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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
最終章 モブでも踏ん張って幸せになります
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数日後、私とノアは教国にいた。

世界の中心と言われている島で、建物はどこもかしこも真っ白だった。

強い日差しが当たり、白さがさらに際立つ。


「申し訳ございません。猊下は今体調が優れず…」

「知ってます。納めにきただけですから」


ノアはわざわざ出迎えにやってきた神官たちに挨拶をする。


私たちは教国にデネブレ産のシャンパンを奉納しにやって来た。

浄化された土地で作られたシャンパンはかなり価値のあるものとして知られてる。

その中でもランクがあって、最上級のシャンパンはかなり希少なものらしい。


それを今回はノアがその奉納の役割を担うことになり、私は一応未来の公妃としてそれに同伴することになった。


教国に来るのも初めてで、何もかもが目新しく、私は忙しなく周りをキョロキョロと見回していた。

街並みは地中海のリゾート地みたいだし、宮殿やら神殿やらはデザインはシンプルなのに、壮大でとても神秘的だった。

天井は帝国の宮殿よりも高く、あそこはどうやって掃除するんだって位置に窓がある。

ロープを掛けるのも苦労しそうだ。


「映えだ!映え!」


興奮しすぎて17年ぶりにこの単語を発した。

前世でも『映え』なんて巫山戯る時しか使わなかったのに、つい口に出た。

この言葉を作った人は天才だよ。

帝国の宮廷でも早々、思わなかったげど、あまりにも幻想的で口走ってしまった。


「何、それ?」


ノアは神官達に挨拶を終えると、首を傾げた。


「絵に描いて残したいぐらいすっごく素敵って事だよ」

「へぇ~」


ノアに話してから、前世を隠そうとは思わなくなった。

私は躊躇うこともなく、ノアに教える。

そしてノアはそれを素直に聞いてくれる。


「あ、それは部屋に運んでください」


ノアが神官に指示を出して荷物を運ぶ。


「シャンパンが入っているので、丁寧に傷がつかないようにゆっくりお願いします」


荒々しく持ち上げた神官に私は慌てて言った。


「かしこまりました」


表情ひとず変えずに私に一礼した神官は黙々とそれを部屋に運び入れていく。


教国の神殿には、デネブレ公爵家の為の一室がある。

長旅を終えた私たちはひとまずそこで休むことになっているのだが、荷物を運んでくれる従者は神殿に入ることができない。

神官は縄張り意識の高い人たちだし、神聖な場としての決まりがあるから、そう簡単に人は入れない。

私がこの奥まで入れたのも神殿の婚姻書があったから。


──正式なデネブレの人間じゃないって渋られたけどね


思っていたよりも、手こずったがなんとか許可はもらえた。

けど一人で出歩くのは禁じられて部屋から出るときはノアと一緒じゃないといけない。


──なんか人の雰囲気も違うんだよね…


宮廷でピリピリした雰囲気があったけど、それとはまた違う。

私たちもいくつか運んだから、荷物は全て部屋に移動し終えた。


「広いね…」


部屋を眺めながら呟く。

内装も真っ白でシンプルなのに煌びやかさがあって、ザ・豪華な宮殿とはまた違った手の届かなさがある。


「ミミの部屋は向こうだ」


ノアが部屋にいくつかある扉の内の一つを開けた。

デネブレ家の為に用意された部屋は2つあって、その部屋は扉で続くようになっているらしい。

昔からデネブレ家は定期的に公爵夫婦でここに来るのが恒例で、用意されているとか。

この部屋で一人で寝れるのだろうか。

私はなんだかドキドキしてきた。


すると、廊下に続く扉が開いて何人かの神官見習いと思われる人たちが入ってきた。


「この度、お二人のお世話をさせて頂く者たちです」


ノアを出迎えた神官が紹介を始めた。

だが、ノアが片手を上げてそれを止めた。


「それは後でもいいかい?一先ず、ゆっくりしたいんだ」

「そうですか?」


カタッ


部屋に運ばれた箱の一つが音を立てた。


「あ、シャンパンが中で倒れちゃったかもっ…しれません!」

「シャンパン?なら部屋に持ち込まずともお預かりしますよ?」

「い、いえ!あ、あれですよ!部屋で飲みたくて!」


私がわちゃわちゃと言ってると、ノアもゆっくりと頷いた。


「うん。自分たちで出来るように道具も揃えたから、心配しないでください。ありがとうございます」


落ち着いてノアが言うから、私はブンブンと首を縦に振った。


「そうですか…」


神官もノアのその対応で私を不思議そうに見ながらも引く。


「では、何かあればいつでもお申し付けください」


そう言って、連れてきた見習い達と共に部屋を出て行った。


「くくっ」


ドアが閉まると共に堪えきれないようにノアが笑い出した。


「ぷははっ」


一度笑い出してしまえば、隠す必要もないのかと思ったのか、ノアはあからさまに笑い声をあげる。

笑いのツボが意味不明だ。

どこにそこまで笑うところがあったのか。


「何がおかしいのよ」

「だ、だってっははっ」

「何なのさ」

「ふふっ、み、ミミはっ、嘘がつけないタイプだねっ。安心したよっ…ははっ!」


ノアは笑いながら答えた。

動揺はしてたけど、そこまでとは。

自分の役立たず感が恥ずかしい。


──絶対、私は嘘を付かないとか言ってきたくせに何よ…


私はむくれながらノアをじっととした目で見つめた。


「ノアは嘘が嫌いな割には、うまかったね」


半分嫌味でノアに返す。

たとえ下手でも、そんなに笑わなくたっていいじゃないか。

そう思っていると、ノアはまだふにゃりと笑いながら私に顔を向けた。


「ミミがあまりにも目が泳いでいたから、こっちは冷静になれた」

「それはよかったね」


私は拗ねながら答える。


「そうだね。でもあんな嘘を僕に付かせたんだからミミは責任を取らないとね」


ノアはふふっと目尻に皺を寄せてこちらに顔を向ける。

珍しいいたずらっ子の表情だ。


「分かってるよ…」


そう答えながら、ハッとして顔をあげる。


「まさか、今のプロポーズ?」

「え?」


しまったと思ってノアに問いかけると、ノアもびっくりように目を丸めていた。


「え、っと…違うの?」

「え?うん……そう言うつもりじゃないけど?」

「はぁ~~~~~~」


ノアは読めない行動もするからこう言う時分からない。

分からないと思っている事が意外と分かっていたり、分かると思っていたことが分かっていなかったり…


──勘ぐりすぎたか…


またしても恥ずかしくなる。


「なんか、ごめん」


ノアは申し訳なさそうに私に言った。

でた、しょんぼり犬。


──いや、別にノアが悪いとかじゃないんだけどね…


なんだか上手くいくようで上手くいかない。

それはそれで面白いとか思ってしまうのは、もう仕方のないこと。


ガタッ


そんな話をしていると、さっきの箱が暴れた。

私とノアは互いに顔を見合わせた。


「「…」」


さっきこの箱のせいでドギマギしてたのに、すっかり忘れていた。

顔を見合わせた私たちは、そのまま箱を開けてあげる。


「………」


箱の中には恨めしそうにこちらを見るレイナがいた。


「ごめん、忘れていたわけじゃないよ。ちょっと、抜けてただけ」

「ミミ、それを忘れたと言う」


私が苦し紛れに謝罪すると、すかさずノアが横槍を入れる。

ここは相手を不快にしないように上手いこと言うところでしょ。

そう睨んだけど、ノアには伝わらない。


「別に……」


だけど、レイナは私とノアを見てプイッて顔を背けた。

お前はどこぞの女優かい。


──まぁ、別にレイナの機嫌を取ることもないか。


そう思った私は、別の箱から服を取り出して、レイナに指示を出す。


「はい。これに着替えて」

「何……これ?」


レイナは警戒しながらもその服を手に取る。

真っ白なその服は今までレイナがこの国で慣れ親しんできたものとは違う。


「ここでの見習いの衣装。これで変装して、世界樹まで行くよ」


私はレイナに言った。

レイナの顔が少しだけ緊張していた。


私はあの日、レイナに提案した。

ここに留まるか、それとも帰るか。



私とノアはあの後、ママさんやヴェロニカのオリエンス家で、異世界へ戻る方法を聞いた。

なぜか分からないけど、異世界への行き方を記した書物がオリエンスの家で保管されていた。


帰る為には教国にある世界樹の元に行く必要があるらしい。

世界樹って神話とかによく出てくるものだけど、一般的なのは、教国を作った初代の教皇が植えた魔力の塊だとかというやつ。

正直、私は神話だけで実在するものだとは思ってなかった。


バビィさんと勇者もオリエンスが手助けをして、世界樹に向かい、向こうの世界に行ったらしい。

だとすれば、レイナも戻れるってことになる。


何でも、世界樹の周りに広がる池には聖力という魔力とは別の力があるのだとか。

そこらへんの説明はノアがすっごく噛み砕いて教えてくれた。

単純に言えば、魔力よりも浄化された力でマナとの関連が薄いものなんだかとか。

ただ、神聖なものだと研究対象にすることができなくて詳しくは分からないらしい。

神話では初代教皇が世界樹を育てて結界を作った時にその力を使ったって言われていていて、その池に込められている聖力ってのが世界樹を守る結界のようなものを作っているらしい。


その結界を歪めることで異世界への道を作る事ができる。

太陽の儀式とは違うやり方だから、マナの望むところへ連れて行ってくれるらしい。


だけど、マナと世界樹が繋がりその希望に答えることで、その代償に違う世界に行く人は力を失う。

マナ自体はなくなると死んじゃうから、魔力や能力に関係するマナが枯渇してしまうか、それに関する何らかの経路が破損するかのどちらかだろうってノアは言ってた。


バビィさんがあの世界に居たってことは、きっとそれは事実なんだろうと思う。

やけに詳しく書かれていたその書物がヴェロニカの家になぜあったのかは分からないけど、とにかくそれは確実な方法なのだ。


つまり、レイナはあの世界に帰れるって事。


その話を私はレイナに伝えた。

その代償も教えたし、ここにいる危険性も教えた。

それで、どちらかを選ぶのかはレイナに託した。

だって、レイナの人生だ。

決断が間違っていようが何だろうか、彼女が決めるしかないこと。


「私は………」


レイナはずいぶん悩んでいた。

この世界では蝶よ花よとちやほやされまくったお姫様生活のレイナにとって、今の状況が理解できないなら未練たらたらになるのかもしれない・

いや、これは完全に私の偏見だ。

レイナが実際にどう思っているかは分からないけど、決断するのを躊躇っていたのは確か。


しばらくして、レイナは答えた。


「帰りたい……私の世界に帰りたい………」


自分の想像と異なる今が辛いからそう言ったのか、それともただ自分のいるべき場所を確認したのか。

どちらにしろ私の言葉がレイナを変えることはないだろうと悟った。

レイナが自分の過ちに気づくにはまだ時間がいるのかもしれない。


けど、レイナの決断には私も賛成だった。

だからすぐに準備を始めた。



「ちょうど、ノアの家のシャンパンを奉納する時期でよかった」


私は隣の部屋でレイナが着替えている間に、ノアと話して時間を潰していた。

ノアは私に顔を向けて頷く。


「聖女の本来の力を公表してないから、帝国からも出れなかったしね」


未だに聖女の取り合いをしている帝国と教国ではそう簡単にレイナを引き渡すことはしない。

個人の人生よりも国の方が大事なのは国として仕方がないことだ。


「でも…ノア達を巻き込んでよかったの?」


動き始めたら仕方ないけど、不安になる。

迷惑をかけたらどうしよう。

そう思って仕方ない。


「正しいって思うことをしているんだ。何かがあってもそれは巻き込まれたことじゃない」


ノアは淡々と言った。

特に力の入っていないその言い方は、ノアが心からそう思っている印のようで私は少しだけ落ち着く。


「それに、聖女が無事に帰れたら僕たちが何かしたって証拠はないだろ?」

「聖女が行方不明になったらノア達が責任を取らされるんじゃぁ…」

「どうだろうね」


ノアはこの話題が特に興味ないのか、ふあふあと答える。

これはもっと深刻な話のはずなんだけどね。


「何とかなると思う。もし、ダメなら父上は先に止めただろうし」

「見逃したってことは何かあるってこと?」

「かもね」


ノアにしては珍しく曖昧だ。


「父上は困ったらすぐに言うと思う。何かを一人で抱え込むのは愚か者だって小さい時から言っていた人だから」


なるほど、それは多分私を無条件に信じてくれた事と同じなんだと思う。

いや、私よりももっと確固たる家族の絆がある。


──あーあ、どこまで素敵なんだよ…


本当に夢みたいだ。

場違いにため息が出そうだった。


「シャンパンの箱に詰めるって案はすごく面白かった」


ノアが感想を言い始めた。


「ヴェロニカの案だけどね」


先にヴェロニカがグリード国に対して使った手だ。

あれから話で聞く限り、グリード国は内密に帝国と交渉しようと悪あがきをしているらしい。

それもヴェロニカによって上手いこと操り人形にされて、搾取されまくっているとかいないとか。

「ミミ達を探すことはないわよ。それをしたら自分達が死ぬのは分かってるだろうし」って、ヴェロニカはすっごく恐ろしい笑みを浮かべていた。

知ったら後戻りできない気がして、私もそれ以上は聞かなかった。


「何にしろ、まだ世界樹のところまで行かないと成功するかどうかも分からないから」


ノアが私に言う。


──そうだよね


まだ終わってない。

私はもう一度気を引き締めた。

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