見た目どうにかしてくれ
一回り大きなパチンコ玉みたいなのが、お皿に並べられて登場……。
皿の脇に盛られているのは塩かな。
どう見ても見た目が食べ物じゃないんだけど、大丈夫そ?
実は鉄球でした、とかで、噛んだ瞬間にガリッとか言わない?
歯が欠けたりしない?
「箸で持った感じは弾力ある感じだけど……」
一応、口に入れる前に何度か箸で触ってみたけど、まぁ普通の銀杏だなって。
というわけで恐る恐る一口。
「――美味いじゃん」
酒蒸しにされたことで噛んだ瞬間はほっこりした食感。
その後でねっとりとした食感に変わりながら、程よい苦みとうま味が滲み出る。
香ばしさも感じはするが、酒の香りでかなり軽減されてるね。
――で、この銀杏の後に飲む酒がうめぇ。
苦みとうま味が、お酒の味をより引き立たせているんですわ。
「これだけで無限に飲める」
塩にちょいと付けて食べれば、苦みとうま味に塩味が加わり最強に見える。
当然お酒との相性も爆上がりって事で、銀杏一粒でお猪口一杯飲めてしまう……。
――はっ!? 危ない危ない。
危うく戻って来られなくなるところだった。
「続いてステーキです」
ステーキ……この流れでいくと銀色なんだよなぁ。
肉は違うだろ、肉は。
肉だけは銀色だと食欲湧かないどころか吐き気がするぞ……。
「こちらです」
……普通。
え? 普通のお肉なんだけど?
間違えてない?
「これ、何肉です?」
我看破せり。
ズバリ、肉は普通でも名前に『銀』あるいは『シルバー』が入ってると見た。
という事で答え合わせ。
「『大地の裂け目を泳ぐもの』の肉ですけど」
はいハズレ。
誰だよ自信満々にズバリ! とか言ってた阿呆は。
私だよ。
「えらく抽象的な名前ですね……」
「名付けがエルフのクソやろーなので」
……聞こえなかったことにしよう。
せめて客の前ではそんな暴言やめな?
いや、俺はそこまで気にしないけどさ。
「で、どんな生き物なんです?」
ちなみに俺も名付けたエルフに物申したい。
名前は! 聞くか! 文字を見ただけで! どんな容姿か想像が付くものにしろ!!
なんだ! 大地の裂け目を泳ぐものって!
全然想像つかんわ!!
「平たく言えばオオサンショウウオです」
「……食べられるんです?」
「でないとお出ししませんよ」
サンショウウオ……日本だと天然記念物じゃなかったっけ?
基本食べることはできないはずだよな。
「ステーキに出来るほど大きいんだ……」
「『オオ』サンショウウオなので」
そういう問題なのか?
少なくとも、俺の知るオオサンショウウオはこんな鉄板の上で焼かれてブシュ―ブシューと音を立てる様な大きさではなかったはず。
というか、この大きさだと人間より大きくないか?
その、『大地の裂け目を泳ぐもの』とかなんとかいう魔物。
「ソースはジルコンソースをおかけください」
「ありがとうございま……」
ああ、不意打ちだった。
このジルコンソースとか言う代物、ちゃんと銀色だったわちくしょう。
なるほどな? 肉でも、名前でもなくソースが銀色って訳かい。
一本取られたぜ……。
見た目がまるっきり水銀なんですけど。
身体に悪そうとか言うレベルじゃねぇ。
食べたら死にそう。
しかも結構苦しみもがいて。
「か、かけるじゃなく、ちょっと付けて食べてみようかな」
逆転の発想。
あまりにメタリックカラーでかける気になれないなら、かけずにつけて食べればいい。
もしかしたら俺って天才かもしれん。
さて、と。
――そもそもサンショウウオって何味?
ステーキにするような感じなの?
それともそこは異世界仕様なのか?
こればっかりは食べた事が無いから何とも言えんのよなぁ。
「まぁ、食べますけれども」
ちなみに食べないって選択肢は無い。
何故ならすでに調理済みで目の前に運ばれているからである。
というわけで、ちょっとだけナイフとフォークで切り取り、ちょっとだけソースを付けて……。
いただきます。
「……肉ってよりは魚っぽさはあるけど……」
初めて食べるオオサンショウウオの感想は、なんか肉っぽく無いな、って感じ。
どちらかと言うと魚だよ、これ。
何だろうな……フグとかに近いかも。
割と弾力あって、しっかりうま味もある。
あと、ジルコンソースってのは恐らくだけどタルタルソース味だね。
あくまで味だけ。卵とかパセリとか玉ねぎとかは入ってない。
魚にタルタルソース、合わないわけなくない? って感じ。
ただまぁ、お酒とタルタルソースが合うかと言われると……。
「意外に合うのがおもろい」
びっくり。
合うもんだねぇ。
酸味とうま味がお酒には無い味で、そこの補完というか、補填というか。
しっかりバッチリ美味しいんだから不思議なもんだ。
「ソース付けずに食べてみよう」
味は分かったから、今度はさっきより大きく切り取り。
ソースに付けずに、バクリ。
「何も付けない方が好きかもな」
肉というか、素材本来の味でしっかり美味しいんだから、ソースは別に必須って訳じゃないかな。
……うん。酒にもこのままの方が合う。
まぁ、ソースは見た目がね……。
積極的に使いたい色では無いから……。
「お酒、飲み干しちゃったな……」
二本目に行くか、それとも自重してソフトドリンクにするか……。
とりあえず、
「黒豆茶飲も」
お茶を濁すとしよう。
黒豆茶で。




