表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
276/304

魔族の国編 ⅡⅩⅣ

 シェリーちゃんに、疲れが取れる魔法をかけてもらって、全力疾走。まだ強化はかけてもらっていない。かけてもらうなら、何人かと同時が良いと思ったからだ。


 土煙の中で光っていた大鎌の軌跡は、少しずつ、その量も大きさも減ってきていた。アイちゃんの体力も限界に近付いているのかもしれない。急がなきゃ!

 というわけで、前言撤回!


「シェリーちゃん、強化、ちょうだい!」

「畏まりました! ディティスちゃん!」

「ディーちゃん、私は先に行くね」

「お願い!」

 シャルちゃんが自己強化をかけて一足先にアイちゃんのもとへ飛んでいった。

 そして私の方も――

「参りますわ! ――■■■□◆◆◇(フィジカル・グロウ)!」

 シェリーちゃんの強化を受けて、またさっきみたいな体の軽さを感じた。

(ワタクシ)もすぐに追いつきます。ディティスちゃん、行ってくださいな!」

「ありがとう!」

 言って大地を蹴った。

 殺人的な加速を自らに課して、十歩も蹴らない内に、アイちゃんを囲む魔物たちの外周に辿り着いた。先に向かっていたシャルちゃんもすでに中で戦闘中。へたり込むアイちゃんを背に、魔法で応戦していた。何はともあれ、間に合ったようで良かった。よし――


 急襲として、背中を向けている大斧を持ったオーガに飛びかかる。今の私なら、コイツらの頭の高さまでジャンプできる。


「てぇえりゃああああ!」

 後頭部から盾と杭をぶち込む。

 突如としてうつ伏せに倒れ込んだ仲間を見て困惑するオーガ。そこに――

「よそ見は禁物! ――◆◇◇□□■(アイス・エッジ)!」

 シャルちゃんが魔法を唱えると、水か、氷でできたような三日月状の物体が現れて、それでオーガの首を落とした。

 私は、アイちゃんを抱きかかえて、ひとまず包囲を脱出した。トロールは、相手するにあたって要求されるのが、体力とか筋力とか、そういう問題じゃないからね。

□◆◆◇■■◇(アイス・ウォール)!」

 追って来ようとするトロールの進路上に、氷壁を出現させて妨害するシャルちゃん。ナイス!


 そして、追いついてきたシェリーちゃんとも合流。

「アイちゃん、よく頑張ったね! 魔法薬は?」

「はぁ……はぁ……。ご、ごめん……わ、割れちゃった……」

 アイちゃんは絶え絶えな息で濡れたポーチを指さす。

「全滅?」

「た、たぶん……」


 今回は、手持ちからではなく、支給品として、各々に魔法薬各種が一瓶ずつ、ポーチごと支給されていた。使い所を考えなくてはならないので、できうる限り緊急時を除いては、シェリーちゃんやシャルちゃん、シウスさんの魔法に治癒は頼ろうという計画だった。

 けれど、アイちゃんは戦闘中に自分の分を割られてしまったらしい。

 下級の魔法薬でも、疲労を取るには充分な効果があった。だから、それすらも失ってしまったアイちゃんは、疲弊するしかなかったわけだ。


「お任せください、アイちゃん!」

 事情を聞いたシェリーちゃんは、ポンと自分の胸を叩いて、詠唱を始めた。

「――◇□□□□◆(リフレッシュ)!」

 魔法がかかると、土気色をしていたアイちゃんの顔色がもとに戻って、呼吸も整った。疲労を取る魔法は、相変わらず、すごい効き目だ。

「あ、ありがとう、シェリーさん。ら、楽になった」

 軽くなった足取りでアイちゃんは立ち上がる。もう大丈夫みたい。

 次いで、シェリーちゃんはアイちゃんにも強化魔法をかけた。

「よし! 反撃と行こう、みんな! サクッと、トロールを倒しながら、残ってるみんなとも合流しよう!」

 えいえいおー! と腕を掲げて、私たちは手始めに、手近のトロール二体へ向かった。

「アタッカーはアイちゃんで!」

「う、うん! ま、任せて!」


 二体のトロールにはいずれも、焼き斬られた傷が、足や腕などのいたる所につけられていて、指も何本か落ちていた。それは、あの状況でもアイちゃんが善戦していた証だった。


「どっちから?」

「み、右から」

「じゃあ左を止めるね!」

 言葉少なに意思確認して、それぞれの役割に向かう。


 指の少なくなった手の薙ぎ払いを受け止めると、シェリーちゃんが光の輪でトロールを縛った。

 そこにすかさず、上空からシャルちゃんの指が向けられる。

◆◆◆◇◇◇(ライトニング)!」

 シャルちゃんの指先から紫電が疾走(はし)って、トロールを襲うと、動きが止まって煙が上がった。――が、次の瞬間、皮膚の下がボコボコと蠢いた。まだ生きてる。軽度の火傷程度ではまだ再生するようだ。

 でも、全身の再生のためか、それ以上の動きはない。そこへ――


「はああああああッ!!」

 横っ跳びで上空をかっ跳んできたアイちゃんが、紅く綺麗な円を描いてトロールの首を落とした。それはそれは鮮やかな手並み……。


 って、いや、駆けつけるの、早くない? アイちゃん!? え、そっちは?

 振り返ると、一人任せたトロールは、両手両足と頭が無い胸像のような姿になって鎮座していた。あの短時間でアイちゃんがこれをやったという事実に、私は、戦慄するとともに、開いた口が塞がらなかった。


 強化されたアイちゃん……ヤバい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ