瑞々しかったような……
流石にシャーベットなので、塩ラーメンのスープ味ではない。
何だろうな……塩バニラレモン味、かな。
バニラの感じと柑橘系の酸味、塩のミネラル感と塩味。
口の中をリフレッシュさせるには十分ですわよ。
「お待たせしました。クラウチングホエールのステーキになります」
「ありがとうございます」
そうして持って来られたお代わりのメイン、二皿目。
ふへへ、いただきまーす!!
*
「満足」
大きく息を吸い込み、口から鼻へ。
余は満足じゃ。
「デザートはクレープとなっておりますが、目の前でフランベ致しますか?」
「お願いします」
メインを食べて一息ついてたら、デザートの紹介が。
目の前でフランベするクレープって事は、クレープシュゼットかな?
いや、実際に食べた事は無いけど。
漫画で読んだのよ。
フレンチシェフが戦国時代にタイムスリップするやつ。
あれで作ってた気がする。
「念の為、その位置から動かないようにお願いします」
クレープの乗ったお皿が運ばれ、そこにオレンジ色の液体が回し掛けられる。
そして、スタッフが指パッチンをすると――ボゥッ、と一瞬火柱が上がり、すぐに火の勢いは小さくなって。
俺の前に皿が置かれるころには、すっかり火は消えてしまう。
いやまぁ、焼けてるままだったら食べられないんだけれども。
というわけで、いただきます!
「ん、んま」
モチモチのクレープ生地と、そこにしっかりと染み込んだオレンジ風味のシロップ。
先ほどのフランベでお酒の香りがほのかに漂い、気分を大人な感じに上げてくれる。
「バニラアイスは乗せますか?」
「お願いします」
温かいクレープにバニラアイスとか最強の組み合わせでしょ。
柑橘系の酸味もあって味わいバランスもいい。
「最高」
温かいクレープ生地と、冷たいアイスとの温度差がまた。
確実に美味しいを提供してくれますわ。
なんでこんな相反する組み合わせなのに合うんだろうね?
甘いとしょっぱいしかり、冷たいと温かいしかり。
「食後にコーヒーなどは?」
「いただきます」
「何かお好みはございますか?」
「お任せでお願いします」
今回の食事の締めくくりに相応しいコーヒーを。
まぁ、よっぽど変なコーヒーじゃなければいいよ、うん。
「かしこまりました」
で、運ばれてきたコーヒーなんですけど……。
「こちら、ホワイトコーヒーになります」
確か高かったはずだよね? ホワイトコーヒー。
*
ふぅ……。
満腹ではあるんだけど、それ以上に満たされてるって感覚が強いな。
美味しいものを食べたのもそうだけど、こうやって綺麗なサンゴ礁を見下ろしているからかも?
絶景は心を浄化してくれる。
「客室のバルコニーからも見下ろせるとはね」
冷蔵庫の中に入っていたドリンクを一本取り、バルコニーからサンゴ礁を眺めながらグビリ。
パッションフルーツとか、南国系の果実感が口一杯に広がるそのドリンクが、より非日常を演出してくれる。
普段飲まないもんね、こんな味の飲み物。
「明日はどこに行くんだろ……」
そう思ってパンフレットを確認すると――、
「……深海行くのか……」
正確には海溝ツアーとの事。
もっと言うなら、そこでワインを作ってるらしく、ワイナリー見学なんだって。
海ブドウを使ったワインで、水圧で絞るとかなんとか。
……普段から水圧掛かってない?
大丈夫かな。
大丈夫なんだろうな。
「海ブドウワイン……あんま記憶に無いな……」
前回のツアーでワインセラー巡りをした時にそんなワインを飲んだような……。
どんな味だったか忘れちゃったかも。
……いや、待て。
忘れたという事は、まるで初体験のように感じられるという事だ。
つまりお得。
そう思う事にしよう、うん。
「そう言えば、日は暮れたはずなのに、海の中はそこまで暗くなってないんだな」
もう月明かりしかないと思うんだけど、とてもそうとは思えない位に明るい。
昼……程ではないけど、少なくとも暗闇とかではないし。
普通夜の海って、ほぼほぼ視界無いと思うんだけども。
「この景色を見せるために、魔法で明るくしてる、とかかな」
ありがたいことに。
おかげさまでサンゴ礁を楽しみながら、寝る前のひと時を過ごせていますよっと。
*
……ふあぁ。
おはようございます。
しっかり目覚ましをかけていたので、今は日の出前です。
というわけで、朝日が差し込む瞬間を見に行きましょう。
「……早いな」
「ノクティオさんこそ」
メインデッキには、俺と同じく日の出を見ようと数人の乗客が集まっており、ノクティオさんもその中に居た。
俺より早く着いてたのに、早いな、じゃないよ全く。
「そろそろだ」
待つこと数分。
ゆっくりと。まるで、カーテンを開けていくかのように、光のベルトが差し込んでくる。
そして、その光のベルトに応えるように、海藻たちが揺れ、キラキラと何かを放出。
「あの光ってるのは?」
「魔力だ。海藻たちは陽の光を浴び、魔力を生成する。それが海に溶けだし、様々な魔物に影響しているのだ」
「へぇー」
異世界だと魔力を放出するのか。
現代だと酸素だよね?
……って事は、俺たちは魔力を吸って生きている?
つまり魔法が使える?
嘘です、使えません。
エルフツアーの時に判明してます、はい。
「……よし、戻って寝る」
「同じくです」
ひとしきり日の出を堪能し、海藻たちが魔力を放出する様を観察し。
俺とノクティオさんは、同じタイミングでそれぞれの客室へ。
何をするかって? まだ眠いの!!




