?「お菓子お菓子お菓子」
アメジストハイボール、一番近いので言うならジントニックかな。
ただ、使われているジンはいわゆるジャパニーズジン。
カボスのような風味と山椒のような香りがほんのり鼻から抜けていって。
ハイボールと呼ぶには甘い味わいだけれども、確かに飲みやすくて美味しい。
――そんな事よりも、
「ソフトドリンク……ですよね?」
「はい」
当たり前にアルコールを感じるわけですけど?
「ドワーフの町では、アルコール度数が一桁の物は全てソフトドリンク扱いよ」
「あ、そうなんですか」
てことはビールやワインもソフトドリンク扱いの場合があるのか。
もしかしてストゼロもソフトドリンク扱い?
いや、アレをソフトドリンクはヤバいでしょ。
――って、待て待て。
ナチュラルに流したけど、すっごい聞き覚えのある声が聞こえてたな。
「……お久しぶりですね――グリムダさん」
「もしかして私の名前、忘れてなかったかしら?」
「滅相も無い」
そう、俺にドワーフの町のアルコール基準を教えた声。
その主は、クルーズツアーの時にノクティアさんの喫茶店でご一緒したハイドワーフ、グリムダさんのもの。
いやぁ、また会えるとはね。
「それで? 今回はドワーフのツアーに参加するのね?」
「みたいですねぇ」
俺が希望したわけじゃないからね。
あくまでミステリーツアーのランダムな中から選ばれてるっていう。
……恣意的な何かが裏で働いていると言われたら俺は信じるけれども。
「クラッカーかチーズでも貰えば? ナッツもあるわよ」
「あ、じゃあナッツをください」
グリムダさんの助言で、俺はつまみを手に入れる。
もちろん注文先はバーテンダーさんです。
列車乗る前から酒か。いい身分になったもんだ全く。
「グリムダさんもこちらのツアーに?」
「ええ。ま、何と言うか、帰省みたいなものね」
「ほーん」
よく分からんけど。
ま、適当に相槌打っときましょう。
「……そろそろ乗れてもいい時間なのに、遅いわね」
「そうなんです?」
「普通、出発の一時間前には乗り込めるはずなのよ。もう二分も過ぎてる」
「誤差では?」
えるしってるか? にほんいがいでの、こうつうきかんはじかんにるーず。
「他の路線ならいざ知らず、『地目一箇』は時間厳守の筈なのよ」
あ、やっぱり時間にはルーズなのか。
『駅構内のお客様にご連絡致します。お客様の中に、特級ガーディアンの資格をお持ちの方がおられましたら、至急一番乗り場までお越し頂けますと幸いです』
なんて話してたら、放送が。
ガーディアンを今募ってるのか?
普通、そういうのってもっと事前に計画しておくものでは?
なんか不測の事態とかなのかな?
「あっきれた。依頼していたガーディアンにすっぽかされたんだわ」
「結構あるんです?」
「無いわよ。普通。ただ、呼び出してた特級ガーディアンって、常識外に強い存在達なのよ」
「ふむふむ」
「そんな存在が、私たちの言う常識を持ち合わせている事が珍しいというか……自分以外の事を気にしないというか……」
「あー……」
何となくだけど言わんとしてることは分かる気がする。
力はある。ただそれを、なぜ自分以外の為に使わねばならん? みたいな存在ばかりという事か。
大変そうだなぁ、旅行会社。
そんな存在も、船だの列車だのに付けなきゃなんでしょ? 護衛として。
どうするんだろ。
――と、
「が、ガーディアン様、見えられました!!」
ラウンジに、駅員さんの声が響く。
さっきの放送を聞いて来てくれたのか、それとも、元々来る予定だったガーディアンが来たのか、俺には分からない。
――ただ、
「じーーーー」
めっちゃ見られてる。
連れて来られたガーディアンさんに。
見た目は小学生くらいの女の子。
白いワンピースに、白い髪。
首に赤いチョーカーと、胸元にでっかい黄色の宝石のペンダントを身に付けたその存在は。
見ていると、何となくスイさんを思い出させる。
とりあえず手を振っとこ。
「あちらの奥で契約のお手続きを……」
「ん、早く済ます」
そうして駅員さんにラウンジの奥へと連れて行かれたガーディアンさん。
そんなガーディアンさんの後姿を見送ったグリムダさんは……。
「このタイミングで契約なんて、元々来る予定のガーディアンじゃないわね」
「そうなんです?」
「本来のガーディアンなら、もっと前から契約しているはずだもの」
「なるほど」
「でも、こんなタイミングで特級のガーディアンが駅構内に居るなんて……ほぼ奇跡ね」
「そこまで?」
なんか、今までのツアーでガーディアンの被りって無かったから、俺としてはガーディアンって結構いるんじゃないの? と思っちゃうんだけど。
「ガーディアンにも階級があって、実力が高いほど階級が上がるの」
「何となく分かります」
「で、特級と言うのは一番上の階級よ」
「でしょうね」
「判断基準は上限越え」
「……ん?」
「ガーディアンの階級を決めるテストで、上限を超える数値を叩き出さないと特級にならないわ」
……さっきの女の子が?
テストの上限をぶち破ってる?
いやでも、額に稲妻の傷がある魔法使いの物語でも、仲間の女の子はテストの上限越えてたし……。
「……何してるんです?」
急に静かになったと思ったら、何やらペンを走らせているグリムダさん。
「ツアー会社へのクレーム」
やめたれ。




