135.
イチゾクロート。声に出してみたものの、ひどく言いにくい名前だ。
「長いし言いにくいから、今日から君は『新キエリュウ』ね。で、こんな所で何しに来たの?」
「誰が新キエリュウだ! 我が始祖、シソ・デ・キエリュウを殺した貴様らを倒すために決まっているだろうがぁっ!」
新キエリュウが、これ見よがしにビシッと指を突きつけてくる。
先祖の仇討ちという正統派な復讐劇らしいが、あいにくと僕の心には全く響かなかった。
「あー、はいはい。そっかそっか」
「なにをぉっ!?」
適当に相槌を打つと、道化師の仮面の下で新キエリュウが青筋を立てた。
僕はやれやれと肩をすくめ、彼を諭すように手をヒラヒラと振る。
「いや、やめとかない? 僕、弱い者いじめは嫌いなんだけど。無駄な争いはしたくないし」
『なんじゃ。経験値は要らんのかの?』
呆れたように声をかけてきたのは、仲間のスペさんだ。
「ザコを倒しても、あんまり経験値伸びないからね」
「それに、キエリュウって名前のやつなら、前にもうカバンに食べさせちゃったし」
「我が一族を、カバンに食わせただとぉっ!?」
新キエリュウが盛大にのけぞり、わななきながら肩を震わせる。
どうやら完全に地雷を踏み抜いてしまったらしい。
「バカにしよって! 許さんぞ人間ども! うぉおおおおおおっ!」
ズバァァァァァン!
新キエリュウの全身から、凄まじい魔力の奔流が立ち上った。
ビリビリと空気が震え、周囲の黒曜石の壁が軋み声を上げる。
どうやら、無駄な争いを避ける平和的な話し合いは、完全に決裂してしまったようだった。
【おしらせ】
※2/25(水)
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