犯罪、ダメ、絶対
「……なんで?」
「どう?」
いや、どう? と言われても……。
なんでハイボールにした瞬間、わ○パチよろしく口の中で炭酸が跳ねるんだ?
弾けるたびにお酒の香りが強くなって美味しいは美味しいよ?
ただ、その……なんで?
「美味しいですけど……」
「気に入らない感じ?」
「いや、そうではなく……」
気に入る気に入らないじゃなくてですね?
なんでこうなるのって、原理を知りたい訳で……。
まぁ、考えるだけ無駄なんだろうな。
異世界だし。
「女性人気ナンバーワンで、ナウでヤングな若者にはブームになってるのに」
……多分だけど、それ、古いと思うよ?
いや、ブーム自体の話じゃなく、今使われた単語たちというか……。
どこ切り取っても昭和の香りしかしないぞ?
「美味しいですし、普通に気に入りましたよ。ただ、原理が分からないだけで……」
「? なんの?」
「炭酸が口の中で跳ねる原理……ですかね」
「? あなたが飲んでるのは?」
「宝石酒のハイボールですね」
「宝石は元々液体?」
「固体ですね……え?」
「そう、炭酸で跳ねたオパールが固形化してるのよ」
「じゃあ俺、宝石を飲んでる……?」
「そもそもが宝石酒のハイボールなんだから宝石は飲んでるでしょ」
そうじゃなくて。
……ヤバいな。
たった今この瞬間に事故にあい、万が一にもレントゲンを撮られでもしたら……。
胃の中に宝石が大量にある頭おかしいヤベーやつと思われてしまう……。
「ちなみに嘘だけどね」
「次は首と胴体を切り離して貰います?」
「流石に死んじゃわないかな、それ」
信じただろうが!!
なんだよ、そうじゃねぇのかよ。
――じゃあ、なんだ?
「ちなみに原理は不明よ」
「分かって無いんですか……」
「でも美味しいし楽しいからいいじゃない」
「まぁ、それは」
という事で再度ハイボールをゴクリ。
……喉を通る瞬間も跳ねてるんだよな。
たまに痛い。
「はい」
「?」
「驚かせたお詫びにおつまみどーぞ」
「……無料で貰えるやつですよね?」
「それを取りに行くのが驚かせたお詫びよ」
「ありがとうございます」
腑には落ちないが納得したことにしておこう。
……で、これはなんだ?
恐らくは豆系、薄く切って揚げてあるのか?
ナッツチップス的な?
「……あ、美味い」
感覚としてはあってる。
大きさそら豆くらいなんだけど、味的には銀杏だね。
色は緑だよ? 銀色じゃないよ?
程よい塩加減とほろ苦さ、揚げたことによる香ばしさ、全部がハイボールに合う。
……美味い。
「おつまみとして人気のスナックなのよ」
「分かる気がしますね」
「『カシのタネ』って言うんだけどね」
「……わざとです?」
「? 何が?」
もうほぼもじってないレベルで一致してないか? この食べ物。
いやまぁ、ピーナッツが入ってないとか、ピリッと来る辛みが無いとかの差はあるけれども。
その名前は紛らわし過ぎるんだよ……。
「私も貰って来よ」
「ついでに俺のお代わりもお願いします」
いや、美味しいんだけどね?
しかも酒に合うと来たもんだ。
「はい」
「ありがとうございます。……何飲むんです?」
「ルビー酒とビールを混ぜたカクテルでね、『ルビーアイ』って名前なのよ」
「シャブラ○グドゥ」
「何か言った?」
「くしゃみです」
つい反射で。
にしても、お洒落な名前だねぇ。
何だっけ、ビールとトマトジュースを混ぜたカクテルが『レッドアイ』なんだっけ?
その系譜か。
……飲んでも大丈夫だよね?
黄昏よりも暗きものになったりしないよね?
「ちなみに味は?」
「ビールの苦みが爽やかな酸味にかき消されて、喉越しとキレはそのまま。多少アルコール感は強くなるけどかなり飲みやすいわよ?」
多少……多少ねぇ……。
騙されへんぞ。
ドワーフの言うアルコール感は一切当てにならんのだ。
何度か痛い目見てるからな。
「ん、オパール宝鍾乳洞を抜けるみたいね」
「結構早かったですね」
エメラルドとか、アメジスト宝鍾乳洞の時よりも抜けるのが早い気がする。
――ああ、なるほど。
なんでグリムダさんがオパール宝鍾乳洞を抜けると分かったかを理解出来たわ。
聞こえるね、タイムアップを知らせる音が、オパール宝鍾乳洞内に居るツアー客の付けたリストバンドから。
――なんで防犯ブザーの音なのかは突っ込まないでおこう。
「まぁ、オパール宝鍾乳洞はね」
「何かあったんです?」
意味深にため息までついて。
こんなの、何かあったから聞いてくださいって言ってるようなもんじゃん。
「人気過ぎて乱獲されたのよ」
「乱獲て」
「一時は絶滅危惧宝石にまで数えられてたんだから」
「宝石に絶滅とかあるんですか……」
生きてないでしょ、宝石は。
「環境保全と宝鍾乳洞への立ち入り禁止、持ち出し禁止の期間を設けてようやく今に至るってわけ」
「……じゃあ、そもそもオパール宝鍾乳洞が人気なのは……」
「規制されてた期間があったから、オパール自体の価値が上がっちゃったのよね」
「なるほど……」
なんか、異世界だけの事情があったんだなって。
――結構な数のツアー客がオパール宝鍾乳洞に入ってたけど大丈夫なのかな?
ちゃんと人数管理されているんだろうか……。
「多分考えてること当てるけど、このツアーの参加者数上限が、オパール宝鍾乳洞に入っていい人数の上限よ」
「あ、なるほど」
「だから、ツアー客が全員参加してもギリ大丈夫になってるわ」
なるほどな。
それなら安心だわ。
「ちなみに密漁……で合ってます? 隠れて採取した場合は?」
「ちゃんと司法に引き渡されれば、親子三代くらいで完済出来る程度の罰金で済むわよ」
「程度……じゃないと思いますけど。――ん? ちゃんと引き渡されない場合があるんです?」
「さぁ? 噂だけど、ドワーフの工房内のゴーレム釜に投げ入れられるとか聞くわね」
「ひっ!?」




