マ〇オのウツボみたいなやつ
「戻りました」
「お帰り、と言っておこうか」
さっきまでノクティオさんが居た場所に戻ったら、まだちゃんと居ました。
マジでずっと景色見てるな。
「ノクティオさんって、このツアーへの参加って何回目です?」
「ん? どうだろうなぁ……丁度二桁くらいだと思うが」
「結構参加してるんですね」
「このツアーは我らハーピーでも水中で自由に動けるからな」
「あ、なるほど?」
「空は我らの領域だが、水中、海の中は違うからな。他の客でもハーピーが多かっただろう?」
「多かったですね」
「皆水中を自由に動き回りたいのさ」
「なるほど」
自分にでは出来ない事に憧れる的な感じかな?
俺としては海の中も空も自由に動き回りたいけど。
まぁ、それは俺が人間だからか。
「ハーピー族の中ではこのツアーは一番人気だ」
「へー」
種族によって人気なツアーとかあるんだね。
そりゃああるか。
……ドワーフにはきっとドワーフ族のツアーが人気なんだろうなぁ。
「ちなみにハーピー族のツアーって――」
そこまで聞いて、言葉が止まる。
これ、知らない方が参加した時に楽しめるよな?
言ってしまえばツアーの内容のネタバレなわけで。
この異世界のツアーに参加する上で、楽しみにしている部分でもあるわけで。
「おお! ハーピー族のツアーはな――」
「ストップ!」
ノクティオさんが言いかけた言葉を急いで制止。
「聞いた俺が言うのもあれなんですけど、参加した時用の楽しみに取っておきます」
「……そうか」
ちょっと悪い事しちゃったかも。
……でもまぁ、ある程度は予想出来ちゃうよなぁ。
蓋を開けてみるまでは分からないけれども。
「――ん? マズいな」
と、ノクティオさんが急に真剣な顔をしたかと思うと、
「戻るぞ」
俺の腕を掴んで船内へ。
しかも、
「外に居るやつは戻れ!!」
とか叫んでるし。
マジで何事?
「あの? 何が……?」
「アクロバットモレイが出た!」
??
何が出たって?
「すぐにガーディアンに連絡! 乗客に船内に戻るよう放送!」
と、スタッフさんに指示を飛ばすノクティオさん。
ノクティオさんの反応からするに、結構ヤバい魔物が出たって感じ?
じゃあノクティオさんも対応に向かうのかな。
「久しぶりに見たな、アクロバットモレイ……」
「ヤバい奴なんです?」
「動いてない時は危険は無いのだが、空腹で獲物を探している時に出くわすとヤバいやつだ」
「ほう」
「とにかく生命力が強くてな。身体を引きちぎった程度では動きを止めん」
「黒いGみたいなやつですね……」
生物として、身体を引きちぎられたら動きを止めろ。
いや、人間でも数秒とかなら動けるかもしれんが……。
「ノクティオさんも行くんですか?」
「? どこに?」
「その、アクロバットモレイとやらの討伐」
「いやいやいやいや、私はガーディアンではないぞ?」
「あ、違うんです?」
弟のノクティアさんがガーディアンだったから、ノクティオさんもてっきりガーディアンなのかと。
「私は戦闘はからっきしだ」
「そうなんですか」
「弟は戦闘が得意なようだがな」
まぁ、うん。
戦ってる様子を見る機会があって見させてもらったけど……。
全くと言っていいほど容赦は無かったな。
まぁ、魔物相手に容赦など要らん、って話なのかもしれんが。
「その代わり、私は弟よりも感知能力が高い」
「ほう?」
「先ほどのアクロバットモレイを感じ取れるのも、あの距離では私くらいのものだろう」
「ほうほう」
という話をしていたら。
『お客様にご連絡いたします。ただいま、活動状態のアクロバットモレイが確認されたため、船外、および、デッキへの移動を制限させていただいております。ガーディアンによる対応が終わるまでは、何卒、船内に留まるようお願い申し上げます』
船内にアナウンスが響き渡った。
「時間が掛かりそうだな」
「そうなんです?」
「アクロバットモレイだからな」
アクロバットモレイという魔物を先程の説明でしか知らないけど、かなり面倒なんだろうね。
う~ん……どうしようか。
このままご飯に行っちゃうかな。
「今の内に食事を済ませるか」
「お、同じ考えしてました」
「ふむ」
どうやらノクティオさんも俺と同じ考えだったようで。
二人で並んでダイニングへ。
「うわぁ……」
「まぁ、皆考えることは一緒か」
ただ、船外に出られなくなったから、と早めの食事をしようとするお客さんは俺たちだけではないらしく。
ダイニングは満席――どころか長蛇の列。
ビュッフェ会場の場所は……と。
「ミクリヤ」
「?」
「もし良ければ有料のレストランに行かんか?」
「有料……」
「奢るぞ?」
「行きます」
良かったのかホイホイついて行って。
いいんだよ、奢って貰えるんだから。
「この船で一押しのレストランがある」
と言って案内されたのは、
「……『マリアナ海溝』?」
そんな名前でいいのか? と思ってしまうレストランで。
「ここはチーズフォンデュが目玉のレストランなのだ」
とノクティオさん。
……メニューは?
「失礼します。二人分、ご用意しますね」
「頼む」
……あの――メニュー。
「火に触れないようにお気を付けください」
……いや、当たり前に水中で火が燃えてる。
あと、メニュー。
――? 鍋の中、水しか入って無くない? 気のせい?




