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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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上見ればわたっこ

 ……ふぅ。

 大満足でしたわよ。

 お腹一杯。


「そろそろシメる?」

「そうね」

「じゃあ、シメを注文しますか」


 どうやら海中グリルにもシメは存在するらしい。

 何だろうな?

 バーベキューだとハンバーガーがシメの定番らしいけれども。


「塩バニラアイス、人数分」


 普通にアイスでした。

 ハンバーガーとかじゃないんだね。


「シメはこれに限るよねぇ」

「これとコーヒーね」

「あ、俺もコーヒー」

「ブラックでよき?」

「よきよき」


 更にコーヒーも追加注文。

 食後に飲むブラックコーヒーはまた格別なり。



「今日はどうもありがとうございました」

「いえいえ~一緒に食べられてうちらも楽しかったし~」

「お店に並ぶの、短くして貰えたから」

「食べっぷりとか見てて気持ち良かったしねぇ」


 ほんのり塩気の効いたバニラアイスを食べ、苦め酸味強めのコーヒーで一服。

 そうしてお店を出て、ハーピー三人組と別れの挨拶。

 結局ずっと焼いて貰ったし、注文はお任せだったしで、俺としてはマジで何もしてはいないのだが。

 まぁ、向こうがそう思ってくれてるならいいか。


「じゃ、うちらはこの後のダンスイベント行ってくるから」

「おにーさんも来る~?」

「いや、俺はもう部屋に戻るかな」


 どうやらハーピー三人は、この後のイベントに顔を出す、と。

 大丈夫かな? お酒飲んでたんでしょ?

 そんな状態で踊っていいの?

 酔いとか、すぐ回らない?

 あと、文字通りに千鳥足になったりとか……。

 まぁ、流石に弁えてるでしょ、あの子たち。

 特に、ヒバリと呼ばれていた子はしっかりしてそうだったし。

 多分大丈夫だろうな、うん。


「……ふぅ。ちょっと飲み過ぎたな」


 ハーピーたちにはああ言ったものの、ちょっと夜風に当たって来ようかな。

 ――まぁ、海中なので風無いんですけど。

 夜水流? いやでも、語呂悪いなぁ……。


「とか言いつつ行くんですけどね」


 まぁ、酔い覚ましには風も水も変わらんよ。

 むしろ水の方が酔いは覚めるだろ、知らんけど。


「……適当に貰ったこのカクテル美味いな」


 で、気が付いたら手元には謎の飲み物が……。

 嘘です。

 普通に頼みました。

 ノンアルコールでおススメの物をって言ったら渡されたよ。

 名前はえーっと……たしか――パナシェ? だっけな。

 本来はビールとレモンソーダで作るらしいんだけど、ノンアルコールビールとレモネードで作ったのだとか。

 アルコールは感じないけど、ビールの苦みとレモンの酸味、蜂蜜の甘さが綺麗に調和してて美味い。

 レモンのほんのりした苦みが一番最後に効いてるから、甘いけどサッパリ飲めるんだよね。

 こういうサッパリした飲み物は酔ってる時に特に美味しく感じるんだ。


「……ん?」


 雪?

 いやいやあんた、ここ海中でっせ?

 雪なんて降るはず……。


「雪……ではないな」


 無いって。

 ちょっと雪っぽく見えた白い何かが海底に沈んでいってるだけだって。

 ――なにこれ?

 めっちゃ雪っぽいんだけど……。


「マリンスノー。深海に沈んでいく、海中や水面付近で使用された魔力の残滓だ」

「へぇ……」


 なるほど?

 今辺り一面に降ってるこの白いのが魔力の残滓、と。

 てことは、それだけ海中や水面付近で魔力が使われたって証拠か……。

 って、


「ノクティオさん、居たんですか」

「ホーッホ。今しがた来たばかりだ。そろそろマリンスノーが見られると思ってな」

「定期的に降るんです?」

「毎日降る。ただ、日によって量の多い少ないはあるがな」

「なるほど」


 毎日降るのか。

 ……じゃあ、何も知らない彼女をクリスマスにこのツアーに連れてきて、ホワイトクリスマスだよ、とか言えるわけだね?

 彼女どころか、誰かと一緒に来る予定も、何ならクリスマスの予定すら未定ですけれども。

 現在絶賛募集中です。

 一緒に目的地経由地乗り物不明のワンチャン異世界に行けるツアーを一緒に回りませんか?

 ……こんな募集してるやついたら、まず間違いなく距離置くね、俺なら。


「ちなみにこれって肌に当たったり、口に入ったりしても影響は無いんですか?」

「無い」

「ふむ」


 ――食べないよ?

 こう、もしかしたら……思って聞いただけで、別に無害だからと口に入れようとは思わないからね?

 

「このマリンスノーが海底で積り、長い年月をかけて魔鉱石になると言われている」

「……魔鉱石?」

「魔道具の動力源のようなものだ」

「電気とか、燃料ってことか」


 結構異世界も現代に近いシステムの部分があるよね。

 動力が全部魔法とかじゃなく、こうやって動力源が存在してたりとか。


「いや、電機は動力にはならんだろう?」


 ……そこは近くないんだ。

 まぁ、わざわざ電気を動力に変換しなくても、魔法でやればいいしなぁって感じだし。

 そこは現代らしく発展しなかったんだな。

 なるほど。


「ソウデスネ」


 適当に返事しとくべ。

 その話を詳しく! とか言われても、今の俺の頭じゃうまく説明できる自信が無い。

 ――酔いが回ってるからだからね?

 素面ならちゃんと説明出来るからね?

 ……多分。


「深海はやはり冷えるな」

「言われてみれば……」

「私は部屋に戻るが、あまり長く居て酔いは覚めたが風邪をひいた、などとならぬようにな」


 そう言って、船内に消えていくノクティオさん。

 ――俺も戻って寝よう……。

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