限度はある
めーっちゃ抹茶。
あの、こんなに抹茶の味が濃いならもっと深緑というか、とにかく濃い色をして貰えませんか?
ずんだ色というか、明らか豆系の色しといて、あ、自分抹茶っす、は不意打ち甚だしいのよ。
というか、
「抹茶、普通にあるじゃないですか」
抹茶は高級、みたいな事をエルフツアーの時に言ってなかった?
普通にスイさん、抹茶使ったデザート作れるんじゃん。
「来客をもてなすような場合に出されるのだぞ? しかも、我が『客だ』とまで言わねば出されぬ代物よ」
「……もしかして、俺ってかなり歓迎して貰ってます?」
「今更気が付いたのか……」
スイさんため息。
いやでも、全くと言っていいほど実感無いし……。
「基本的に主様は招くよりも招かれる様なお方です。そのようなお方が自らのお客様だと言われたのですから、何か失礼があってはいけませんので……」
「スイさんってマジで凄い存在なんですね……」
俺が持ってきた現代お菓子に尻尾振って、満面の笑みで食べてたスイさんが、ねぇ。
……ん?
「だったら、ガーディアンなんてなんでやってるんです?」
そんな身分の人が、どうしてわざわざガーディアンを?
「暇潰しよ。あと、たまには身体を動かさねば鈍る」
「はぁ……」
偉い人の考えは俺には分かんないかな。
足なんて不要だよ。
「で? どうだ? 味の方は?」
「美味いっすよ? めっちゃ抹茶が濃いですけど」
抹茶が濃いせいでクリームの甘さの後に苦さと渋さがある。
でも、そのおかげでクリームだけを食べてもウッてならないかな。
この抹茶の濃さは好き嫌いあると思うけど、まぁ俺はまだ好きの範疇かな。
ぶっちゃけ、日本にはもっと濃い抹茶が存在するし。
あれだ、抹茶の濃さが選べるソフトクリームとかあるじゃん?
あれの、抹茶濃度上から二番目くらいの抹茶の濃さ。
一番上ではない。
「濃すぎるか?」
「これより濃い抹茶味のソフトクリームを知ってるんで、濃いは濃いですけど、まぁこれ位か、って感じです」
「それよりも濃い抹茶味……ですか」
なんか、ドラゴンハウスキーパーさんが扉の前でドン引きしてるんだけど。
いうて、本当のお抹茶が一番濃いわけじゃん?
そのお抹茶よりも、ソフトクリームにする時点で薄まるじゃん?
つまるところ、抹茶味の何かってだけで、本物のお抹茶には濃度では敵いっこないわけで……。
「そう言えるという事は、お主はその、それよりも濃い抹茶味を体験しているという事だな?」
「まぁ」
京都にプチ旅行をしに行った時に。
雪が降る中、お抹茶と最中をいただきました。
いい体験だったよ、あれは。
「申し訳ありません!」
「よい。それより、貴様。間違いなく美味いのだな?」
「へ? あ、はい、もちろん。ぶっちゃけ抹茶が濃ければいいって訳でもないんで、しっかり美味しいですよ?」
「だそうだ。気にするな」
なんかドラゴンハウスキーパーさんが急に謝ったし、スイさんに再びの感想を求められたし。
何だったんだろう……。
「スイさんが食べてるのはタルトですか?」
「うむ。フルーツタルトだな。……欲しいか?」
「すぐにお焼きします」
あ、あの……。
ただ確認しただけで、まだ食べるとは……。
いやまぁ、食べたくはあったけれども。
「お待たせしました!」
だから、待ってないって。
あまりにも早いな。
紅茶の時とほぼ同速だぞ?
ちゃんとタルトは焼けてるのか?
――焼けてますね。
「ベリータルトになります」
言われた通り、タルトの上にはベリー系の果実と思われるものがぎっしり。
ちなみにタルトは一口サイズ……とは言わないまでも、三口くらいで食べきれるサイズだね。
「……おぉ、美味い」
味の方は、ベリー系というかさくらんぼのような味。
ただ、食感はベリー系なのに味がさくらんぼでちょっと面白い。
タルト生地はサクッとしててバターの香りがしっかりあるし、タルトの上のカスタードクリームとさくらんぼ味ベリーの相性も抜群。
そして何よりも紅茶に合う。
「ふぅ……」
美味しいものを食べた時のため息と、紅茶と相性のいいものを合わせた時のため息と。
――満腹が近くてもうそろそろ限界です、という三つの意味が混じったため息が出た。
「満腹か?」
「ですね」
そういえばスイさんは現実視持ちなんだっけ。
俺が満腹な事も分かっちゃうのか。
今だとありがたいかな。
「コーヒーなどはどうだ?」
「あ、いただきます」
「だそうだ」
なお、コーヒーは入るもよう。
甘い物の後だから、ちょっと苦めのやつがいいな。
「お待たせしました」
だから早いって。
マジでどうやってるんだろ?
この部屋と外とで時間の進み方が違うの?
あるいはドラゴンハウスキーパーさんが対象の時間経過を早める魔法とか扱えたりするんだろうか?
う~む、謎は深まるばかり……。
「あ、ホワイト」
「特に指定がありませんでしたので……。他の銘柄に変えますか?」
「いえ、大丈夫です」
ちょっと面喰っただけなので。
そういえばそうだよな。ホワイトコーヒーは高級だって言ってたもんな。
――うん、美味しい!




