?「スーパーラッキー」
……美味い。
いや、美味いんだけど何というか……。
生ハムって言ってるけど、白身魚の刺身とかに近いな。
もっちりとした食感に、しっかりとした弾力。
噛むと塩味とじんわりとしたうま味が広がって……。
「フグに近いかも……?」
前に食べたフグの記憶が蘇る。
あれより明確に味は濃いけれども……。
というか、深海豚なのに味は河豚とはこれいかに。
……異世界人に説明しても分からないんだろうな、漢字だし。
「じゃあワインと合わせましてっと」
……香り、嗅げないじゃん。
一応鼻を近付けては見るけれど……。
うむ、無臭。
というか、香りは全部水に溶けてるんだよな、多分。
というわけでグラス付近の水を口に含んでみると……。
感じたよ、香りを。
しっかり熟した果実の香り。
マンゴーとか、それ系の結構濃く甘い香りだね。
「匂いが溶けた部分を口に含むと感じるのか……」
何せ水中生活エアプなもんでね。
その辺も手探りなわけですよ。
という事でワインをグビリ。
「……香り程甘くは無いし、結構渋味はある。でも、深海豚の生ハムの脂の甘さとワインの渋味が合わさって普通に美味しい」
白身魚っぽかったから赤ワインには合わないかもと思ったけど、合うね、ちゃんと。
まぁ、脂のコクとかはガッツリ肉のそれだからそこと合うわけですね。
『ご乗船中のお客様にご案内いたします。無事に海流に乗る事が出来ましたので、客室から出歩いて貰って構いません。また、デッキにも出ることは可能ですが、船から離れすぎますと海流に攫われる可能性がございます。船から離れすぎませんよう、ご注意ください』
お、どうやら客室待機が解除されたらしい。
デッキとかにも出られるらしいし、海の中の景色でも堪能しに行きましょうかしら。
『また――』
ん? まだ放送が続いてるな?
『現在、私は鮫型の魔物に襲われている最中ですので、ガーディアンの方は至急、船内放送室にお願いします。プリーズヘルプミー』
――悠長に放送してる場合ではないのでは?
というか、鮫型の魔物入り込んでますがな。
……これ、出歩いて大丈夫なやつ?
『お客様にご連絡いたします』
……さっきの放送で聞こえてきた声とは別人だけど大丈夫だろうか?
『船内に侵入した魔物は討伐いたしましたので、安心してツアーをお楽しみください』
出歩くのは大丈夫らしい。
いや、あの……さっきまで放送していた方は?
『それでは、失礼します』
――うん、考えない事にしよう。
*
メインデッキに出てきたけど、めっちゃ景色綺麗。
海面から降り注ぐ陽光を浴びて、あるでキラキラと宝石のように輝くサンゴ礁。
色とりどりの魚たちが船のすぐそばを泳ぎ回り、鱗が反射して時折輝く。
そして、まるでいい獲物を見つけたと言わんばかりに、白い牙を見せつけながら大口を開けて船に突っ込んでくる鮫。
――ガーディアンさーん!! 出番!! 出番ですよー!!
「こ~ら。おいたはメッ! ですよ」
……えぇっと。
鮫がものすごい勢いで後退したと思ったら、どうやら尻尾を掴んでた人が居るようで。
その人は、尻尾を掴んだまま鮫を振り回し……。
海底に、勢いを殺すことなくたたきつける。
海底の砂が舞い、近くに居た魚たちが一瞬で散っていく中。
脳震盪を起こしてぷかーっと水面に浮かんでいく鮫を相手に、
「次はありませんからね!!」
と説教をしているマーメイドさん。
多分聞こえてないと思いますけど……。
「じゃあね~」
で、脅威は去ったと判断したのか、俺と同じくメインデッキで一部始終を見ていた人たちに手を振ると、どこかへと泳いで行ってしまう。
――今のマーメイドさん、どこかで……。
――あ、
「パチ屋でご年配の方がよく打ってる台に出てくるキャラそっくりだったな」
太平洋物語だったか?
でもあの台、水着の女性キャラが出てくるより上半身裸の男キャラが出てくる方が嬉しいんだよな。
絶対に当たるから。
……というか、
「泳いでる鮫捕まえて海底に叩き付けるって、どんな身体能力だよ」
明らかに人間じゃ不可能な動きだよね。
ましてや水中なのに。
――あ、浮かんでた鮫が目を覚ました。
また船に……向かって来ようとした瞬間に逃げて行ったな。
……うん、さっきのお姉さんがめっちゃ目を光らせてるわ。
比喩じゃなく物理的に。
どうやってるの、それ。
「何か飲も」
まぁ、脅威は去ったっぽいので、メインデッキで何か飲みましょ。
さっき部屋から出る前に確認したけど、俺のプランにはアルコール類すらも含まれた飲み放題が組み込まれてるらしいですわよ?
ありがたいね、って事で。
「ピニャコラーダ一つ」
「かしこまりました」
こういうトロピカルな景色に合うようなカクテルを飲みましょ。
南国をイメージ出来るカクテル、ピニャコラーダですわよ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
グラスを受け取り、軽くバタ足をして浮かびまして。
船から離れすぎなければ、船と同じ慣性が働くみたいだし。
他の人よりも少しだけ高い位置で景色を堪能しながらお酒を飲みましょ。
「……うん?」
まぁ、見上げてみたら、俺よりももう少し高い位置に、ノクティアさんのお兄さんが居たんですけどね。




