03.伝説の大賢者をコンビニ飯で骨抜きにする
僕は杖の勇者ヒキニートさんの下へやってきた。
ヒキニートさん、僕のイメージだと小汚いおっさんだと思っていた。
でも、目の前には金髪幼女エルフ!
ザ・ファンタジーって感じ! うぉお!
「かっけー!」
「か、かっこいい……? そこは、君可愛いね~、とかじゃない?」
「だってエルフですよ、かっこいいじゃないですかー!」
「ああ、そうかい……」
一方で、オタクさんが冷静に言う。
「杖の勇者殿」
「セーバーでいいよ」
「では……セーバー殿。おぬしは、何者でござるか?」
オタクさんが真面目トーンで言う。
その片手には聖武具の弓が握られてる。
オタクさん、僕と同じで、エルフきたこれー! とか叫ばないんだなぁ。
(※↑オタクは召喚してから今日まで苦労したので、精神年齢が上がっています)
「そう警戒しないでよ、オタク君。ぼくはいちおう君らの味方だよ。地球から連れてこられた、地球人っていう点では君らと同じ境遇だし」
「証拠は、あるのでござるか?」
「証拠ねえ……どう言ったら信じてもらえるかな……」
ぽりぽり、とオタクさんが頭をかく。
うーん……確かにこのヒキニートさんが、僕らの仲間っていう保証ないよね。
ん?
「ヒキニートさんって、転生者って言ってましたよね?」
「そうだね。地球で死んで、目覚めたらこっちの世界に、この美少女エルフボディで生まれた」
「じゃあ……もしかして……」
僕はカバンを、がばっ! と開ける。
「ひいぃ! 経験値もってかれるぅ!」
ヒキニートさんが後ろでんぐり返しする。
なに怖がってるんだろう。
(※↑セーバーは啓介が魔族の首置いてけしていたところをバッチリ見てます)
「攻撃しないですよ。ただ……会ってもらいたい人がいるだけです」
「会ってもらいたい……?」
カバンから、僕は【彼女】を取り出す。
どんっ! と僕の目前に、大きな光る箱が出現。
箱の側面には、一人の、女性が上半身を出した状態で封印されてる。
「アイちゃん……」
ヒキニートさんが、つぶやく。
アイ……つまり、神眼の大勇者ミサカ・アイさんのことだ。
「ふぁ~~~~~…………」
ミサカさんが大あくびをする。
「はえ……? え、えー!? セバっちゃん!? セバっちゃんだよねえ!? わー! なつかしぃ~~~~~~~~~~!」
ミサカさんが箱から体を乗り出そうとする。
だが……。
「あわわ、呪いで箱からでれないんだった……てへへ♡」
「……知ってるよ。アイちゃん。封印されてるんでしょ?」
「およ? なんでセバっちゃん、私が封印されてること知ってるの?」
「【扉の大賢者】である、ぼくの力を忘れたのかい、アイちゃん?」
「あー! そうだったねえ。扉の大賢者! なっつい単語ぉ~!」
きゃっきゃ、と二人が楽しそうに会話している。
これは……驚いた。
『大勇者ミサカよ』
僕の頭に乗ってる、子犬姿スペさんが、ミサカさんに尋ねる。
『おまえはそのエルフと、どういう関係なのじゃ?』
『元仲間だよ』
『元……仲間、じゃと!? しかし……我と戦ったとき、おぬしは一人だったはずでは?』
『うん。大魔王の討伐に当たる前に、私の【パーティ解散しちゃったんだ】』
『なんと……大勇者ミサカに仲間がおったのか……』
知らなかった……!
じゃあ、ヒキニートさんは、ミサカさん率いる勇者パーティのメンバーだった、ってこと!?
あわわ……。
「なんかのろいが結構解けてない? 前はミイラみたいだったのに、今はおばあちゃんじゃん、見た目」
『えへへ♡ けーすけくんがね、こないだ妖精郷で聖武具のレベルを上げて、呪いを1つ解いてくれたんだぁ~♡』
反転魔族の経験値と、色欲の魔王ルクスリアさんと契約したことで、勇魔の鞄がレベルアップ。
結果、ミサカさんを縛る久遠封縛の呪いを、1つ、解くことができたのである。
「外見、おばあちゃんにまでなってるってことは……のろいが相当弱まってるってことだ。もうすぐ……そこからでれるよ」
「『ほんとぉ!?』」
僕とミサカさんの声が、重なる!
だってそうじゃん! ミサカさんが、自由になるんだもん!
「やったね、ミサカさん!」
『うん! ありがとう! けーすけくんのおかげだよ! いつも……頑張ってくれてありがとう!』
「えへへっ。どういたしましてっ!」
ミサカさんが喜んでくれて、よかったぁ!
よーし!
「もっと頑張って、経験値い~~~~~~~っぱい、取るぞぉ!」
『わー! 素敵! かっこいい! がんばってぇ~!』
応援してくれるミサカさんをよそに……。
「いや普通に怖いよ……いっぱい首とるとか……」
「まあまあ、セーバー殿。ツッコミは無粋でござるよ」
「それもそっか……」
ミサカさんはその後、疲れてしまったのか、眠りについてしまった。
まだ呪いが弱まっているとはいえ、まだ、完全に解除できたわけじゃない。
ミサカさんはまだ自由に、外で生を謳歌できないのだ。
……この世界には、ミサカさんの友達が、生きている。
きっとミサカさんはヒキ……セーバーさんともっともっとおしゃべりしたいはずだ。
……もっとたくさん、経験値、集めないとね!
で、だ。
「これでぼくが敵じゃないって、信じてくれた? 啓介君、オタク君」
美少女エルフ、セーバーさんが僕らに尋ねてくる。
「はい、ヘルメス・セーバーさん」
「う、うん? どうしたんだい、啓介君」
「なんですか、ヘルメス・セーバーさん?」
「いや……君もっと、ぼくに対して、雑な扱いしてなかった? ヒキニートとか普通に失礼なこと言ってきてたじゃん?」
ヒキニートって失礼なことだろうか。
事実なのに。
まあ、それはさておき、だ。
「セーバーさんは大勇者のパーティメンバーだったんですよね? だから、敬意を払ってるんです」
「そ、そう……でも、なんか気持ち悪いから、いつも通りの対応でいいよ」
「あ、本当です? じゃあそうしますね。ヒキニートさん」
「う、うん……切り替え早いね……これがZ世代ってやつか……」
さて、と。
ヒキニートさんは今まで通りの接し方でいいって言ってきた。
でも、とはいえ、僕はこの人に、結構失礼なことをしてしまったような気がする。
ミサカさんの友達でもあるこの人にたいして、だ。
お詫びしたいな。うん、そうしよう。
「ヒキニートさん。お詫びの宴会を開きたいんですが、どうでしょう」
「え、お詫び? いや別に……いや待って、宴会? 宴会ってことは、まさか!」
「はい。ヒキニートさんが大好きな、コンビニ飯宴会を開こうと思ってます!」
このヒキニートさんは、コンビニで手軽に買えるような、ジャンクフードが大好きらしいのだ。
「ぜひ! お願い!」
「わかりました。じゃあ、すぐ準備します!」
ということで、コンビニ飯を地球から取り寄せて、ぷち宴会を開くことになった。
オタクさんは「拙者も盛り付けとか手伝うでござるよ~」ってナチュラルにイケメンムーブかましていた。うーん、イケメン。
ややあって。
「うひょぉお~~~~~~~~! コンビニ飯がこんなにぃい!」
床の上には、取り寄せた品が広げられてる。
ポテチ、焼き鳥、カップ麺、コンビニスィーツ等々。
紙皿や紙コップに小分けされたそれらを見て、ヒキニートさんは目を輝かせる。
「け、啓介君! た、食べてもいいのかいっ?」
「どうぞ、好きなだけ」
「ありがとぉお~~~~~~~! いただきまぁああああす!」
ヒキニートさんは近くに置いてあった、コンビニ焼き鳥を手に取る。
はぐっ!
もぐもぐ!
「くぅう~~~~~~! 最高! この柔らかいもも肉と、甘いたれが最高ぅ!」
続いて片手でポテチをわしづかみにする。
そして逆の手で、コーラの500mlボトルを手にする。
「右手でコーラを飲みながら、左手でポテチを……食べる!」
ごくごく!
ぱりっ!
「そしてまたコーラで流し込む!」
ごくごくごくごく!
「くぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~! 生きててよかったぁああああああああああああ!」
ヒキニートさん、号泣していた。
冗談じゃなく、マジ泣きしてた。
ええ……何泣いてるんだろうこの人……ちょっと引くなぁ。
そこにすかさず、オタクさんがこう言う。
「きっとセーバー殿は、我らが想像できない、辛いことを経験してきたのでござろう。我ら以上に、地球に帰りたい欲求は強い。だから……コンビニ商品一つで、あんなに喜んでしまうのでござるよ」
なるほど、だから泣いてるのか……!
オタクさんはすごいなぁ。他人の心が読めるようだ。すごい……。
『むぅうううう。ケースケよぉ……我も、我もコンビニ宴したい!』
スぺさんが文句言いだした。
お預け食らってるんだもんね。
「これはヒキニートさんの宴だから」
『むぬぅううううううう』
すると……。
「セーバー殿、我らもご相伴に上がってもよいでござろうか?」
「もちろん! あ、ごめんぼくだけが食べてて。ささ、皆も食べて食べて~」
「お心遣い、感謝いたしますでござる」
オタクさんが許可を取ってくれた。
なんと優しい。
「さ、スぺ殿」
『やるなオタクぅ! スぺPを特別進呈じゃ!』
スぺさん、僕以外にスぺさんポイントを与えるなんて!
やっぱりオタクさんはすごいや!
僕らも一緒に、ヒキニートさんとコンビニ飯を食べる。
「うぉおお! 啓介殿! コンビニスイーツ最高でござるよ! うう、モンブランが美味いぃいい!」
「甘いものを食べるとしょっぱいものが、しょっぱいものを食べると甘いものが、食べたくなる! うぉお! おいしくて食べるのが止まらないぃ!」
『うまいのじゃぁ! うますぎて、馬になっちゃいそうなのじゃぁ!』
みんな僕の取り寄せたコンビニ飯を絶賛してる。
あ、そうだ。
ヘルメスさん(メイドさん)も参加してる。そして……。
『んほぉおおおおおおおおおおお! んまぁいいいいいいいいいいい!』
……下品な声を上げるひとが、ひとり。
いや人じゃなくて、ドラゴンか。
巨大な黒い竜が、コーラのボトルを咥えながら、中身を飲む。
『しゅごぉいいいいいい! しゅわしゅわしゅごぉい! こんなの初めてぇえええええ!』
……暗黒竜ジャガーノートさんも、地球の美味しいご飯の前に、骨抜きになっているのだった。
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