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魔族の国編 ⅡⅩ

 闘技場(コロシアム)の観衆たちが沸き上がる。

 そんな彼らを煽るように、実況の声が響いた。


「げ……撃破ぁあッ!! 挑戦者たち、見事、四体目のトロールの首を落とし、五戦目を突破しましたあッ! これでこのチャレンジも折り返しです、が! 驚くことに、ここまで、シェリー=ブロッサム女史の強化魔法を未使用! これは言うなれば、魔術的徒手空拳ッ! 己の肉体のみで、ここまで戦える人間の冒険者が居ることに、わたくし含め、観客の皆様も驚かれていることでしょう! 賭けのオッズも、挑戦成功に傾きつつあります! いやぁ〜、素晴らしいですね! どうですか? 解説のメアリー=ブロッサム女史」


「そうだね。個々人の技量もさることながら、何より、連携が良い。戦い慣れてる感じがあるよ。強化魔法を貰うことを前提にした、こっち側の凡百どもとは、その動きや、戦いから感じられる覚悟も違うねぇ。――なんてーの? バチバチに命のやりとりをしてきたヤツらって感じさ。可愛いからって舐めてたら、イチモツを蹴り潰されるぜ?」


「はい! ありがとうございます! 綺麗な花にはトゲがあるということですね。さて、突然の催しの変更な上、パーティー構成も、男性が三名に、女性が九名と、かなり女性偏重なパーティーだったことから、登場時は大ブーイングの嵐。リーダーである、隣国の王子、クガルーア殿下には、ハーレム王子だとか、好色王子といった不敬極まるヤジも飛んでいましたが、蓋を開けてみれば、この通り。実力でアンチを黙らせた格好です! さて、ここから六戦目までは若干のインターバルがありますので、これまでの戦いを簡潔に解説していただけますでしょうか? メアリー女史」

「あいよ。じゃあまずは一戦目だけど、初っ端のディティス=アンカー選手のぶちかましが一気に空気を変えてくれたね――」


 と、メアリーさんが私たちの戦いの解説を始める声をうっすらと聞きながら、次の戦いに備える。いきなり褒められて気恥ずかしかったからというのもあったけど。


 私たちは今、闘技場(コロシアム)の『冒険者チャレンジ』というコースに飛び入りで出場している。本当は別の催しが計画されていたらしいけど、そこは部族長の親族特権というものだろう。すんなりと案は通って、開催する運びになった。


 実況の人が言った通り、催しそのものが急遽変更になったのと、男女の人数比と、リーダーが隣国の王族ということもあってか、登場時はかなりのブーイングが巻き起こっていた。

 それを(いさ)めてくれたのは、今、解説席に座っているメアリーさんなわけだけど。あれは正に、鶴の一声。人気闘技者様々だった。頭が上がらないです。シェリーちゃんのパートナー候補的な意味でもね。

 だからこそ、無様な戦いはできないなと、若干のプレッシャーもあったりする。


 そんなこんなで始まった冒険者チャレンジ。ルールは簡単。闘技場(コロシアム)運営が用意した対戦相手の猛獣や魔物たちを倒す。それを十回戦までやる。

 クリアできたら、私たちが要望したものが貰えるというわけだ。

 要望したものは当然、全員分のポータル利用権。

 クリアすれば、大きな出費を抑えられる。さらに、それとは別に、運営からもクリア報酬としていくらかお金が貰えるらしい。これは賭けの利益次第らしいけど。

 今後の出費を抑えられる上にお金まで稼げるし、ぶっつけ本番にならないように、パーティー戦の予行までできると、私たちにとっては一石三鳥の良いこと尽くめだった――


 はずなんだけど……。


 一戦目は、角が生えたでっかいイノシシが八頭。みなさん()る気満々。これをなぜか、私が一人で倒す羽目になった。

 以下、会話を見てみてくださいな……。


「イノシシだな」

「なんか、角生えてますけど?」

「でもまぁ、イノシシはイノシシだろう?」

「イノシシだったら、ディーちゃん、子供の頃に素手で狩ったことあるよね、そういえば」

「あのねシャルちゃん。若気の至りというか、咄嗟の防衛行動は狩りに入らないと思うし、それ、私の封印しておきたい、可愛くない過去なんだけど?」

「でもかっこいいよ?」

「そうか、なら、ちょうどいいな」

「何がちょいどいいの、クガルーアさん!?」

「俺たちの実力を示すという意味で、もってこいじゃないか。特に、観客に舐められてる女性陣。盾使いがあんなの一人で全部ノシたら、見る目一発で変わるぞ?」

「言うことは分かりますけど……シェリーちゃんたち魔族も交えた、連携とかの練習も兼ねてって話――」

「舐められっぱなしは(しゃく)だろうが!!」


 すごく真に迫った勢いのある咆哮だった。そんなに嫌だったか、好色王子呼ばわりは。クガルーアさんよ……。


 とまぁ、そんな流れで頑張りました。なんと、弾倉(マガジン)一本使い切りました……。結構強かった。

 当然というか、思惑通り、観客の見る目は一発で変わってくれた。骨を折った甲斐があったものです。


 そしてその後は、ちゃんと当初の予定通り、とは当然いかず……。

 もはや意固地になって、それから四戦。

 王国民の実力を見せてやれというクガルーアさんの半ば八つ当たりのような決意と指示の下、シェリーちゃんとシャルちゃんには待機してもらうことになったのでした。


 二戦目、狼の群れの一団。およそ三十頭。

 三戦目、ゴブリンとゴブリンライダー、ホブゴブリンの混成部隊。およそ五十匹。

 四戦目、オーガとオーク、オルトロスの混成部隊。およそ二十体と十匹。

 そして、さっきの五戦目が、オーガとトロール、ケルベロスの混成部隊。ケルベロスが二頭に、オーガが八体。トロールが四体の、計十四体。

 私の盾の弾倉(マガジン)は、それまでに二本消費。合計三本使い切り、残り三本。まさか、防具新調して、いきなしこんなに弾を使うことになるとは思わなかったよ……。


 インターバルの時間が来たことで、クガルーアさんの溜飲もようやっと下がりきったみたいで、開口一番の謝罪が見られた。

 冷静になったみたいで良かったです……ホントに……。


「シェリーさん、シャルティさん。次からは参加してくれ。待たせて済まなかった」

「かっこいいディーちゃんの姿が、特等席でじっくり見られたので、問題ないです!」

「それです、シャルティ先輩! 本気で戦っていらっしゃるディティスちゃんは、あんなにも勇ましいのですね! (ワタクシ)、ときめいてしましましたわ!」

 自らを抱きしめながら、うっとりとした顔で、シェリーちゃんは身を捩った。

 そして、それを聞いて、うんうんと腕組みをして頷く、シャルちゃんとユニエラちゃんという、なんとなく、これからお約束になるんだろうなという予感がする流れを見た。


「――おっと、それはそうとでした! これからの戦いは、より厳しくなるはずです。体力の回復はしておきませんと! 皆様、集まってくださいな!」

 ハッと正気を取り戻したシェリーちゃんがみんなを集める。

「全員揃いましたわね?」

「うん。十一人、揃ってるよ!」

「おいディティス。十二人だろ? こんな簡単な計算、間違えるなよ」

 クガルーアさんが謎なツッコミをしてきた。

 だがしかし、誰もその冗談に付き合わない。むしろ私を見て少し可哀想な子を見る目をしているではないの!?


 ――え?

 私、マジで間違えてる?

「いやだって、女八人と、男三人のパーティーですよね?」

「いや、女性は九人だが? シェリーさんの数、忘れてないか?」

「いやいや、シェリーちゃんが来る前は七……いや、八? え?」


 私は改めて、人数と顔と名前を照合する。


 一、二、三、四、五――


「――あ!」

 憎たらしい顔を見て思い出した。

「ごめん、クロウ。素で存在忘れてた!」

「だろうと思ったよ、鳥頭のアンカー。時間の無駄だからここでお前とやり合うつもりはないがな。終わったら覚えておけよ?」

「うん。鳥頭だから多分忘れてるよ、ごめんね〜」

「貴様……ああ言えばこう言う……」

「はい、そこまで! 時間がないのですから!」

「「…………」」

 シェリーちゃんにストップをかけられて、私たちは言葉の矛を収めた。

 そしてすぐにシェリーちゃんは、詠唱を始め、私たち全員に魔法をかける。何を言っているのか分からないから、何をかけられているのかも分からない。けど、その効果は、すぐに身体で理解できた。


「うわ、めっちゃ身体が軽い……。疲れが吹っ飛んだみたい」

「疲れを取る魔法ですからね。……さて、大きな傷は無さそうですが、念のため治癒もかけましょう。万全でいきますわよ、皆さん!」

「それなら、私も手伝うね!」

「お願いしますわ、シャルティ先輩!」

 次いで二人で治癒の魔法をかけてくれ、私たちはひょっとしたら、戦う前よりも調子が良くなっているかもしれないというほどに回復した。


 そして、そこでちょうど、インターバルの終わりの鐘が鳴り響き、会場がしんと静まった。その視線は、魔物たちが現れる門へと向けられている。

 私たちも当然、警戒をし、陣形を整える。

 丸太で組まれた扉がゆっくりと開いていく。

 私は、陣形の先頭で生唾を飲み込み、盾のグリップを確かめるように、握り直した。


 重々しい扉の音とともに、今、六回戦が始まる――。

律儀に五回戦分書くとダレると思ったので、かっ飛ばしました。

今更何をと自分でも思いますけどもね。

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