やっぱりか……
「ようこそ! 翠竜宮城へ!!」
タイやヒラメが舞い踊る! オトヒメサマヲオマモリシマス!!
いや、タイもヒラメも居ないし誰も舞い踊ってはいないんですけど。
船を降りたら、こう、子供のころに見た絵本に描かれてた竜宮城そのまんまな見た目の場所に辿り着きまして。
ここが竜宮城か~……と思ってたわけですよ。
そうしましたら、
「何だ、来たのか」
何度か聞いた事がある声が後ろから……。
あぁ、やっぱり。
振り返ってみれば、スイさんの姿が。
マジでよく会いますね。
今の所全部のツアーで会ってません?
「てことはやっぱり……」
「うむ。我の城だ」
ですよねー。
まぁ、名前から察しは付いてたんですけれど。
「貴様、今日の予定は何か入れたか?」
「いえ、特には」
「ふむ……。いつ頃までに貴様の家に戻れればよいか?」
「夕方には帰っていたいですねぇ」
「ふむふむ……腹は空いておらんか?」
「まぁ、少しなら?」
ちなみに今、俺はスイさんにがっちりヘッドロックをされた状態でこの会話をしております。
スイさん身長高いから、俺が普通に立ってるのに腕と胸で挟まれてるんだよな。
頬の片側は柔らかい感触があってまぁ嬉しいんだけど、腕の方は普通に痛い。
あと、周囲の目があるからやめて欲しい。
「よし、城に招待しよう。貴様ら、荷物を運べ」
と、スイさんが指パッチンをすると、俺が持っていた荷物が手から離れる感覚。
何が起こったか見たいけど、スイさんががっちり俺の頭をホールドしているせいで何も情報が得られない。
「暴れるなよ? 落とすぞ?」
という言葉の直後、俺の足が地面を離れて……。
「はっ!? ちょ!?」
そのまま、浮遊状態で高速移動。
痛い! 風じゃなくて海水が顔面を叩くの凄く痛い!!
「一名様ご案内じゃぞ~」
もしかしなくても、これって拉致なのでは……?
*
……えぇっと。
俺はスイさんに拉致されて、竜宮城城下町でも一番デカい建物に連行されまして。
そのデカい建物は、現在のスイさんの居住スペースらしくて。
なんか、角や尻尾、羽が生えた方々が、凄い数お仕事をされていまして……。
「我の客だ。もてなせ」
と、マジで紙ごみみたいにぽいっと投げられた俺を、数人の龍人族ハウスキーパーさん? でいいのかな? がキャッチ。
即座に地面に丁寧に立たされ、まずは衣服のしわや汚れなどを整えられ。
ポカンとしている俺をよそに、恐らくはハウスキーパーさん達の魔法で俺の身体は再度宙へ。
そしたら、今度は海水が顔とかに当たる事も無い移動で城内をスーッとスライド移動。
扉は勝手に開くし、すれ違うドラゴンハウスキーパーさんは俺に深々とお辞儀するし。
マジで俺が何もしないまま、客室と思われるとんでもなくデカい部屋に到着。
……俺がマーメイドツアーで泊まった部屋の三倍くらいの広さがあるんだけど?
「盟主様はもうじきご到着なされます。それまでに何か飲み物などは?」
「……へ? あ、ああ。じゃ、じゃあ、紅茶とか……?」
「指定銘柄等ございますか?」
「あ、いや、特には……」
「かしこまりました、失礼します」
そう言って深々お辞儀の後、部屋を出ていくドラゴンハウスキーパーさん。
ていうか、座らされたソファがふかふか過ぎてヤバい。
体重をかければ程よく沈むのに、しっかりと弾力があるとかいう矛盾した性質を持ってる。
このソファなら座ったまま寝ても熟睡出来るだろうし、起きた時に体のどこも痛くなって無さそう。
……あと、単純にデカい。
俺が二十人は並べる位の横幅はあるし、背もたれに至っては俺、頭が背もたれ内に収まってる。
二メートルくらいあるんじゃない? 背もたれの高さだけで。
ちなみに座ったままだと足が地面に付かない。
なんか、巨人の世界に迷い込んだみたいになってる。
あるいは、自分の身体が縮んだ世界か。
「お待たせしました、『純真』という銘柄の紅茶にございます」
「どうも……」
で、持ってきていただいた紅茶は……。
こう、白いカップに白いソーサー。両方には金で描かれた植物のつる。
そして、中に入った紅茶は、まるで夕日のような濃いオレンジ色……。
「ふわ……いい香り」
カップを近付けるだけで、ふわりと香るは紅茶の香りと……白桃のような、柔らかく、甘い香り。
この香りだけで心が落ち着くのが分かる……。
静かに一口だけ飲めば、一気に甘い香りが口の中に広がって。
その後から、紅茶の滋味が静かに口の中に広がっていく。
飲む前の香りは白桃だけど、口に含むと感じるのはメロンっぽい香りだね。
香りは甘いけど、実際の紅茶の味はそこまで甘くない。
総じて、多分高いお店で飲める紅茶だと思います。
高いお店で飲んだ事無いから分からないけど!!
「待たせたな」
BOSS! 違うか。
それにしても……。
なぜにドレスを着てらっしゃる?
いやその、水色と緑色の綺麗なドレスですけど。
胸元にはどでかいエメラルド? がぶら下がってて綺麗ですけど!
「多少の空腹という事であまり重い食事は用意させなかったぞ?」
「ありがとうございます」
「アフタヌーンティー……では時間的に違うな。まぁ、ランチティーという事にしよう」
そう言って、スイさんが手を叩くこと二回。
あの、アフタヌーンティーでしか使われないようなスタンド? に、色々と乗せられて登場。
一つしかないって事は、これをスイさんと分け合って食べる感じか。
――で、疑問なんだけどさ?
一番下の段に、サンドイッチじゃなくて、ハンバーガーとか、ホットドッグとか置いてあるように見えるの、気のせい?




