23.反転魔族、くる!
《啓介視点》
僕は経験値を稼ぐため、妖精郷へとやってきている。
そして……ついに……。
「ついたぁ……! 遠かったぁ!」
森の中腹へとやってきた。
そこには、今まで見たなかで一番大きな木があった。
で、その木に、巨大な虫の卵が植え付けられていた。
感じとしては……虫の卵。
薄い殻につつまれてて、その中で巨大なシルエットが見える。
でっかい……虫だ。
この超巨大樹に負けず劣らずな大きさだもん。
これで赤ちゃんなら……成長したらどんだけ……。
『ケースケよ。あの卵のなかから、魔王ルクスリアの魔力を感じるのじゃ!!』
「色欲の魔王ルクスリアさん……か」
さっき僕に力を貸してくれた、エロお姉さんが、どうやらあの卵の中にいるらしい。
ディートリヒさんが首をかしげる。
「しかし、そのルクスリアどのは、どうして卵の中に……?」
『おそらくは養分として、取り込まれておるのじゃろうな』
スペさん予想だと、ルクスリアさんはこの卵の親に食われて、そして養分として、卵の中に入れられた……とのこと。
『いかん、ケースケ。卵はふ化寸前じゃ。ルクスリアの魔力を吸収し、とんでもないエネルギーを秘めておる。ふ化と同時に、このあたり一帯が吹っ飛ぶぞ!』
「辺り一帯……ってどれくらい……?」
『おそらくこの妖精郷は吹っ飛ぶし……最悪のケースだと、帝国が滅ぶほどかの……』
なんと!
それは……大変だ! オタクさんの愛する、マデューカス帝国が……爆破されちゃう!
「とりあえず、あの卵を収納しよう!」
『それがいい。アイテムボックスにいれておけば、安全じゃ。あとはゆっくりルクスリアを取り出せばいい』
「うん! よし! いそぎで……蠅王宝」
と、そのときだった。
『カバンのがきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
突如、上から何かが降ってきた。
神眼を持つ僕には、敵の動きが見えた。けど……。
速い!
僕はディートリヒさんとヘルメスさんを抱えて、ジャンプ!
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
『ちぃ……よけやがったかぁ~……まあ、いいぜぇ……!』
そこには……黒光りする、人間サイズの虫がいた。
あのフォルム、見たことあるぞ!
「ゴキブリだ!」
人間っぽいゴキブリがいた!
きもい!
あとあのでかい虫のフォルム……。
「あなたは、経験値ですね!」
『はぁ!? ちっげーよ! オレ様は【反転魔族】!』
「はんてんまぞく……魔族……経験値じゃないですかやっぱり!」
『うるせえ! ガキ! 今日はおまえにリベンジしにきた!』
ああもう!
なんでまた次から次へと!
普段なら経験値きたー! って喜ぶとこだけど、今は時間がない。
巨大虫がふ化したら、帝国がやばいんだもん!
「あれが……魔蟲王四天王最後の一人でしょうか……?」
ヘルメスさんが首をかしげる。
『いや……あれは……あの魔力……まさか……!』
とヒキニートさんが、何かに気づいたようにつぶやいていた。
でも……どうでもいい!
「どけ!」
僕は手を前に掲げる。
「【絶対切断】!」
視界に入ってるものを、絶対に切断するスキル、発動!
斬撃が飛翔し、経験値に襲いかかる……!
パキィイン……!
『なんじゃと!? 絶対切断が……キャンセルされたわい!』
キャンセル……?
効かなかったってこと?
経験値の手には、いつの間にか、【黒い剣】が握られていた。
『ぎゃはっはあ! ど~~~~~よぉ! オレ様の【黒い聖武具】の力ぁ!』
「黒い……聖武具……?」
聖武具……まさか!
『あやつ、魔族でありながら、聖武具を使うのか!? 勇者の武器である……聖武具を!』
スペさんが驚くのも無理はない。
聖武具は、勇者がこちらの世界に来たときに、与えられるものだ。
それに、聖武具は基本、所有者にしか使えない(僕は例外らしい)。
魔族が聖武具を使えるわけがないんだ。
『やっぱり! 啓介君、逃げるんだ! あの黒い聖武具と、君の聖武具は、相性が悪い! なぜなら……あの黒い聖武具は、聖武具の力を打ち消してしまう!』
『なんじゃと!? 聖武具の力を、打ち消す!?』
……そうか。
だから、スキル攻撃が効かなかったんだ……!
『まずいぞ、ケースケ! おぬしの力は聖武具に依るものが大きい! 聖武具が使えぬとなると、魔族相手に裸で挑むようなものじゃ!』
『そういうことだぁああああ死ねええええええええええ!』
経験値が黒い剣を持って、斬りかかってくる。
その動きは神眼で捉えられていた。
普段なら、僕には鏡の勇者さんのスキル、反射が発動し、攻撃が効かない。
でも、ヒキニートさんの言っていたことがほんとうなら……!
剣がすぐそこまでやってくる。
反射のスキルが発動し、僕の前に鏡が出現。
いつもなら鏡が攻撃をはじき返す……けど!
パキィイイイイイイイイイイイイイン!
『無駄ぁあああああああああああああああ!』
やっぱり、反射スキルを無効化してきた!
僕は神眼の動体視力で敵の動きを見ていたので、間一髪で、よけられた。
けど……僕の頬に鋭い痛みが走る。
相手から距離をとって、僕は頬に手をやる。
「……! 血が……」
『ケースケ! 大丈夫か!?』
「う、うん……全然痛くないよ……でも……」
危なかった、って思った。
この世界に来て、僕は一度も、身の危険を感じたことがない。
いつだって聖武具が僕を守ってくれた。
でも……今は、その聖武具が機能しない。
『なんということじゃ……聖武具の効かない相手を倒さないといけないなんて!』
「勇者どの! 大変です! 卵が! もう破裂しそうだ!」
ああもう!
卵を回収しないと!
「蠅王宝」
『おっせぇええんだよぉおおおおおおおおおおおおおおお!』
また経験値……ううん、反転魔族が襲ってくる。
よけないといけない。
相手に意識が向いてしまい、蠅王宝箱を発動できない!
回避。
蠅王宝箱発動しかける、攻撃される……。
今のところ攻撃は当たってない。
けど……! こちらも攻撃を当てられないうえ、卵を回収できない!
『ケースケよ! 我があの男を押さえる! その間に、卵を回収するのだ!』
スペさんがフェンリル姿となって、反転魔族に突っ込む。
……どくんっ!
そのとき、神眼が脈動した。
脳裏に、一つのイメージが流れ込んでくる。
——スペさんが、反転魔族に突っ込む。
——魔族にかみつく。
——にやりと笑う魔族。
——スペさんの体が、バラバラになった……。
——慟哭する、僕……。
「スペさん! ストップ!」
ききっ! とスペさんが立ち止まる。
『なんじゃ!?』
「あいつに触れると、体がバラバラになっちゃう!」
『なに!?』
スペさんが驚く。一方、反転魔族は舌打ちする。
『ちっ……! 余計なことを! だがおせえ!』
スペさんが立ち止まった隙に、反転魔族が斬りかかってきた!
だが……!
ガキィイイイイイイイイイイン!
『ちっ……! ガキ! 邪魔すんじゃねえ!』
僕は大勇者ミサカ・アイさんの力を宿し、勇者の短剣を手に、敵の攻撃をふせいだ。
『ケースケ! すまぬ!』
「大丈夫! 聖剣技・裂空!」
僕は横回転の攻撃を食らわせる。
ガキィイイイン!
『ぐっ……!』
反転魔族がぶっ飛ぶ。
『あ、危なかったのじゃ……神眼と、そして大勇者ミサカの剣技。そして何より……ケースケが未来視してなかったら……我は死んでおった……』
神眼の持つスキルの一つ、未来視。
少し先の未来を見ることが出来る。
ミサカさんが……僕を助けてくれたんだ。
友達を失わないように。
ぴし、ぴき……パキィイイイイイイイイイイイイン!
『そんな! 聖武具……勇者の短剣の刃が……! 折れたのじゃ!』
……短剣さんから借りている聖武具を、壊しちゃった!
『あやつめ……妙な能力を使いよるぞ!』
「鑑定!」
・能力【剣体】
→全身を剣にする能力。
触れたものを切断する。
あの魔族、スパスパ魔族ってことだ!
『まずいの……ケースケ。やつに物理攻撃は効かぬ。そのうえ……黒い聖武具の力で、こちらの聖武具のスキルは通じぬ!』
あくまであいつにスキル攻撃が効かないだけだ。
つまり、自己強化系のスキル(僕を対象にしたスキル)は、効く。
スキル攻撃は効かない……
……!
そうだ!
「いけるかも! スペさん、子犬姿に戻って! 僕がやる……!」
スペさんが子犬に戻って、僕の頭に乗っかる。
僕は……。
「縮地!」
自己強化スキル、縮地を発動。
反転魔族に接近する。
『はは! ばかめ! オレ様に触れるとズバッと切れてしまうのを忘れたのかぁ!?』
僕は短剣を振る。
「たぁ……!」
がきぃん!
思った通り、反転魔族は自分の腕で、短剣を受け止める。
そのまま能力、【剣体】を発動させようとする。
「ここだ……! 能力! 【煉獄】発動!」
『な!? あ、能力だとぉお!? ぐあぁあああああああああああああああああああああ!』
瞬間、反転魔族が燃え出す!
やつが苦悶の表情を浮かべながら、倒れ込んだ!
『そうか! ケースケはスキルだけじゃない、魔族を取り込んで、能力が使える! 能力は魔族の技!』
『なるほど! 黒い聖武具がキャンセルするのは、あくまで聖武具の……勇者の力だけ! 魔族の力はキャンセルできないんだ! 考えたね、啓介君! すごいよ!』
スペさんとヒキニートさんが驚いてる。
炎でのたうち回ってる、反転魔族。
その後ピクリとも動かなくなった!
よし……!
すぐ巨大蟲の卵を回収だ……!
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