余罪多数
あれだよね、明るみになってる犯罪はまだマシってやつ。
事件化せず、闇に葬られる方がよっぽど怖い。
しかも異世界の場合は放り込まれるのが業火の窯の中って言う……。
下手すりゃ骨も残らねぇんじゃねぇか?
「ただまぁ、そういう噂ってだけで多分そんな事はしてないわよ?」
「それはどうして?」
十分に信じられるような内容だけれど……。
「ゴーレムだって意志があるわ。人を自分で焼きたいなんて思考、持ってるはず無いでしょ」
「……確かに」
「逆にそれやって、人を焼くことを覚えて、燃料を人にしなきゃ着火すらしない、とかになった方が困るもの」
「……確かに嫌ですね」
人の味を覚えた熊は、また人を襲う、みたいな話。
まぁ、ゴーレムを熊と同列で語っていいのかって疑問はあるけど。
「ま、ぶっちゃけ密猟者は気絶させて放置しとけば、魔物の餌になるだろうからそっちの方が楽だろうし」
「…………それもそれで――」
言おうとして、やめた。
仮に魔物がそうやって密猟者を捕食して味を覚えたとして、ツアー客にはそこまでダメージ無いのよな。
だってガーディアンさん居るし。
となると、ガーディアンを雇えないやつが困ることになって、じゃあそれが誰なのかと言うと密猟者なわけで。
思えば、アメジスト宝鍾乳洞の滝でエンカウントした蛙の魔物。
ガーディアンさん、ぶん殴って滝つぼに沈めただけで、明確にとどめを刺したわけじゃないんだよね。
それがもしかしたら、密猟者に対する抑止力になるから、とかだったりして……。
「あ、ちなみに、ツアー客が多めに持ち帰ったりとかは?」
「出来るならやってみろって感じかしら。宝鍾乳洞から削り取ったばっかりの宝石って、加工がされてないから魔力反応がかなり強いのよ」
「ふむふむ」
「その強めの魔力反応を感知する魔道具が、列車内のそこら中にあるわけ」
「なるほど」
「もし宝鍾乳洞から取ってきた宝石が見つかったら、列車の先端に括りつけられて残りのツアーを楽しむことになるわね」
「えぇ……」
発想が一々怖すぎない?
警察というか、そういう機関に引き渡す、じゃ駄目なの?
「現に何度かあったみたいだけど、ツアー最後まで括りつけられていたのは一例だけって聞くわね」
「……残りは?」
「さぁ? 途中で落っこちて轢かれたんじゃない?」
「……」
「あるいは停車中に魔物に捕食されたとか」
司法に引き渡されるって、マジで有情だったんだなって。
というか、捕まったらそんな扱いをされるってリスクを背負ってまで犯罪を犯す連中って何なんだ……。
「ノンアルのレモネード貰えます?」
「チェイサー?」
「そうなりますかね」
「普通はビールなのに」
……知ってるか?
普通それはチェイサーと呼ばずにちゃんぽんって呼ぶんだぜ?
いやまぁ、チェイサーって直前に飲んでたお酒よりもアルコール度数が低いものなら何でもいいらしいんだけど……。
それでもビールはねぇよ。
「異世界の犯罪に対する価値観が色々と分かりました」
「あ、宝鍾乳洞からの密漁に対して、だからね?」
「はいはい」
「普通の犯罪とは厳しさが違うからね?」
「はいはい」
日本でも鍾乳石の持ち帰りとかは違法だけどさ……。
流石に命までは取らねぇよって。
「……みくりやー」
なんてグリムダさんと話をしていたら、パジャマ姿でぬいぐるみを持ったガーディアンさんが、眠い目を擦りながらラウンジ車へ。
ユーは何しにラウンジへ?
「どうしました?」
「グミ頂戴」
「寝る前にお菓子はダメですよ」
「ちゃんと歯を磨くから」
どこの家庭の会話だ。
「……何味がいいです?」
「任せる」
まぁ、あげるんですけど。
じゃないと解放されなさそうだし。
「あーん」
……膝の上に乗って食べさせろと要求してくるんじゃないよ。
食べさせてあげるけどさ。
「……? なにこれ?」
「グミですけど」
ちなみに与えたのは俺の大好きなグミ、『コロコロ』。
果実感というか、本当の果物を食べてるかのような食感を再現した感じが凄く好き。
具体的には皮をプチっと歯が突き破る瞬間が気持ちいい。
味も美味しいしね。
「果実じゃないの?」
「なるだけ果実の食感になる様に作られているんですよ」
「凄い技術」
気に入ったようで、凄い勢いで食べてくじゃん。
確か、海外の人たちにもこのグミは受けてたよな。
まぁ、グミに限らず、日本の菓子は大概受けてるんだけれども。
ダウト、菓子に限らず食べ物全般で受けてる。
……納豆や梅干しは人を選ぶけれども。
「ミクリヤってさ」
「なんです?」
「やっぱ不審者?」
「いきなりどうしたんですか?」
「いや、自分の今の状況、客観的に見てみなよ」
客観的にって……。
ガーディアンさんを膝に乗せてグミを食べさせてるだけだが?
――十分にヤベーやつだな。
一応、これが妹とか娘とかなら分からなくもないシチュエーションではあるが、ガーディアンさん、他人だしなぁ。
これは不審者と呼ばれても何も言い返せない……か?
「よいしょっと」
「?」
というわけでまずはガーディアンさんを膝の上からどかしましてっと。
なんで? みたいな顔してるけど、絵面的にね。
もっと早く気が付くべきだった。
「グミお代わり」
「俺はもう寝ますよ……」
で、食べ終わったコロコロのお代わりを要求されたものの、俺は眠気を理由に拒否。
実際、夜だし、お酒飲んだし、お腹一杯だし。
布団に入ればすぐにでも眠れそうだからね、噓は言ってない。
「……そう」
……で、何ゆえ抱っこをせがむ様に腕を伸ばしているので?
「ヒソヒソ」
グリムダさんもヒソヒソしない!
何も無いから!!




