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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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珍しいよね……

 はぁ。

 マジで綺麗な海の中の景色を見ながら飲む酒が一番美味い。

 パイナップルとココナッツミルクで南国な気分にしてくれるピニャコラーダと、目の前に広がる景色の親和性が高い。

 現代日本だとスキューバダイビングとかしないと見られない景色が、今俺の目の前に広がってるわけですよ。

 しかもスキューバと違って必要な装備も無いから、マジで視界を遮るものが無いんよな。

 いつもの、当たり前の視界でこの綺麗な景色を堪能出来る。

 これって、かなり贅沢ですわよ?


「……? む、なんだ、私の下に居たのか」

「並ぶのもなんか違うなと思いまして」


 で、そんな景色を見ながら小さくバタ足をし、そのままの高度を維持していたら。

 どうやら飲み物を飲み干したらしいノクティアさんのお兄さんが降りてきて。

 そこで、俺が下に居た事に気が付いた様子。


「そういえば、何とお呼びすれば?」

「? ……あぁ、名前か。そういえば名乗っていなかったな」


 名前を聞いたら、一瞬何のこと? と首を傾げられ、納得がいったようで、


「ノクティオと申す。よく弟と間違われるのだ」

「後ろ姿とかそっくりですもん。俺、御厨です」

「ミクリヤ、うむ。先日は弟が世話になった」

「いえいえ」


 ……ぶっちゃけた話よ?

 カジノのチップを譲った事よりも、俺にエイプリルフールを飲ませたことをこのお兄さんに話していてほしかったな。

 あの時はすまなかった、くらい言ってほしかった、など。


「売店で購入した物は美味しかったかね?」

「生ハム、美味しかったです」

「良かった良かった」


 それだけ確認して降りていくノクティオさん。

 俺も追いかけようかな。

 ピニャコラーダを飲み干しまして。

 身体の上下を入れ替えてバタ足全開。

 いやぁ、泳ごうと思えば泳げて、歩こうと思えば歩ける水の中、マジでいい。

 移動が便利すぎる。

 無重力とも違うんよな。

 あれは推進力無いと動けないから。

 その点水中はバタ足だけで移動出来るし、歩くより早いし、体に負担少ないし。

 もしかして最高か?


「? 私に合わせなくていいのだぞ?」

「俺も飲み物飲み干しちゃって」

「ホーッホ。なるほどな」


 今気づいたんだけど、ノクティオさんとノクティアさん、笑い方が微妙に違う?

 気のせいじゃないよね?


「『海の輝き』を」

「それってアルコール度数高いです?」

「? いや?」

「じゃあ同じのを」


 やっぱり、異世界のカクテル名ってなんか惹かれるんだよな。

 アルコール度数高かったら考えたけど、低いっぽいし俺も飲もう。


「ふむ」

「?」


 なんかノクティオさんが意味深に頷いた気がするけど、きっと気のせいだよね?

 ――バーテンダーをやってるから、アルコールに慣れ過ぎて普通に高いけど自覚が無いとかじゃないよね?


「一応言っておくがノンアルコールだぞ?」

「……カクテルで?」

「カクテルで。別に珍しくも無かろう」


 いやまぁ、ノンアルカクテルはまぁ分かるんですけど。

 意外。

 ノクティオさん、ノンアルコール飲んでたんだ。


「そもそも私は、弟と違って酒が飲めん」

「……えっ?」

「いやまぁ、バーテンダーとして見たら珍しいかもしれんが」

「……居るとは聞いてましたけど、実際に見たのは初めてですね」


 ……話には聞いたことあるよ? お酒が飲めないバーテンダーさん。

 何だっけ、日本のカクテル大賞みたいなので受賞した方がそうだった、みたいな記事を読んだことがあるような……。

 でもまぁ、珍しくは当然あるわけで。

 実在したんだ、って印象が強い。


「海の輝きです」

「ありがとう」

「……どんな飲み物?」


 そんな話をしてたら出てきた飲み物。

 それはこう……何というか……。


「液体真珠?」


 パールが液体化したみたいな、ラメが入ってて、常に反射してるみたいな飲み物。

 お世辞にも美味しそうには見えないのだが……。


「この飲み物は海の絶景を見ながら飲むに限る。行くぞ」

「ちょっ!?」


 俺の手を引き、浮上するノクティオさん。

 ちょっ! 零れる!! 零れる!!


「うむうむ」


 ……セーフ。

 全く、急に引っ張るんだから。


「ホー。美味いなぁ」


 既にノクティオさんは飲み物飲んで一息ついてるし。

 どれどれ?


「……おー?」


 真珠色の飲み物とは思えない味わいだな。

 まずそもそもとして、ぶどう味って感じ。

 パール感ゼロ。

 ブドウとマスカットを合わせたジュースのような味わいで、後味にほんのりレモンの酸味。

 ……あ、口に含んだ最初の瞬間だけ塩っけを感じる。

 その後でぶどうの味が広がるんだ。なるほどな。


「最初の塩味で海に入る様子を。感じる複数の果実たちで海の中の景色を。後味の酸味で浮上する時の水面に差し込む太陽の光を表現している」

「そう言われると納得しますけど……」


 問題はなぜあの見た目なのかって所で。

 何と何を混ぜたらああなるんだ?

 ……いやまぁ、いいか。そういうの。

 現代でも、アルコール度数が高い酒を混ぜたら何故か紅茶味になったカクテルとか存在してるし。


「私の作り出したレシピだ。よく出来てる」

「へー。……うん?」

「どうした?」

「このレシピ考えたの……ノクティオさんなんですか?」

「そうだが?」

「マジすか?」

「考えてもみたまえ。ノンアルコールのカクテルのレシピなぞ考案する方が稀だぞ?」

「……確かに」

「だから私が作った。私が飲めるカクテルを増やすために」

「……いやまぁ、そりゃあ増えるでしょうけれども……」


 なんというか……いや、やめとこ。

 ――てことはだよ?

 さっきのカクテルを提供してくれたスタッフさん、かなり緊張したんじゃない?

 レシピ考案者からこのカクテルを、って言われたわけでしょ?

 ……俺ならやりたくないな。

 あ、セルフサービスで……って言いたくなる。

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