ちょっと署で詳しい話を
「……おー」
なんというか、凄い偏見だと思うんだけど、ドワーフってがさつなイメージ無い?
だから、列車内の客室がしっかり整えられているのを見ると、ギャップというか、凄いな、と思ってしまう自分がいる。
……さて、客室に着いたらすることは一つ。
――荷物を投げ出し、ベッドにダイブ!!
やっぱりね、ベッドには飛び込まないとね。
と思って実行しましたらですよ?
バイーーーーン! とベッドに入ったスプリングに跳ね上げられまして。
ベッドにダイブした格好のまま、1mくらい跳びましたわよ。
……まぁ、焦った。
何せそんな事になると身構えてすらなかったからさ。
こんなにスプリングが強い事あるんだ……。
「出発までもう少しあるみたいだし、今の内に列車内見て回るか」
列車移動はエルフツアー以来ですのでね。
まぁ、船に比べて設備は限られてるだろうけど、何があるのか把握しておくだけでも……。
「地中移動なら、景色とかはあまり望め無さそうだよな」
雲より上の木からの景色や、海底の景色にはどうしても敗けそうよね、地中の景色。
いうてどこまで言っても土と岩でしょ?
というわけで部屋を出ましたら。
「ん?」
「……」
俺の部屋の前に誰か居た。
子供……じゃなくて、この子あれだ。
ガーディアンだった子だ。
「……」
「……」
「……」
「……」
めっちゃ見られてるんだけど。
何だろう? 俺何か悪いことしたかな?
それかあれか? 俺の客室がいいとか、そういうわがままを言いに来たとか?
あとは……ハッ! 既に魔物が侵入していて、その魔物の討伐の為にここに張り込んでいる!?
てことは邪魔しちゃ悪いか。
すぐに退こう。
「ん……」
袖引っ張られたんですけど。
横に退いて列車内探索に行こうとしたら袖を引っ張られたんですけど。
という事は、このガーディアンの子の目的は確実に俺なわけで。
考えろ……俺が何かしたか?
――よし、
「お菓子とか食べ――」
「食べる」
はっや。
食い気味とか言うレベルじゃなかったぞ今の反応。
だがこれでハッキリした。この子、お菓子目当てか。
んーっと、そうしたらば……。
「はいどうぞ」
「ありがと」
渡したのは、ハート形のパイ。いわゆるミナモトパイね。
しかも片面にチョコが塗ってある奴。
あれ美味いんだよな。
「……美味しい」
「良かった」
包装を開け、一口齧ったガーディアンさんは、満足そうに俺に笑顔を向け。
「これからどこに?」
と聞いてくる。
「列車内の探索をしようかと」
と伝えると、
「ん」
とだけ言って、俺に手を差し出して。
……握れって事?
などと思っていたら、向こうからギュッと俺の手が握られて、
「一緒に行く」
だそうで。
……絵面だけ見たら不審者なんですよね。
ただまぁ、この子がガーディアンなのはみんな分かってるっぽいし、通報とかはされないでしょ、うん。
「目的とかないよ?」
「無問題」
というわけで、ガーディアンさんと列車内巡り、やってきますか。
*
……あの、全然ヒソヒソ言われます。
なんでさ! ラウンジでこのガーディアンさんが駅構内の放送聞いて駆けつけてくれたの、みんな見てたでしょ!
どうして手を繋いでるだけでヒソヒソ言われなきゃいけないのさ!!
しかも! ラウンジみたいな所でグリムダさんを見かけたけど、俺の状況見て引きつった笑みを浮かべてサッとどこかに行っちゃうし!
マジで俺がヤバい奴みたいな反応止めて!!
普通に傷付くぞ!!
「さっきのお菓子、美味しかった」
「他のもありますよ?」
「欲しい」
で、ミナモトパイを食べ終えたガーディアンさんが追加のお菓子を要求。
続いては月明かりクッキー。
オーソドックスなクッキーだけど、これがまた美味いんだ。
紅茶かコーヒーが欲しくなるよね。
「……美味しい」
「それはそれは」
片手で器用に包装を開け、クッキーを一齧り。
まぁ、美味しいよね。
ところで、そろそろ手を放して貰っても?
「コーヒー欲しい」
「流石にコーヒーは……」
持って来てないよ、と言おうとしたら、目の前に『ご自由にお飲みください』と書かれたポットが。
中は何だろうな?
「これ、コーヒー」
「飲みます?」
「コクコク」
というわけでようやっと右手が解放され、ポットからコーヒーを注ぐ。
カップじゃなくてタンブラーなのいいな。
客室に持ち帰ってゆっくり飲める。
「生クリームと削りチョコ、あとキャラメルソースマシマシで」
「俺、スタッフじゃないんだけど……」
さも当然のようにトッピングを注文するじゃん。
いやまぁ、やってあげますけれども。
「はいどうぞ」
「感謝」
短い漢字二文字でお礼を言われてしまった。
まぁ、いいけどさ。
「……お、アロマなコーヒー」
で、もちろん俺もコーヒーを飲んだけど、すっごいフルーティなコーヒー。
口に含んだ瞬間に、一気に香りが鼻に抜ける。
そして舌の根に届くしっかりとした苦み。
酸味は抑えめ、コクもある。
美味しいコーヒーじゃん。見直したわドワーフ。
「……ん、仕事」
「?」
で、隣で飲んでたガーディアンさんが、いきなりそう言ってタンブラーを放り投げ、姿が消える。
「はあっ!?」
あまりの出来事に一瞬動きが止まるも、とりあえず放り出されたタンブラーを回収しようとして、
「ただいま」
俺の手がタンブラーに届くよりも前に、戻ってきたガーディアンさんがタンブラーをキャッチ。
何事も無かったかのように飲み始める。
そして、
「お菓子……まだある?」
当然の権利とでも言うように、俺にお菓子をねだってくるのだった。




