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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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意外な判別方法

 ……いや、うん。

 あのね?

 大きいアサリだこれ!!

 てっきりホタテだと思ったのに!

 ふっつうになんか見たことあるビジュアルの貝が、見た事無い大きさで登場しててさ。

 なんか、大きいアサリって怖いな……。

 ちなみに大アサリってあると思うんだけど、あれよりさらに大きいからね?

 というか、ホタテサイズのアサリです本当にありがとうございました。


「醤油を垂らすと最高」

「やります」


 で、そんな見た目で醤油が合わないはずだろって事で。

 醤油を数滴垂らし、貝殻に口付けてスープやバターと一緒に口の中へ。

 大きくて口の中が一杯になったけど、これはもう幸せというほか無い。

 焼きたてで熱々、中から溢れるスープも当然熱い。

 それを、口を開けてハフハフと空気を循環させて冷ましながら食うのがうめぇんだ。

 あと、通常のアサリの時はあまり感じないけど、このウソ貝の貝柱、かなり食感がしっかりしてて美味い。

 ホタテの貝柱より若干固い感じかな?

 なんというか、エノキの軸部分の集合みたいな感じ。

 そこも噛めば噛むほど美味しいスープが出てくるわけで、これがたまらんのよ。


「ンッンッンッンッ――プハーッ!! ビールが美味い!!」


 で、ウソ貝であちあちの口内に、熱冷ましと言い訳しながらビールを流すのがたまんねぇんすわ。

 バターの塩味、コクとウソ貝の旨味、醤油の塩味を全てビールで洗い流す。

 はーあ。このために生きてたんだなぁ、俺。


「はい、ナイス」

「どうも」


 へへ、褒められちゃった。

 さては俺の飲みっぷりに感動したな?

 ……分かってるよ、ナイス貝ね。

 知ってる知ってる。


「ちなみになんですけど」

「?」

「ス貝とか、トルネードサザエとかってあったりします?」

「ス貝は聞いた事無い」

「さいで」

「でもトルネードサザエはある」

「あるんだ……」


 ほぼほぼ冗談で言ったのに。


「注文する?」

「美味しいです?」

「好みは分かれる。苦かったり、ちょっと臭かったりする」

「ん~……止めときます」


 この人達が注文してないって事はまぁ、本当に好みが分かれるんでしょうよ。

 そしてそれは、俺が好まない可能性もあるという事。

 旅行の鉄則その一、料理に挑戦するのはいいが冒険し過ぎはアウト。

 我々日本人、ぶっちゃけ料理さえ美味しければ満足なのよ。

 つまり逆に言えば、料理が微妙だと残念な記憶として残ってしまう。

 という事は、折角いい思い出を作りに来ている旅行で、わざわざ残念な記憶になり得る行動をする道理は無いって事。

 現地民がそういう反応なら尚更ね。

 素直にナイス貝を食べますわよっと。


「好みでスパイシーソースかけたり、酢も美味しい」

「バルサミコ酢とかあったりは?」

「……バルサ?」


 無いのか、こっちには。

 結構好きなんだけどな、牡蠣にバルサミコ酢。

 おっと、ナイス貝だっけ?

 焼き上がりのナイス貝にレモンを一絞り、人によってはここに醤油とか、七味とか。

 俺はバルサミコ酢があったら使うんだけどな。

 まぁ、無いものはしょうがない。

 では――?

 待て待て待て待て!!

 牡蠣だぞ? 異世界の! 俺は! このビジュアルを! 既に過去に体験している!!


「一応聞きますけど、貝ですよね?」

「そうよ?」

「甘かったりしませんよね?」

「? ああ、スコブコの実と思ってるのか」

「納得。でも安心して欲しい。スコブコの実は、実に極小の種がある」

「ナイス貝は果物じゃないから、その種が無いわけだ」


 なるほど?

 てことは俺が今まで食べてた牡蠣バナナはスコブコの実という食べ物で、判別方法もしっかりある、と。

 種ねぇ……。

 あったかなぁ……?

 記憶にないわ……。


「ちなみにスコブコの実の種、ハーピー族でも限られた種族と、龍人族くらいしか見付けられないほど極小」

「エルフが意地と魔法で拡大して探してただろ?」

「それ言わないとエルフ切れるもんね」


 つまりは人間には判別不能っと。

 食べる前に確認するの大事だな、うん。

 それじゃあ改めまして、異世界牡蠣、いただきます!


「……これよこれ」


 俺のよく知る牡蠣ですわ。

 あれだね、岩牡蠣じゃなく真牡蠣サイズで非常に食べやすいサイズ。

 口に入れると磯の風味が広がるのと同時に、程よい塩味と身から出たスープが舌に乗る。

 その後で加熱されても縮んでない身が流れてきて、レモンの酸味と風味が磯の香りを瞬時に吹き飛ばす。

 そうして口の中に迎え入れた牡蠣を一度噛めば、濃厚かつクリーミィな旨味に変貌し、口一杯に旨味のスープが溢れていく。

 溺れないようにスープを飲みながら、大事に二回三回と噛み締めてたっぷり時間をかけて堪能。

 飲み込んだ後にはやっぱりビールを追いかけさせ、ナイス貝との勝負に完全勝利。

 いやぁ、美味いっすわ。


「やっぱり美味いっすねぇ」

「食べた時あった?」

「よく似た食べ物を。もう二、三個食べたいですね」

「じゃあ頼む」

「私コフカ追加~」

「三バカ追加で~」

「あとビールもお代わり」

「まだだ、まだ終わらんよ……」


 というわけで、当然の様にお代わりを要求。

 牡蠣なんてなんぼ食べてもいいですからね。

 なお、一日に二桁個数食べると亜鉛の摂取過剰に懸念があるもよう。

 まぁ、そうそう二桁個数なんて食べないけどね。

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