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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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138/143

銘柄名『地恵熱』

「皆さま、大変長らくお待たせいたしました、『地目一箇』にご乗車が可能になったため、ご案内させていただきます」

「やっとね」


 俺がアメジストハイボールを飲み終えた頃に、駅員さんが丁寧にお辞儀をしてそう案内。

 ちなみに駅員さんはもちろんドワーフさんです。

 身長は低いけど髭はしっかり剃ってて、服装もキッチリしてる。

 

「……行かないの?」

「みんな押し掛けてるし、もう少しラウンジでゆっくりしてから乗りますよ」

「そう」


 というわけで、皆さんご乗車してるのを見ながら、俺はもう一杯ドリンクを頼む。

 今度はノンアルコールで。


「ノンアルコールの飲み物って何があります?」

「ノンアルコールですと……こちらになります」


 バーテンダーさんに尋ねれば、メニュー表を差し出してくれる。

 口頭で伝えるより楽だし、俺もありがたい。


「……じゃあ、この『旅路』という飲み物を」

「かしこまりました」


 ノンアルコールカクテルの所に書いてあった、これからにピッタリな名前の飲み物をチョイス。

 そうして出来上がったのは……。


「こちら、『旅路』になります」


 ……ストローでっか。タピオカドリンク用のストローくらいあるぞ。

 んで、見た目はシェイクなんですけども。

 色はピンク。何味だろうね。


「いただきます」


 ……おー。

 濃い。濃いメロン味ですわね。

 で、しっかりとシェイク。

 メロンミルクシェイクですわね、これ。


「氷が解けると味が変化します。様々な味が楽しめるという事で、『旅路』と命名されました」

「じっくり飲んだ方がいいんですね」


 なるほどな?

 じゃあ、車内に持ち込ませて貰おうか。

 みんなほぼほぼ乗車したみたいだし、俺も乗りますか。

 ――で、そこで俺は気が付いたんです。

 これから乗車する列車……その……。

 なんと言いますか……。

 こう、顔が濡れると力が出ない、国民的アニメの敵キャラ。

 ハ行で笑うアイツの操る乗り物あるじゃん?

 ドリルが付いてる紫色のモグラみたいなやつ。

 ほぼあれ。

 一応、車体とかしっかり豪華列車の装飾してるけど、正面から見るとほぼあのメカなんだよな。

 あと、『超弩級掘削列車地目一箇』ってデカデカとあるのがな……。

 しかもゴシック体。いいのか? なんかこう……それでいいのか?


「チケットを拝見します」


 まぁ、気にしたところで乗らないって選択肢は無いんですけどね。

 というわけでスマホを見せてチケット確認を済ませまして、いざ、ドワーフのツアー列車に乗車!



「ウェルカムウイスキーじゃ」


 ……いや、初っ端からドワーフの洗礼が凄い。

 ウェルカムウイスキーて、あんた。

 しかもストレート。

 せめてロック。欲を言えばハイボールにしてくれ……。


「他のってあります?」

「…………ウォッカなら」

「ウイスキーで」


 なんでもっと度数が高いのが出てくるかなぁ?

 じゃあウイスキーでいいか、となるじゃないか!


「ちなみにこのウイスキーには特殊な魔法加工がされていてな」

「はい」

「飲むと熱に対する過剰耐性を手に入れるぞ」

「具体的には……?」

「鉄が溶ける温度に触れても火傷で済む」

「マジで過剰っすね」


 飲むと人外化しない?


「ただ、三日で耐性は失われる」

「戻るんですね」

「まぁ、このツアーを楽しんで貰うために必要な処置じゃな」


 ここもあれだな。

 マーメイドツアーと一緒で、ツアー内の環境に適応させるために、ウェルカムドリンクに魔法効果を付与してるんだな。

 ……? 待てよ? という事は、下手すると鉄が溶けるほど熱い温度の場所まで移動するって事?

 どこに? とは言わないよ。

 この列車の形状から、大体は察せられるから。

 ……地中かぁ。

 しかも熱いって事はマグマ付近を通るのか……。

 ま、マグマを身近に見られるなんて中々ない体験だろうし、ちょっと楽しみではあるかな。

 じゃ、ウェルカムウイスキー、いただきますかね。


「……おー。あれ? かなり美味いぞ?」

「お。ウイスキーの味が分かるんか?」

「多少は飲んでますから」


 まぁ、家に置いてあるウイスキーは二千円くらいで買えるものばかりですけど。

 ウェルカムウイスキーを口に入れてまず感じるのは、スモーキーな香り。

 ただ、むせ返るような強さじゃなく、ほんのり鼻の奥にフワッと香る軽い感じ。

 で、それを追っかけてアルコール感が来るんだけど、これがまたまろやかなのよ。

 アルコール感が強いと咽たり、咳き込んだりするけど、それが無いね。

 チョコレートが口の中で溶けるみたいに、じっくり、ゆっくりと広がるアルコール感が作りての優しさ敵なのを感じる。

 続いて味。舌に触れた瞬間にはキャラメルみたいな甘さが一瞬あるけど、その後で、ピリピリとした独特なスパイスのような刺激。

 そのまま舌の上に乗せれば、じんわりと苦みが広がって、飲み込んだ後にまたスモーキーな香りが復活。

 これ、ロックでじっくりと時間をかけて飲みたい奴だな。


「マジで美味いですね」

「この車内なら飲み放題じゃ、浴びるほど飲むがいい」

「次はロックかハイボールで頂きたいですけれども……」


 というわけでウェルカムウイスキーをいただいて、部屋に向かいましょ。

 なお、このウェルカムウイスキー、乗車直後の強制エンカウントイベントであり、この時点で自分がどの部屋に泊まるかは案内されていない。

 つまり……絶対に避けられないイベントってわけ。酒だけに。

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