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魔族の国編 ⅡⅩⅤ

 トロールを倒した私たちは、はぐれている仲間を探した。

 そして、いたるところで上がる土埃の中、それを吹き飛ばして、炎の竜巻が上がったのが、みんなの目に入った。アレイスターさんがトロールを倒すときに使ってた魔法だ。見覚えがあるし、あのときは近くで見てたから、その温度にも覚えがある。めっちゃ熱いんだよなぁ、あれ……。

 何はともあれ、目的地は決まり、何を提案するまでもなく、みんなで一斉に竜巻に向かって走り出した。


 道中襲ってきたオーガのパーティーは、仲間を得た私たちにとって恐るるに足りず、降りかかる火の粉でも払うように、容易く返り討ちにできた。

 これで、私たちが倒したオーガの数は十体を超えたくらいなわけだけど……。

 見回すに、どうもまだ、二十体以上は余裕でいるように見える……。


「オーガの数、最初より増えてない?」

 私が疑問を投げるとみんなは頷いた。

「そ、それは私も思ってた……」

「少なく見積もっても、倍はいるよね……」

「それに、中央の頭一つ抜けて大きいオーガの二体。背中合わせで突っ立って、まったく動いていないように見えます。不気味ですわ」

 確かに……。微動だにしてない……よね?

「何をしてくるか分からないから、警戒していこう。でも今は先に、みんなと合流しないと!」

「ええ」「うん」「う、うん」

 そして私たちは、先を急いだ。


 目的地が近付くにつれ、戦いの痕跡が目につくようになった。

 頭を鋭利なもので一突きされたものに、喉を深く搔き斬られたもの。黒焦げのものに、無数の刃でバラバラにされたようなもの。それらはいずれもオーガで、中には、黒焦げのバラバラになった、恐らくトロールだったものの肉片も散らばっていた。

 その傷から見るに、急所だけを確実に狙っているのはクロウで、丸焦げだったりバラバラ死体を量産しているのはアレイスターさんだろう。

 つまり、クロウとアレイスターさんがペアで行動しているということだ。それが分かっただけでも、心の荷が軽くなった。

 いや、クロウのことは嫌いだけど、まぁ、腕は信用できるからね。腕だけは。


 ――と、見えてきた。

 やっぱりというか、案の定というか、二人はオーガに囲まれていた。

 けれど、逼迫しているような雰囲気ではなかった。


 クロウは軽い身のこなしで、一息で肩まで跳躍――したかと思えば、ダガーの根元まで、オーガのコメカミに突き刺している。

 アレイスターさんも、あの罠解除に使った剣で、オーガやトロールの攻撃を難なくいなしながら、金属板を掲げて魔法を発動。逆巻く風の刃でオーガを八つ裂きに、トロールをウェルダンに焼き上げていた。

 あれ、助け、要る? この二人。

 ていうか、クロウは兎も角として、アレイスターさんって、本当はこんなに強かったんだ……。接近戦を滅茶苦茶嫌がってたから、てっきり苦手なんだと思ってたよ。これだけ戦えるのなら、今度からは、自分の身は自分で守ってねって言おう。


 まぁ、それはそれとして、合流はしておこう。数は力だしね。


 残っているオーガたちに、私たちそれぞれで急襲をかけて、その場を鎮圧した。

 シェリーちゃんが早速二人にも疲れを取る魔法をかける。


「ふぅぃぃ〜……。サンキュー。死ぬかと思ったぜ〜、まったく。剣は頭使うよなぁ〜。あー疲れ……は、取れたんだったわ」

「……ふぅ。助かりました、シェリー様」


 様!? クロウって敬語とか使えたんだ。

「失礼なことを考えているな、アンカー。殿下とのやりとりでも敬語は使っていただろう、俺は。耳に穴が開いてないのか?」

「そうだっけ? お前に興味ないから聴覚を向けてなかったのかも、ゴメンね〜」

「減らず口が叩ける程度には余裕があるようで安心したぞ、アンカー。……ブチのめし甲斐がある」

「ああ? やってみなよ――」

「「やめなさい!」」


 声とともに、後頭部への衝撃があって、私の視界は地面を映した。ヒリヒリとした痛みを頭に感じながら顔を上げて振り向くと、平手を振り抜いた格好で、頬を膨らませながらジトッとした目で私を見ている恋人の姿があった。

 対面ではシェリーちゃんとクロウが同じ構図になっている。


「喧嘩してる場合じゃないでしょ、ディーちゃん」

「はい……まったくもってその通りです」

 言い訳などすまい。今のは私が三割くらい悪かったのは事実だし、受け入れよう。私は弁えている大人な女でもあるしね。

「釈然としないことを考えているようだが、まぁ、ここは俺も退()こう。話をややこしくていては始まらんからな」


 というわけで、トロール&サイクロプス撃破組の合流は成ったので、残敵を倒しつつ、オーガ組との合流を図ろうと、相成った。



 上位種か、特殊個体っぽいオーガ二体の方へと駆ける。こっちを向いている個体側のオーガは、少しずつ、でも確実に数を減らしている。問題は、オーガ組のいると思われる側だ。戦闘が続いていることは、オーガたちの様子で分かるけれど、その数が大きく減っているようには見えない。

 あと、あの特殊個体二体のいる場所を境に、こっちと向こうで、オーガの数が違うし、向こうのオーガがこっちに流れてくるということも無いのが気になった。まるで、背中合わせに立つあの二体の間から、見えない壁でも出ているみたいだ。

 でも、不気味に思いながらも今は進むしかないと、足を動かした。そして――


 よし、もうすぐ……。


 私たちが、二体の境界線上にあたる場所にさしかかる直前、こちら側を向いていた特殊個体オーガが、突如として吼えた。

 こちらを見るでもなく、振り向くでもなく、ただその場で吼えたのだ。

 その不気味な行動に、何事かと、私たちは足を止めて警戒した。そのときだった。

 空間にたくさんの穴が空き、その穴が弾けると、武装したオーガたちが出現した。こちらを向いていたオーガ側にだけである。


「はあああああ!?」


 驚きと怒りと困惑を込めた声が、私たちの口から上がった。

 ざっくり数えてみると、また、二十体かそれ以上はいる。これは、つまるところ、オーガのおかわりみたい……。

 いや、いらないよそんなおかわり!!


「またぞろこいつらと一々相手などしていられるか! 先を急ぐぞ。殿下たちと合流しなくては。話はそれからだ」

 再び迫りくるオーガたちをいなしながら、クロウの言葉に頷いて、私たちは走り出し、特殊オーガ二体の境界線を超え――


 ――ゴン!

「痛っ!? ……え?」


 超えられなかった……。

 見えない壁に阻まれて、私たちは、おでこに痛みと、頭の上に『?』を浮かべた。


 手で検めると、確かに何か、硬いものを触る感触があった。

 一応ダメ元でシャルちゃんに飛んで上空を確かめてもらったけれど、残念ながら、吹き抜けで青空が見えるこの闘技場(コロシアム)に、天井が出現していた……。


 いやさ、「まるで、向こうとこっちの間に、見えない壁があるみたい」なんて比喩で考えてたけど、本当にあるとは思わないじゃん、見えない壁……。

 倒す前まで数が戻ったか、それ以上に増えてしまったオーガを前に、私たちは作戦の再考を余儀なくされるのだった。


 そしてここで、私は思い至った。

 あ、向こうもこんな感じの状況でオーガを減らせてない? と。

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