136.
凄まじい魔力を放ちながら、新キエリュウが攻撃態勢に入る。
高位の魔族は固有の特殊能力を持っている。前回のキエリュウが使ってきた「あべこべ」のような、厄介な術を使ってくるに違いない。
『一気にいくぞ!』
先手必勝とばかりに、スペさんが魔力砲撃を放った。
どごぉぉぉんっ! と鼓膜を揺らす爆音と共に、極太の閃光が新キエリュウを飲み込む。
だが、手応えはない。そこにいたのはただの残像だ。
ふわりと、新キエリュウの気配が僕たちの背後へと移動した。
『くそっ、速すぎる! 一体、何が起きてるのか全然わからないっ!』
ヒキニートさんが悲鳴のような声を上げる。
それに対し、僕とアイさんは顔を見合わせて首を傾げた。
「「え?」」
『え、ってなんだよ、え、って!』
「いや、ただ相手と自分の位置を一瞬で入れ替えてるだけだよね?」
僕が事もなげに言うと、アイさんがニヤニヤと笑いながら虚空を指差した。
「そんなこともわからないなんて、だらしないなー。だらしないよ、セバっちゃーん」
『きぃぃぃっ!』
ヒキニートさん――セバちゃんが、悔しそうに歯ぎしりをする音が聞こえる。
『てゆーか、そんな異常な眼力を持ってるんだったら、前のキエリュウが使ってきた「あべこべ」も見破れたでしょ!?』
「いや、あれは物理的に見えないタイプの攻撃じゃん。どうやって見るのさ」
「そうそう。それに比べて、一瞬で位置を入れ替えるだけの物理的な挙動は、普通に目で追えるじゃん。ねえ?」
『普通は見えないからぁぁぁっ!!』
僕とアイさんの超絶眼力コンビによる常識外れの理屈に、ヒキニートさんの魂のツッコミが木霊する。
強敵の背後へのテレポートという絶体絶命のピンチにも関わらず、緊迫感ゼロで繰り広げられる僕らのやり取り。
その光景を前に、半魔のリコは終始唖然として、ただぽかんと口を開閉させているのだった。
【おしらせ】
※3/1(日)
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