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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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海底に咲く花

 気を取り直して引き返し、後ろ髪引かれる思いで別れたクラゲたちと再会。

 今度こそもう会わないよ、多分ね。


「……すっげ」


 で、違う道を選んで目に飛び込んできた景色は、銀。

 いや、壁役のサンゴ礁の色が銀ってわけではなく。

 サンゴ礁の迷路の中に、イワシかな? 小魚たちが集まってでっかい玉みたいになってる光景、水族館でよくあるじゃん?

 それが形成されてた。

 その鱗が光を反射して銀に見えたってわけですねぇ。


「通っていいのかな……」


 なんか、魚の事情とか知らないけど、もしかしたらお楽しみ中の可能性もある?

 いやそもそも、こうしてイワシに似てるように見える小魚も魔物なわけで。

 ワンチャン、毒持ってる可能性とかあるよね?

 ヒレに毒がある魚とか現代にすら当たり前に存在するし、何の知識もない素人が触っていいと判断するほど危険な事はない。

 どうしようか……。


「石とか投げてみるか」


 効果があるのかは分からない。

 でもまぁ、集まってる所に見知らぬやつが石投げてきたら、とりあえず避けるよね。

 というわけで、海底に行き、よさそうな石を……。


「あ、どうも」


 海底と迷路サンゴの間にあるちょっとした空間。

 そこから、怪しく目を光らせてこちらを見る存在と目が合う。

 ……ウツボかな?

 襲ってきたりしないよね……?


「キシャァァッッッーーーー!!」


 襲ってくるんかい!!

 あと、魚なのに喋ったし!!

 蛇みたいな声だし!!


「あぶねっ!」


 身体を捻り、ウツボの移動先から回避。

 すると、ウツボは魚たちの塊に入っていって……。

 魚たち、蜘蛛の子を散らしたように解散。

 お、通れるようになったじゃん、ラッキー。

 ――あの、ウツボさん?

 なんか動きがぎこちなくなってません?

 魚の塊に突っ込んでから、何と言うか、人間でいう所の足をかばったような動き、みたいな感じになってる。

 どしたん? 話聞こか?


「し、死んでる……」


 そして、魚特有? の脱力して身体が横向きになり、ぷかーっと水面に向けて浮上を開始。

 これ、もしかしなくてもあの魚たちに毒あったよね?

 良かった……突っ込んだり触ったりしなくて。

 とりあえず、戻って来る前に通してもらお。



「ここが竜宮城だと言われても信じるな」


 ようやく迷路の中央。脱出点へと到達。

 ぶっちゃけ、迷路としての難易度はそう高くないよ。

 迷路の構造も複雑じゃないし。

 そもそも、この海底迷路探検の主な趣旨は、迷路を攻略しよう、ではないしね。

 迷路の中で、様々な光景に心を奪われよう、が趣旨だと勝手に解釈してる。

 ちなみに迷路の中央は、これまでの色とりどりのサンゴたちを見渡す事が出来て、さらに言えば、不思議な海藻たちが光ってるのよね。

 おかげで昼・・・・・・とまではいわないけど十分に明るく感じられる。


「景色は堪能いただけたでしょうか?」

「かなり」


 正直、俺の記憶の中でトップクラスの絶景たちでした。

 そう、たち、なんだよね。

 一か所じゃないんだもん、絶景だなって思ったところが。

 複数絶景だと思えるのは強いよ、絶景コンボが加算されるから。


「まだしばらくここに留まられるのも、船に戻るのもお客様の自由です」

「ちなみに一度船に戻ったらもう降りて来られないの?」

「可能ですよ?」

「じゃあ戻ろうかな。ご飯食べて、もう一回来るかも」

「お待ちしております」


 というわけで一旦船に浮上。

 中央のゴール地点から真っ直ぐ浮上すれば船に辿り着くから楽ちんだね。


「ホーッホ。どうだったかな?」

「めっちゃ綺麗でした」


 で、メインデッキに降り立ったんだけど、俺を待ち伏せでもしてたのか? というくらいにノクティオさんが出迎えてくれた。


「中からしか見られない景色もあるからな。中々の体験だっただろう?」

「今後の絶景、というワードのハードルが上がるくらいには」


 マジで。

 というか、海の中なのが強いよ。

 非日常感マシマシだもん。


「うむうむ。あとは船から見下ろした光景を楽しむだけだな」

「……?」


 船から見下ろす?

 迷路を?

 それで何に――。


「……こんな形だったのか……」

「凄いだろう?」


 船から見下ろした、俺が先程まで居たサンゴ礁の迷路は。

 まるで、アサガオの花のような全体像で。

 サンゴの色によって、七色の花を咲かせているかのよう。

 所々で魚の鱗が光を反射させ、光るイソギンチャクや海藻によって自然のイルミネーションまで施されている。

 ――なんでこの景色を一緒に見てるのが、彼女じゃなくて男ハーピーなんだろうな。

 彼女となら絶対にいい雰囲気になるやつなのに。


「今日一日船はここに留まるからな。明日の日の出の時はまた違った美しさだぞ?」

「……起きれるかな」

「無理にとは言わんがな」


 日の出、か。

 ちょっと頑張って起きてみるか。

 さて、となると早めに寝る必要があるわけで、早めに寝るためには寝る前にやる事を早めに終わらせる必要があるわけで。


「ご飯食べてきます」

「うむ。おおよそどこのレストランも窓際は空いてないだろうが、もし座れたら眺めだけで飯が食えるぞ」

「座れるように祈っておきますよ」


 景色だけで飯が食えるって、ちょっと表現面白いな。

 まぁ、それだけ目を見張る景色なのは間違いないけども。

 さてさて、本日のディナーはコース料理。

 マーメイドのコース料理……楽しみだなぁ。

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