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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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偶然な出会いを予約

「……ふぁ」


 食事を終え、ホワイトコーヒーでゆったりとした時間を堪能していたところ。

 血糖値が上がったせいか、眠気が。


「眠いか?」

「少し」

「ふむ。部屋を用意させよう」


 ……へ?


「仮眠を取ると良い。なぁに、仮眠の域を出て眠りこけてしまっても、貴様の家まで送り届けておいてやろう」

「……それは普通にありがたいですけど……」

「おい、客室を一室すぐに用意だ。用意出来次第こいつを案内しろ」

「かしこまりました」


 眠気で回らなくなってる頭に、スイさんやドラゴンハウスキーパーさんの声が届くも、多分理解力は半分くらい。

 それでも、とりあえずは家までスイさんが送り届けてくれるみたいと言う事は理解出来たけれども。

 ありがたいから是非ともお願いします。


「部屋の準備が出来ました」

「うむ、連れて行け」

「失礼します」


 で、あの……案内しろって先程申されておりましたよね?

 それが今回連れて行け、に代わってますよね?

 そしてドラゴンハウスキーパーさんが了承したようで、俺を抱き抱えましてですね?

 いやあの、お姫様抱っことかではないんですよ。

 ただその、座ってた体勢のままヒョイと肩に担がれましてですね。

 なんか、漫画に居た、弟の肩に座る兄みたいな構図に……。


「わっ!? ちょっ!?」

「暴れられると落とす可能性がございます。どうか落ち着いてくださいませ」


 そう言われましても!!

 ……あ、普段の自分の高さよりも高い位置に目線があるの、割と新鮮かも……。

 

「こちらの部屋にございます」

「……部屋?」


 案内というか、肩に担がれて連れてこられたところ……どう見ても部屋じゃないんですけど。

 いえその、大きくて部屋じゃなくて家だろとか、そう言ったものではなくてですね?

 ――絵、なんですよ。

 何言ってるの? って話なんですけど、マジで絵画でして……。

 まさか、この絵の中に入るんです?


「失礼致します」


 はい、そのまさかでした。

 失礼しますとか言いながら、俺を絵画に向けてぶん投げました、ドラゴンハウスキーパーさん。

 で、当然俺はぶつかった衝撃に備えて顔とか頭を手や腕で覆ったんですけれど……。

 予想していた衝撃は来なくてですね……。

 じゃあ何が来たのかと言うと、もふっ! と。

 それはそれは柔らかい、ふかふかの布団に着地と同時に包まれる感覚ですわね。


「……マジで絵の中に入っちゃったの?」


 とりあえず起き上がり、辺りを見渡しても、さっきまで見ていた絵画にそっくりの様子。

 天蓋付きの大きなベッドに、フッカフカの枕と布団。

 ベッドの脇にはフルーツの盛り合わせと、冷やされたワイン、冷やされたソフトドリンクともてなしの準備もバッチリ。

 室内だけを切り取ると、高級なホテルの一室と言っても過言ではない。

 まぁ、実際はホテルの部屋というか絵画の中なんですけどね、初見さん。


「……いいや、寝よう」


 なお、ふかふかの布団、ベッド、枕のジェットストリームアタックにより、俺の眠気は増幅され、あっさり負けてしまう模様。

 俺はか弱い生き物のなんだ……済まない。



「よくやった」

「別に貴様の為ではないのだがな?」

「でも、これで私も……」

「我のを横取りするでないぞ?」

「――――しない」

「絶対にしようと考えていたな?」


 忠が絵画の中のベッドに潜り、寝息を立てはじめたのを確認し。

 翠竜宮城へと来ていたもう一人の客人――轟龍が姿を現す。

 翠龍とは対照的な、華奢な少女のような姿で。

 忠の寝る、絵画を見上げながら。


「記録、完了」

「これで貴様も、彼奴がこの世界に来れば察知出来るというわけだ」

「そう」

「後は察知した場所からツアー内容を把握し、当日募集のガーディアン枠に自らをねじ込んで……」

「彼と関係を持ち、私もお菓子を貰えるようにする。完璧な作戦」


 割と可愛い事を考えていた。

 ……ただし、可愛いのは目的だけで、過程を見ればほとんどがストーカーのそれであるが。


「多くを語らず、のその口調も変えた方がよいぞ?」

「……? なぜ?」

「お菓子をくれと言えるか?」

「――――言う」

「ならば良いが……」


 そうして、やる事を終えた、と外へと向かう轟龍は。


「貴様の分のケーキもあるぞ?」


 一度足を止める。

 ――が、


「不要」


 そう言って再び歩き出し――。


「彼奴から捧げられたお菓子を再現した物もあるぞ?」

「早く出す」


 翠龍の一言で、おおよそ一歩では移動不可能な距離を移動し、翠龍の前へ。

 そんなやり取りがあった事など、忠は当然知る由もなく夢の中。

 彼と轟龍が出会うのは、もう少しだけ先の話である。

 ――具体的には次回のツアーである。



「……よく考えたら、仮眠じゃないよな」


 ガッツリベッドに入ってぐっすりでしたが?

 仮眠って、ベッド以外で寝る事じゃないんだっけ?

 まぁ、時間見たら二時間とかしか経ってないから仮眠って事で。


「……どうやって出たらいいんだろう?」


 ここ、絵画の中なんだよな……。

 入る時は投げ入れられたんだけど、出る時はどうすれば……?


「……ん?」


 なんて思っていたら、何やらこちらに伸びてくる腕が。

 ――スイさんのだな。

 掴めばいいのか?

 よいしょっと。


「うわっ!?」


 スイさんらしき腕を掴んだら、そのまま凄い力で引っ張られまして。

 

「いってて……」


 どうやら絵画の外に出られたらしい。

 しこたまお尻打ったけど。


「乱暴過ぎじゃありませんかね?」


 スイさんへの抗議を口にしながら立ち上がると……。


「……? 俺の家なんだけど?」


 なんか、俺の家に居ました。

 もしかして、送り届けてくれた?

 ……ハッ!? 荷物! 荷物どこ!!?

 ――ドサッ!


「ぐぇ……」


 荷物あった!

 あったというか降ってきたんだけど……。

 怪我したらどうするんだ全く……。

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