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魔族の国編 ⅩⅨ

 戻ってきたシャルちゃんが纏ったドレスのような鎧は、色は髪と同じ純白で、アーマー部分は素の鈍色。至ってシンプルな色使いではあったけれど、逆にそれがウェディングドレスのようにも見えて、シャルちゃんを一層綺麗にしていた。

 腰まである長い髪は、三つ編みにしてから後頭部まで上げて固定。滅多にお目にかかれないシャルちゃんのうなじが、大胆に(あらわ)になっている。

 大胆に顕といえば! 一番の見どころは別にあった!

 この(ドレス)、背中側がバックリと開いているのである。

 シャルちゃんの、透明感のある白い肌と肩甲骨、そしてそこから生える真っ黒な羽……。これは美しすぎて、お子様にはお見せできない。リヴィちゃんの目を思わず手で覆ってしまうほどのセクシーさだ。


「あの、ディティスお姉さん、何も見えないんですけど……!?」


 あっと!? 腰には尻尾を出すための穴まで!?


「尻尾がスカートの下から出ているのも趣深いと思いましたが、これはスカート部分がくるぶし辺りまでと長いので、ここはやはり尻尾穴があった方が良いと、急遽開けてもらいました!」

 説明してくれたシェリーちゃんに、私とユニエラちゃんは、親指を立てた。リヴィちゃんはここで解放した。ゴメンね。

「素晴らしい仕事だよシェリーちゃん!!」

「声おっきぃよ、ディーちゃん……」

 あまりにも良すぎてすごい声が出ちゃった。ゴメンね!


「ですが、こうなってくると欲が湧いてきますわね、シャルティ様」

「え? あー、そうだね、ユニエラさん。ちょっと、不公平かもね」


 えっと、二人は顔を見合わせて何を言っているのだろうか? どうしてシャルちゃんは不敵そうに笑っているのかな?

 その視線は同時に私に注がれて……。あ、すごく嫌な予感がする。


「ディーちゃんも着ようか! こういう鎧!」

 うわやっぱりそういう流れか!?

「いやいや、私はこれで……慣れ親しんだ装備だし、ね?」

「四人で揃えた方が統一感があってよろしいのではなくて? それに、ディティス様の防具はそろそろ新調した方がよろしいかと。だいぶ年季が入って見えますわよ?」

「それを言うなら、シーリーズさんとか、ロア君やアイちゃんだってそうじゃない?」

 よし。この反論なら、最悪全員で新調コースか、うまく行けば全部ご破算になる!


「いや、俺たちは割とこまめに新調してたぞ?」

 ロア君の言葉に頷くアイちゃん。そしてシーリーズさん。


「え?」

 そして何も知らない私。


「俺たちは、ほら、去年の内にかなり背が伸びてたからよ、何回か替えてもらってたんだ。俺たちはセイル家から目をかけてもらってるから、その辺かなり融通してもらっててな?」

 頷くアイちゃん。


 ぐぬぬ……。

「シーリーズさんは?」

「儂は、命を預ける防具はできるだけ傷が無い方が好きじゃし、武器はこれじゃから、あまり金をかけんで良いのでな、その分、防具には結構気を使っとったんじゃ。これも一月前に新調したものじゃしの」

「みんな、おんなじデザインじゃん!?」

「そりゃ、同じ方がクセとか変わらんしの」

 頷くロア君とアイちゃん。味方が……味方がいない……。

 こうなれば、一縷の希望を抱いてクガルーアさんを見……やめよう。

 そもそも体型が変わった人が鎧変えてないわけがないのである。


「おい、なんで俺を見ようとしてがっかりした顔してるんだお前は。王子だぞ、俺は?」

「クガルーアは、体型が変わっているので、鎧も変えているし、自分の味方になるわけがないと気づいたのでしょうね。(ちな)みにですが、私も、先月騎士団全体の装備新調の機会に変えてますよ、ディティスさん」

「追い討ちをありがとうございます、シウスさん……」


 意外と、みんな防具は新しいのが好きで、私みたいに一つに愛着を持っている人のが少ないのか……。いや、ロア君とアイちゃんは成長があったから仕方ないんだけども。それはそれとして、命を預けるものだから、万全を期すという意味で、理屈としては分かるけど……。


 まぁ、私も、あの(ドレス)は見た目可愛いと思うし?

 シャルちゃんたちとお揃いっていうのは、心惹かれるけど、一年連れ添ってきて、まだ着られるこれを捨てるのは抵抗がある。

 あと何より……。


「そんな可愛いの、私には似合わないって……あ……」

 やば……つい声に……。俯いてたのに……。


「本音が出ましたわね、ディティス様。相変わらず、ご自分の容姿を過小評価し過ぎです! アイと一緒!」

「わ、私に飛び火!?」

「いいですか? シャルティ様とシェリーさんがずば抜けているので、そのお気持ちは(わたくし)にも痛いほど良く分かりますが、ディティス様も、世間的に見れば、充分過ぎるほど容姿端麗であるという自覚を持って下さいな! あとアイも!」

「ま、また私も!?」

「ですから、着替えますわよ! (わたくし)も一緒に着ますから!」

「私も選ぶの手伝うね、ユニエラさん」

「ええ、シャルティ様。完璧なコーディネートをして差し上げましょう! 行きますわよ、シェリーさん!」

「はい! ユニエラさん、シャルティ先輩!」


 そこにはもう、私の意思は介在していないようだった。完全に私も着る流れになっていた。

 フフ……すでに抵抗は無意味、ということだね。

 であるならば、女ディティス、やることは決まっている。


「ええい! こうなれば、なるようになれだ! 着せ替え人形にだって、なんだって、なってやりますよ!」


 と、私はいっそ開き直ることにしたのだった。長い物には時には巻かれるのも有り主義なのです、私。

 私の宣言に対しての短い拍手の後、シャルちゃんたちと手を繋いだ。あれれ、ちょっと力が強くない? 大丈夫。逃げないから。私、嘘つかない。


「せめて「馬子にも衣装だ」くらいは言わせてくれよ〜」


 歩き始めた私の背中に、ロア君の軽口が刺さる。

 この野郎。本人分かっててあえて言ってるんだろうけど、心の中であえて突っ込ませてもらうよ、ロア君。

(それ、褒め言葉じゃないんだけど!?)

 その直後、ロア君の、嘔吐でもしそうな呻き声が聞こえて来た。グッジョブ、アイちゃん! と、私は、親指を立てて部屋を出た。



 そして、宣言通り、着せ替え人形に徹した私と、この際にと、一緒に鎧を選んだユニエラちゃんのお召し替えも完了した。


 ユニエラちゃんは、変わらず桃色の鎧。スカートは、大きな布生地を重ねて、まるでチューリップの花を逆さにしたようなシルエット。クルリと回ってスカートが広がると、今度は桜のように見える可変型って感じだ。

 うん。とてもユニエラちゃんらしい、華やかな(ドレス)だ。


 そして私はというと……ノースリーブは元からだから良いとして、シャルちゃんのと同じように、背中がバックリ開いている。そこまでお揃いにしてとは言ってない! 首を通す穴だけで上半身の生地の全てが支えられてるんじゃないのこれ?

 いや、それよりもさ、シャルちゃんは肩や腕の生地あったからさ、なんか露出は正面からじゃ分からない範囲くらいまで抑えてたけど、私のこれ、後ろから見たら、胸から上、何も着て無く見えないかな?

 あとね。前の鎧のときは、ノースリーブでも、下に袖のある鎖帷子着てたのね。だから素肌って感じじゃなかったの。

 それがね、私今これ素肌! 脇の下とか、胸と脇の境界線とか丸見えになってるんだけど!?

 鎧の生地の裏に鎖帷子も縫い付けてるから、別々に着る必要ありませんよって説明受けて、「着替え楽になるんだ、わーい!」じゃないんだ、十分前の呑気な私!


 スカートは、前が短くて後ろが長い、前後の丈がアシンメトリーで、飛んだり跳ねたりしたら下着が見えそうだったから、レギンスを断固所望したのだけど、シャルちゃんの、「着せ替え人形になるって言ったよね?」という笑顔の前には無力だった。

 交換条件に、スカートの前側の丈と同程度のスパッツを履くことを許す代わりに、タイツ状の鎖帷子とガーターベルトの着用を要求された。下着が見えるくらいならと、私はその条件を飲むしかなかった……。


 (ちな)みに、鎧の基本色は藍色で、アクセントに金とか赤とか白が入ってる。私には似つかわしくない、高級感が漂う落ち着いた雰囲気の装いだ。……背中と脇が大胆に開き、足もタイツとガーターベルトという、セクシー大爆発なところを除けばね!


「ね、ねえ、これ、本当に似合ってる? 変じゃない? あと、色々と見えすぎじゃない?」

「似合いすぎて今すぐ襲いたいくらい可愛いよ、ディーちゃん」

「目が笑ってないんだけど、シャルちゃん……。冗談だよね?」

「いいえ。(わたくし)たちの目に狂いはございませんわ、ディティス様。とても良くお似合いです。今すぐこの場で脚甲にキスをしてもよろしいでしょうか? あと、ベッドはどこでしょう?」

「うん、ユニエラちゃんも正気に戻ろうか?」

「お二人とも、気に入って頂けたようで何よりです。(ワタクシ)も、選ぶ手に力を入れた甲斐があったというものですわ!」

「あー。私が気に入ったかどうかは、ヒアリングポイントじゃない感じなんだね。分かった」

 私が文句を言う資格は当然無かったのだった。


 本当に、私には可愛すぎるし、綺麗すぎる新装備で困る……。

 何より悔しいのが、今まで着ていた装備よりも動きやすくて、要所要所の防御力はむしろ上がっているという性能だった。

 弾倉(マガジン)の収納問題も、タイツがホルダーにもなっていて、両足で合わせて、太腿の部分で四本掛けられるように出来ていた。手が届きやすいし、なかなかに憎い仕様じゃないのよ……。


 性能と美しさを両立させるというコンセプト通りとは恐れ入るよ、ホント……。

 性能的にも文句を言う隙が無いのかと、私は歯噛みするしかなかった。



 さて、なんだか、始まる前から少し疲れちゃったけど、私たちの本番はこれからなんだよね。

 気を取り直した私たち――もとい、私は、みんなと控室に戻った。



「馬子にも衣装じゃん、やったな!」

 戻った控室で、私を見たロア君、開口一番であった。


 ええ……本当に言ったよ、この男。こんなことまで有言実行とは、もういっそ尊敬まであるよ、私。

 ロア君の呻き声を聞きながら、私はそう思った。

装備更新イベントは定番ですよね。まさか最終章に入ってからするとは自分でも遅すぎてびっくりですが。


あと、結構前に書きましたが、この世界で最も多く流通している鎖帷子は、ピッチリ黒インナーです!

なぜって? 私が黒ピチインナーが好きだからです。

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