いざ、宝鍾乳洞!
*
ヤバいな。
どれも奇麗過ぎてどれにすればいいか分からん。
一応、このトルマリンは父親へのプレゼント用で、こう……ぐい吞みってあるじゃん?
お猪口よりちょっと大きい奴。
親父はそのぐい吞みでよくお酒を飲んでいたんだけど、そのぐい吞みに装着するリングみたいなのを作れないか、と思ったのよ。
某コーヒーショップでホットを頼むとカップに付けられる、火傷防止用の段ボールのようなリングみたいな感じで。
最初はね、宝石でお猪口とか作ったらお洒落じゃーんとか思ったけど、値段見て諦めたよね。
一財産どころか五財産くらいの金額になったわ。
というわけで、だったら装飾品にしよう、と思い付き、リング状にすれば色々付け替えられるじゃん、と思った次第。
なので、ぐい吞みに装着して映えそうな色を探しているんだけど……。
「親父が使ってたの、確かガラス製のぐい吞みだったよな……」
沖縄旅行で買った、聞いた事がある。
琉球ガラスの綺麗なぐい吞み。
オレンジ、黄緑、水色と爽やかな見た目の色のぐい吞みだったんだよな。
そのイメージを宝石で崩さないような色合い……。
となると、やっぱり水色とか黄色とかになるか。
「……お」
第一候補発見。
草原を思わせる緑と、晴天を思わせる水色のバイカラートルマリンですわね。
これいいなぁ。
色も爽やかだし、濃すぎて重いなんてことも無いし。
「そもそも水色単色ってのも清涼感あって綺麗なんだよね」
お酒のイメージ、特に日本酒なんかは水色がよく使われるし。
水色単色も悪く無い。
「黄色やオレンジの暖色系も捨てがたいんだよなぁ……」
視線をちょっと動かせば視界に入る暖色系のトルマリンも、お酒のイメージには合う。
主に熱燗とか、ぬる燗の時にこの色が使われるイメージ。
……う~む……悩む。
というか、色々と見てきたけど、絶対に無い組み合わせとかあるんだね。
青とピンクとか、黄色と水色とか。
現代で考えたら宝石の成分的に無理ってのは何となく分かるんだけど、異世界だとなんでなんだろ?
魔力が相反する魔力同士とかだったりする?
「……早めに決めないとな」
こうして悩んでいる間にも、ゆっくりであるとはいえ列車は進んでいく。
制限時間が迫れば、音で教えては貰えるけれども。
やはり社会人として、ギリギリの行動は避けたい。
…………よし。
「水色と緑にしよう」
ファーストインプレッションで良さそうだと思った、草原と晴天を思わせる宝石にしよう。
しっかりマーカーを押しましてっと。
列車に帰還。
「お疲れ様でした。加工の方はいかがいたしましょう?」
「お願いします」
「何か希望はございますでしょうか?」
さて、ここからが本番。
俺のイメージを上手く伝えて、それがちゃんと反映されるだろうか。
言語化能力が試される時だな。
*
……多分何とかなった。
というか、最終的に加工担当の職人さんも交えて、イラストを描いて貰いながら俺のイメージを形にして貰った。
だいぶ俺の想像に近いものになったはずである。
――ただ一つ、問題があるとすれば……。
「親父が飲んでたぐい吞みのサイズとか把握してなかったなぁ……」
俺はてっきり、ぐい吞みって何か明確な基準があると思ってたんだけど。
お猪口より大きい、くらいのざっくりな基準しかどうやら無いみたい。
で、そんなほぼ無限択サイズのぐい吞みに合わせたリングをどう作るのかって話になり。
結局、湾曲したプレートに宝石をはめ込み、そのプレートをチェーンでリング状に。
チェーンの組み換えでサイズを変えられ、ある程度のぐい吞みにフィットするよう調整して貰いました。
ちなみにチェーンとかは加工費かなり安くて、思ったよりも値段はいかなかったね。
何なら、母親への贈り物の方が値段はしたぐらい。
ただ、職人さんや列車のスタッフさんが話してたんだけど、こういうぐい吞みを装飾するリングは見た事無いって言ってたから、無二性は親父のプレゼントの方が上だね。
という事で、俺のやることは終了。
残りは終点の町をちょっと探索するとしますか。




