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【書籍化】カバンの勇者の異世界のんびり旅 ~実は「カバン」は何でも吸収できるし、日本から何でも取り寄せができるチート武器でした~  作者: 茨木野
第3部

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02.新技で空間を食い破る



 僕は大親友オタクさんと一緒に、ヒキニートさんに会いに来ている。

 でもヒキニートさんってば、この立派な塔の頂上に、住んでなかったのだっ。


「え、ヒキニートさん嘘ついたの? 経験値にしちゃうよ?」

『君のそれマジで冗談に聞こえないからっ!』


 ヘルメスさん(の体に憑依してる、セーバーさん)が、慌てて言う。


『塔はフェイク。ポータルがあるんだよ』

「ぽー……?」

『ま、実際に見た方が早いね。ジャガーくん、彼らを乗せて頂上へ連れてきておくれ』


 僕らは暗黒竜ジャガーさんの背に乗って、塔の頂上へ。

 お盆のようになっており、何もない。


「何もないじゃないですか?」

「む? ケースケ殿、アレをみるでござるよ! なにやら中央が、光っているでござる!」


 オタクさんの言うとおり、中央が少し光っていた。

 

『ここが転移ポータルになってるんだ。この光の上に乗ると、ぼくのいる【異空間】へと転移するってわけ』

「異空間……なんだ、そういうことだったんですね。じゃあ早く言ってくださいよ」


 一回上って降りてきちゃったじゃないか、ぷんぷん。


『説明する前に君が勝手に行動したんじゃないか……』

『なんじゃ、ケースケを非難するのか? ん? 我がかみ殺しちゃうぞ?』


 子犬スペさんが、可愛いお口をくわっ、と開ける。


『ひいぃ! お助けえええ!』


 ヘルメスさんが僕の後ろに隠れる。


「え、何怖がってるんですか? スペさんこんなに可愛いのに?」

『君の愛犬、それフェンリルだから! 伝説の獣で、【ミサカのやつ】が封印したやばいやつだかっら!』


 …………は?


「え、何? ミサカのやつって……え? なに、ミサカさんのこと、呼び捨てにしてるの……? 経験値にするよ?」

『あばばば……! お、オタク君! こいつら止めておくれよ!』


 オタクさんが「けんかはよくないでござるよ。勇者同士仲良くするでござるよ~」と言ったので、仕方なく仲良くしてやることにした。

 オタクさんに感謝してほしいねっ。


『ふぅ……助かった……。で、大勇者ミサカを呼び捨てにした理由、だっけ? まあ……来たら説明するよ』

「なんで今しないの?」


『ちょっと説明がややこしいんだよ……。実物見た方が説明が早いんだ』

「じゃあ出てきてくださいよ」


『だから! 一身上の都合で出てこれないんだってば!』


 ふーん……。

 まあいいか。


「では、いくでござるよ」


 ぴょんっ、とオタクさんがポータルに入る。

 シュンッ……!


「わ! オタクさんが消えちゃった……! だ、大丈夫ですかっ!?」

『大丈夫だよ。無事こっちに転移してきたから。ほら、続いて』


 僕が入ろうとした……そのときだ。


 しーん…………。


「あれ? 転移しないぞ……?」


 ポータルに乗ってるのに、一向に、転移する気配がない。


『あ~………………やっぱり?』


 え、なにやっぱりって?

 ヘルメスさんが頭をかきながら言う。


『そのポータル、入場制限がかかってるの』

「入場制限?」

『そう。魔のモノは、転移されないんだ』

「魔の……モノ?」


 つまり……。


「魔物《ジャガーさん》が、入れないってこと?」

『そっす。だから、セーバーさんにお届けものあるときは、ここからポータルにモノを投げ入れるっす』


 ジャガーさんは、ヘルメス(セーバー)さんに、地球の商品を届けているのだ。

 なるほど、中に入れないから、モノだけ入れてるんだ……。


 って、あれぇ?


「どうして、僕は入れないんですか? 僕人間ですよ? 魔物じゃない」

『……それ冗談で言ってる? ああごめん! 馬鹿にしてないから! その物騒なカバンの口、閉じてよ!』


 オタクさんが見てないから、経験値にしちゃってもいいかなってちょっと思っちゃったよ。

『啓介君はほら、勇者《にんげん》じゃなくて、勇魔だから』

『なるほど……。ケースケは勇と魔の力を持つ。魔の因子が体にあるから、ポータルはケースケの入場を禁じるのじゃな』


『スペルヴィアの言うとおりだよ。啓介君』


 うーん……なるほど?

 勇者じゃなくて、勇魔だから、入れないと……。


「え、じゃあ入れるように早くしてくださいよ」

『うーん……難しいんだよねえ』


「そうなんです?」

『うん。このポータルは、【魔物すべての侵入を禁じる】っていう縛りのもとに成り立っているんだ。そこに例外を作っちゃうと、セキュリティの強度が下がる』


 言ってる意味がさっぱりわからないよ。


『ケースケがカバンを外したら、どうじゃ?』

『あ、なるほど。魔の力が付与されてる、勇魔の鞄をはずせば、勇者《ケースケ》くん【だけ】は入れるかもね』


 僕だけ……かぁ。

 つまりスペさんは入れないってことでしょ?


「やだ」

『どうしてじゃ?』

「だって、スペさん置いてけないもん。友達をひとりぼっちになんてさせられない」

『ケースケぇ! くぅうう! 我のこと、そんなに大事に思ってくれてるなんてぇ! うぉん! うぉん!』


 涙を流すスペさんをよそに、『自分もいるんすけどね一応……』とジャガーさんがぼそっと言う。

 あ、忘れてた。


「だから、スペさんを置いてはいけません」

『え~……じゃあどうするのさ? 魔のモノじゃ、ポータルは使えないんだよ?』


 うーん……。


「つまり、ポータルを使わずに、異空間にいけばいいんですよね?」

『まあそうだけど……転移魔法、使えるの?』

「いえ、使えないですけど」

『じゃあ無理でしょ』


 するとスペさんが、にやりと笑う。


『確かに、ケースケ一人じゃ……無理だな。じゃが! 我ら高慢なる勇魔コンビなら、可能じゃ!』

『何言ってるの……?』


 コンビ……なるほど!


「そうか! スペさん、高慢なる勇魔の鞄(プライド・バッグ)を使うんだね!」

『そういうことじゃ! とうっ!』


 スペさんが僕のカバンの上に乗っかる。


「『高慢なる勇魔の鞄(プライド・バッグ)、発動!』」


 瞬間、聖武具のカバンが、黒く染まっていく。

 高慢の魔王スペルヴィアと、勇魔の鞄が合体した姿……。


『これが、複合型聖武具……。で、どうするの……? もしかして、蠅王宝箱《ベルゼビュート》でも使うわけ?』


 蠅王宝箱《ベルゼビュート》。

 生物以外のすべてを吸い込む、最強技だ。


「ううん。蠅王宝箱《ベルゼビュート》じゃないよ。新しい力を、使うんだ!」

『新しい力……?』


「うん。高慢なる勇魔の鞄(プライド・バッグ)……奥義! 狼王の暴食(グラトニー・プライド)!」

『狼王の暴食(グラトニー・プライド)……?』


 聖武具が進化したことで、僕は新しいスキルを獲得した。

 それが……この、狼王の暴食(グラトニー・プライド)。


 僕の持つカバンは、現在、側面にいぬ耳と、かわいらしい犬の顔が描かれている。

 

 スキルが発動すると同時に……。

 カバンが巨大化。


『カバンがでっかくなった! 黒い犬……黒獣とでもいうのか!?』


 犬の画が、凶暴なモノへと変わる。

 そして……


 ぐわっ……!


『カバンに描かれてる口が、大きく開かれた!? まるで竜の顎のようだ!』

「食っちゃえ! スペさんカバン!」

『食う……? いったい何を……?』


 スペさんがカバンが、ポータルの上のあたりの空間を……。


 ガブリッ……!


『何もないところで口を閉じた……これは……いったい……い、いぃいいいい!?』


 スペさんが、食べた部分に、穴があいていた!

 向こうに、オタクさんの驚いた顔があった。


「け、ケースケ殿……?」

「あ、オタクさんやっほー!」


 びっくりしてるオタクさんをよそに……。

 ヘルメス(セーバー)さんもまた、驚愕の表情となる。


『ま、まさか……! 空間を食ったのかい!?』

『その通りじゃ!』


 ぽんっ、とスペさんがカバンから分離し、僕の頭の上に乗っかる。


『高慢なる勇魔の鞄(プライド・バッグ)、限定スキル、狼王の暴食(グラトニー・プライド)。発動すると、あのカバンはすべてを食らう、黒い獣となるのじゃ!』


『すべて……? って、すべて? 生物も?』

『そうじゃ! 生物、非生物の縛りもなく、全部じゃ!』


『なんだってぇええええええええええ!?』


 と、驚くヘルメス(セーバー)さん。

 さて、と。


「じゃ、おじゃましまーっす。わ、なんだここ……洋館のなかみたーい」


 カーペットにシャンデリアと、洋館みたいな内装。

 でも周囲には、本とか、モニターとかがあちこちにあった。


「で、ヒキニートさんは……?」

「あれ……でござろう、多分……」


 多分?

 オタクさんが指さす先には……。

 

 なんか……なんだ?

 誰かがひっくりかえって、倒れてる。


 お尻と、Vに広げた足だけが、あった。


「え? なにこれ……? けつだけ星人?」

「ぶりぶり~って、何やらせるんだよ!」


 がばっ!

 ひっくり返っていた人が、立ち上がる。

 って、あれ?


 そこにいたのは……。

 金髪の、きれいな……。


「お、女の子……? 耳もとがってるし……エルフ……?」


 年齢は、10歳くらい。つまり結構小柄だ。

 でも、髪の毛は床につくくらい長い。


 側頭部からは、にょきっと伸びた長い耳。

 眠たげな翡翠の瞳……。


「んもぉ~……びっくりしすぎて、後ろでんぐり返ししちゃったじゃんか……!」

「! その声……ヒキニートさん!?」


 ヘルメスさんから聞こえてきた声と、同じ声をしていた!

 じゃあ、この金髪幼女エルフが……!


「杖の勇者ヘルメス・洗馬《せば》だよ」

「え、ええ~!? ヒキニートが、この美少女エルフぅ!?」

「ほんっと失礼だね君……」


 あわわ、まさかこんなきれいな人だったとはぁ……。

 一方、オタクさんが首をかしげる。


「ヘルメス殿。おぬしは確か、日本人ではなかったでござるか?」

「あ、そうだ! ヘルメス・洗馬《せば》、日本人だって……でも、髪の毛は金髪だし、エルフだし……」


 するとヘルメス・洗馬さんは頭をかきながら言う。


「ああ、ぼくは確かに君らと同じ日本人だったよ」

「「だった……?」」


 彼……ううん、彼女は言う。


「ぼくは、転生者さ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 転生なら俺らもワンチャンでエルフに と思ったけど、たぶんゴブリンになるわ
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