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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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ややこしい……

 というわけで手渡される海羊。

 大丈夫だよね?

 食べても乗っ取られたりしないよね?


「大丈夫大丈夫」


 ハーピーの一人が率先して一口。

 しばし待機。


「大丈夫だっての」


 何事も怒らない事を確認して俺も一口。

 これは……。


「うっまい」

「でしょー?」


 しっかりした歯ごたえ。

 噛むと出てくる脂は甘く上品。

 なんだろうな、ブランド物の黒豚っぽい感じがする。

 脂が脂っこくなく、サラサラとしててさ。

 旨味と甘味、両方の性質を併せ持つ♠


「脂が美味いのよ」

「分かる」


 マジで思う。

 脂身が美味いわ。


「で、口の中に広がった脂は――」

「炭酸とアルコールで洗い流す」

「分かってんじゃん」


 という事でコーラサワーで口の中の脂を洗い流し。

 また海羊肉にかぶりつく。

 で、口の中を脂の旨味と甘味でいっぱいにしたら、またコーラサワー。

 おいおい、永久機関が完成しちまったな。


「そろそろ貝類行く?」

「おまかせ~」

「じゃあ、いく」


 そんな海羊肉に舌鼓を打っていたら、お次は貝類だそうで。

 貝類、いいねぇ。

 貝類と来たらビールがいいな。

 次はビールにしよう。


「アホ貝とナイス貝、ウソ貝でいい?」

「任せる~」


 なんか、ほぼ罵倒じゃなかった?

 今の注文。

 ――バカガイ、ほら貝か?

 ナイス貝はなんだ?


「人間的にさー?」

「ん?」

「このツアーって楽しめたの?」


 ソーセージマルメターノや海羊肉、ベーコンを食べていると、ハーピーさんからそんな質問が。


「楽しめたよ? 滅茶苦茶」

「ほーん。……多少は泳げるのに?」

「泳げるって言ってもこんな一日中は無理だし、深海も無理だからね? だから、色んな体験が新鮮で楽しかったよ?」

「なるほど……」


 いや、ぶっちゃけだけどさ。

 人によってはテンション上がり過ぎて寝れないとかあるんじゃないの?

 海の中をこれだけ満喫できるツアーなんて、好きな人はどれだけでもいると思うんだけど。


「多分、かなづちの人」

「シッ。言わないの。聞こえたら傷付くかもでしょ!」


 泳げますが?

 ちゃんと25メートルクロールで泳げますが!?


「でも……普通の人間でも、魔法を使えば半日は海中で生活出来るよ?」


 あ、じゃあ泳げない判定でいいです。

 水中息止め一分とかの雑魚なんで。

 魔法使えないんで。

 というか異世界の泳げる判定ハードル高すぎだろ。

 現代人間のほとんどが泳げない判定貰うじゃねぇかよ。


「アホとウソとナイスでーす」


 店員さんが先程の注文を持って来てくれて今の話題が切れたんだけど、持って来る時の呼び方よ。

 せめて貝を付けなさいよ。

 ただの罵倒にしかならないでしょ。

 ナイスが入ってるせいで、慌ててフォローした、みたいになってるのがちょっと面白い。


「全部そのまま焼く?」

「アホはソース入れて焼いて、ウソはバター入れる」

「ナイスは?」

「焼き上がりにレモン汁」


 美味しそうなのが腹立つな。

 もうちょっと美味しそうな名前を付けてやればいいのに。

 ――バカガイなり、親子丼なりを名付けてる日本人の言う事ではないか。

 

「生中追加で」

「飲むねぇ」


 飲まないでか。

 美味い食べ物には酒だって相場が決まってるのよ。

 

「というか、さっきの話的に、ハーピーってみんなかなづちなんです?」

「? ああ、かなづちというか……」

「羽根が空気を纏っちゃうから沈めないのよ」

「……ほぅ?」

「潜るにしても一瞬で、あとは水面に引っ張られるから」

「こんなツアーじゃないと、海……というか、水の中に居続けられない」


 なるほど?

 かなづちの真逆というか、沈みたくても沈めないのか。

 しかも理由が羽根が空気を纏うっていう、種族上仕方のないことと。

 そうなると、このツアーを選ぶって理由もわかるな。

 で、ハーピー以外の種族が少ないのも、魔法で半日以上海中生活が出来ちゃうからなんだろうな。

 色々と分かった気がする。


「はい、アホ」

「焼けたって意味ですよね?」


 最後まで言おうね?

 言葉が足りないとあらぬ誤解を生むぞ?

 えーっと、アホ貝はソースを入れて焼いたって言ってたな。

 どれどれ?


「……ふぅ」


 思わずため息。

 いやぁ、めちゃんこ美味いっすわ。

 ハマグリっぽい貝で、かけられたソースがよく合う。

 ソースはアレだね、オイスターソースっぽい感じ。

 スパイス感は多少あるけどそこまで強く無くて、旨味と醤油の風味がする感じ。

 それとアホ貝の身の甘さと旨味が合わさると、これまた相乗効果が凄い。

 アホ貝自体も、噛むとジュワッと溢れる旨味のスープが濃くてね。

 貝殻に残ったスープとソースをすすれば、そりゃあため息も出るほどの美味しさですわよ。


「生中お待たせしました~」


 タイミングよくやってきたビールを口の中にお迎えして、再度深呼吸。

 我、大満足なり。


「はいウソ」


 本当だが?

 あ、ウソ貝が焼けたのね。

 だからぁ! さっきからぁ! 紛らわしいって言ってるだるるぉっ!?

 ……ウソ貝はバターを入れて焼いたんだっけか?

 貝のバター焼きと言うとホタテだよね。

 いや、アサリのバター焼きとかもあるけど、バターで焼くのとバターを入れて焼くのは砂場とアスファルトくらい違いがあるというか……。

 ともあれ、ウソ貝――いただきます!!

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