表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/302

魔族の国編 ⅢⅩⅡ

 アイちゃんの膝を枕にして、ロア君を寝かせること、三十分。ようやくお目覚めのようだ。

 ロア君はおもむろに体を起こすと、私たちをぼうっと見回した。そして、大きく伸びをした。よく眠れたようで。

「おはよぅ……」

 声ちっさ!?

「おはようロア君。ここがどこか覚えてる?」

「いや……知らん……どこだ、ここ?」

「バージェスさんの家だよ。ロア君、急に倒れちゃったから」

「そうだぞ。俺が運んだんだからな! 感謝しろよ!」

 言って、アレイスターさんがロア君の背中を叩いた。

「あ……そうすか……ありがとうございます」

 リアクションまで、なんか薄いなぁ……。寝ぼけてるのかな?

「あーそうだ。変な夢見てさ」

「ロア君の変な夢の話なんて誰も求めてないんだけど」

「まぁ、そう言うなって、ディティス。あのな――」

「あ、喋るんだ……」

「メルコさんが、魔女だったって聞かされる夢でな! いやぁ、びっくりしたぜ。ミステリアスなところがある人とはいえ、さすがに魔女ってさ〜。荒唐無稽すぎるだろう?」


 話を聞いてしまった私たちは、居た堪れない空気になって、みんなで可哀想な子を見る目をしてしまった……。

「ロア。げ、現実逃避、や、止めよう?」

「な、なんだよ、アイ……」

「メルコさんは、ま、魔女だよ。ゆ、夢じゃない。そ、それを聞いて、ロアは、た、倒れたんだから……」

「あのさ、受け止める時間って必要じゃん? 妹よ……」

「バージェスさんは、ま、まぁ頑張れって、い、言ってたよ」

「俺がメルコさんに抱いてる気持ち言ったの!? 全員の前で!?」

「言わなきゃロア君、下手したら殺されるかもな雰囲気だったし……」

「え……俺、そんな危ない状況だったの……? じゃあしょうがねぇか」

 受け入れるの早いな、ロア君。


「だが、相手がまさか魔女とはな。高嶺の花どころじゃないだろう? 王族と結婚するより難易度高くないか?」

「クガルーア。恋愛の挑戦はタダですから」

「当たって砕けろだな、まぁせいぜい頑張れ」

「クガルーアさん、面白がってないっすか?」

「そんなの無論だろ」

「この王子、性格悪ぃ! いいっすよ、やってやりますからね、俺! 絶対!」

「おー! 頑張れ頑張れ!」

  

 やんややんや。

 静かにお茶を啜っていただけの空気が、一気に華やいだ。なんだかんだ、ポジティブにムードを作っていくロア君の妙技と言えるのかもしれない。

 ま、メルコさんと本当に恋人になれるかどうかは兎も角な話だけれど。夢を見るのは自由だからね。


「良い仲間ですね……」と、フードの人が私に囁き、私は「はい」と笑った。


 そこへ、私の盾の観察を終えたらしいバージェスさんが上がってきた。

「なんぞ、賑やかであるな。ふふ、久しく談笑の声なぞ聞いていなかった故、心地良い」

「終わりましたか? バージェスさん」

「うむ。重畳である! もうアイデア出しも終わって、大方の改造の方針も決めた! 天才故な! というわけで、さっそく移動するぞ!」

 移動?

「ここで改造するんじゃ……?」

「いや、そなたの盾は、その大部分が魔鋼製であったからな。こんな一軒家程度の設備では敵わぬ。しっかりとしところで加工する」

 しっかりとしたところ……。この集落にそれっぽい建物は見えなかったけれど、でもエルダードワーフも住むところとも聞いているし、そっちにも協力を仰ぐって感じかな?

 しかし、私の予想とは外れて、バージェスさんはフードの人に話しかけた。

「お前のところの工廠、使わせてもらうぞ」

 フードの人は大きな溜息を吐いた。

「そうなるんだろうなとは思ってました……。どうせ、拒否権なんて無いんでしょう?」

「無論である!」

 それを聞いてまた溜息。


 そういえば、このフードの人、ずいぶんとバージェスさんと気の置けない仲って感じだけど、誰なんだろう? ずっとフード被ってるのも気になるし、尋ねても大丈夫なんだろうか?


「あの、ずっと気になっていたのですけれど、貴女は、何者なのでしょうか? そろそろ顔を見せていただいても? 無理にとは言いませんけれど……」

 ユニエラちゃんが尋ねてくれた。こういうとき、物怖じしないからかなり頼りになる。

「お主、まだ挨拶もしておらぬのか?」

「ええっと……その……」

「ああ――じれったい! 早ぅその被り物を取って挨拶せよ! そも、室内で着帽など、失礼であろうッ!」

 バージェスさんは、フードを掴んでローブごと引っ剥がし、無理やりその姿を(あらわ)にした。


 金色の長い髪、特徴的な長い耳。ディープブルーの瞳の中に、縦に一筋の赤。普通のエルフとは違うけれど、かといって、ハイエルフとも違う見た目の女性。

 半泣きの顔で、小さく可愛らしい悲鳴を上げた彼女の肩を抱き寄せ、バージェスさんは紹介した。

「我が娘、ティレル=ハスカイドー=ケイオス=アルドゥイノである!」


「「「む、娘えええええ!!?」」」

 高中低のハーモニーが響いた。

 ていうかそれより、アルドゥイノって……。

 一同の視線がクガルーアさんに注がれた。

「バージェス殿……。この子――いえ、この方はその……どういう?」

 尋ねると、バージェスさんはティレルさんの背中を小突いた。自分で言えということらしい。それを受けてティレルさんは、深呼吸をしてから私たちに向き直り、臙脂色の(えんじいろ)短めのスカートを摘みながら礼をし、口を開く。

「申し遅れたことをまずはお詫びします。本国、アルドゥイノ王国の王子殿下。私は、西部アルドゥイノ、暫定女王、ティレル=ハスカイドー=ケイオス=アルドゥイノと申します」


 わずかな沈黙の後、また声が揃った。

「「「女王!!?」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ