第4話~決意~
「ただいま~。」
フォルカは家のドアを開け、クラスと一緒に中に入った。
そこには、晩御飯を作っている母がいた。
「ずいぶん遅かったじゃない、何かあったの?」
「クラスとの話が長引いただけだよ。」
母は、フォルカの後ろにいる緑髪の少女を見た。
クラスはこちらに一礼していた。
「・・・どうしたの?」
「・・・、遅くなってしまい申し訳ありません。」
どうやら彼女はこちらに謝っているらしい。
「いいのよ別に、フォルカに新しいお友達が出来たんですもの。」
「友達・・・ですか?」
クラスは首をかしげた。
「ええ、・・・違った?」
その時、フォルカは視線を感じた。
感じたほうを見てみると、・・・クラスがこちらを見ていた。
「・・・クラス?」
「・・・私はあなたの友達ですか、フォルカ?」
「えっ。」
彼女の口から出たのは、予想外の言葉だった。
「友達とは、『長い時間をともに過ごすことによって初めてなれるもの』だと私の脳には記録されています。私とフォルカは出会ってまだ一日ほどしかたっていません・・・それでも友達になることは出来るのですか?友達とは・・・何なのですか?教えてくださいフォルカ。」
「・・・・・・。」
クラスの中に渦巻いていた疑問。
簡単なようで、とても難しい質問。
この質問の答えは、無数に存在する。
しかし・・・その中にクラスを納得させる答えがあるとは限らない。
しかもフォルカは、答えを一つも持ち合わせていないのだ。
フォルカの村には子供が10人もいなかった。
その中でもフォルカは体力がないので、いつも周りに置いていかれていた。
なので、いつもみんなが遊んでいる隣で読書をしていた。
兄・フィニカは、どちらかというと運動のほうが得意だった。
なのに勉強も子供の中で一番出来ていた。
・・・憧れた。
何でも出来るフィニカに・・・。
「・・・カ、・・フォルカ。」
「・・・?」
前を見るとクラスがいた。
(そうだ、彼女に聞かれたんだっけ・・。友達になれるのか・・・そもそも友達とは何かを。)
・・・逃げ出したくなった。
彼女と過去の自分が重なって見えたから・・・。
その時、
「クラスッ!!どこ行ってたのよぉ~、心配したのよ~!!!」
エリアルの馬鹿でかい声が聞こえてきた。
「・・エリアル、もう起きてもいいのですか?」
「うんっ、むしろ暴れたいくらい!!」
エリアルがガッツポーズをした。
「そうですか・・でも無理だけはしないでくださいね・・。」
「わかってるって!」
「・・・今回で47回目ですよ、そう言って無理をしたのは・・・。」
「うっ・・。」
正直エリアルに助けられた。
クラスの気がエリアルに向いてくれたから・・。
その時、母の声が聞こえた。
「みんな~、ごはんよぉ~!」
「はぁ~い!」
フォルカは真っ先に母のいる部屋へ向かった。
今は少しでも、クラスから離れたかったから・・・。
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「おやすみなさぁ~い、行こっクラス。」
「はい・・・ではお二人とも、おやすみなさい。」
そういって二人は部屋をでていった。
「ふふっ、エリアルちゃんったらあれだけ寝てたのにまた寝るのね。」
「本当っ。」
フォルカは母と一緒にクスリと笑った。
「じゃあ・・僕も寝るよ、おやすみ。」
「・・・フォルカ。」
突然母がフォルカを呼び止めた。
先ほどとは違う、低めの声で・・・。
「・・・何?」
「・・・クラスちゃんから逃げちゃだめよ。」
「!!」
母の一言にびっくりした。
どうしてそのことを・・・。
「さっきの会話・・・聞こえてたの。・・・ごめんなさいね、私があんなこと言っちゃったから・・・。」
「・・・母さんのせいじゃないよ。」
「でもねフォルカ・・・クラスちゃんはあなたに聞いたの、自分は友達なのかを・・友達とは何かを・・・。だからあなたが答えるの、あなたなりに。」
「・・・・・・。」
(そんなこと言われても・・・、わかんないよ。)
フォルカはおそらく・・・初めて母のことを憎んだ。
「・・・母さんは知ってるでしょ?僕に友達がいないこと・・。僕に答えられるわけないんだよ・・・。」
---パシンッ!
乾いた音が響き、フォルカの頬に痛みが走った。
「なっ・・・。」
「友達が出来ないのはあなたが自分から踏みよっていないからでしょう!」
「違うっ!!」
「違わない、あなたはただ拒絶されることを恐れていたのよっ・・踏みよる前からね。・・・フォルカ、答えられないことなんてないのよ。決め付けないで・・・逃げないで・・・。」
母が優しく抱きしめてきた。
声が震えていた。
「母・・・さん?」
「わからないなら・・・探せばいいのよ。世界は広いのよ?あなたとクラスちゃんの納得できる答えはきっと見つかるわ。」
「・・・母さん、それって・・・。」
すっと体が離れる。
母は、フォルカの肩に手を乗せ・・・
「クラスちゃんとエリアルちゃんについていきなさい。きっと答えが見つかるわ。」
「でも・・・僕、体力ないし・・・。」
「体力なんて自然と付くわよ、大丈夫・・・あなたなら。」
「・・・、兄さんの弟だから?」
フォルカは母の眼を見る。
母は、ゆっくりと首を横に振った。
「違うわ・・・、フォルカだからよ。」
「僕・・・だから?」
「確かにあなたにはフィニカのようになってほしいと思ったことはあるわ・・・。だけど、同じ人なんていないの・・・いくら兄弟でもフォルカとフィニカは違うのよ。」
フォルカの目から涙がこぼれた。
理由はわからなかったけれど、止まらないのだ。
「もう一度言うわよフォルカ・・・クラスちゃんから逃げちゃだめよ。」
涙を手で拭い、母のほうをまっすぐ見る。
そして、
「うんっ・・・いってきます。」
と答えた。
「いってらっしゃい、フォルカ。」
母は、息子の決意を受け止めた。
小説を読んでいただきありがとうございました。
長いセリフがたくさんありましたので、読みずらかったらすいません。