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シア薬剤店  作者: レレナ
第2章
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閑話 ょぅし゛ょ -セリ視点 3-

この話はシアに出会うまでのセリ視点の話です。

 がさがさと、下草をかき分けながら、すごく大きないのししが歩いています。


 遠くからいのししが歩いて来たのに気が付いた私は、慌てて走ると、近くの大きな木に登りました。


 間一髪です。

 私は木登りが得意だから助かりました。

 大きないのししには気が付かれなかったようです。

 大きないのししは、ぶきーって声を上げると、のしのしと歩いて来ます。

 私のすぐ下です。

 すごく大きないのししです。

 すごく怖いです。

 あんな大きないのししにかかったら、私なんてぺちゃんこです。


 いのししはもう一度ぶきーって鳴くと止まりました。


 どうしましょう。

 私のすぐ下です。

 気が付かれたのかもしれません。

 いのししは私がいる木の上までは届かないし、木登りも出来ないけど、安全じゃありません。

 あんな大きな身体で私のいる木にどしんってされたら私なんか振動で落ちちゃいます。

 落ちなかったとしても、木の幹が折れちゃいます。


 怖いです。


 木の上でじっとしていると、大きないのししの後ろからさらに2匹のいのししがやって来ました。

 大きないのししの子供でしょうか?

 最初のいのししと比べて小さいけど、それでも私よりもずっと大きいです。

 いのししなんて猟師の人達が数人がかりでやっつけるような大物です。

 私なんかじゃどうしようもありません。


 どっか行っちゃえ!


 そう思いながら、しばらく木の上でじっとしていたらいのしし達はふごふご言いながらどこかに行っちゃいました。


 一安心です。


 いのししがずっと遠くに行って見えなくなってから、私は木の上から降りました。


 お母さんとお父さんが心配です。

 お母さんとお父さんはどうなったのでしょうか?

 ビンと一緒にいたお父さんはどうなったのでしょうか?

 背中に矢が刺さって、私に森に逃げなさいって言ったお母さんはどうなったのでしょうか?

 お母さんもお父さんも、森の中に逃げた私の所に来ません。

 盗賊はどうなったのでしょうか?


 森の中に逃げてきてからずいぶん時間が経っています。

 盗賊も、森の中には来ていません。

 もしかしたら盗賊も帰ったのかもしれません。


 大変です。

 盗賊が帰ったのに、お母さんとお父さんは、森に逃げた私が見付からなくて、探しているんだと思います。

 このままじゃ暗くなっちゃいます。

 お母さんとお父さんの所に帰らなくちゃいけません。


 ……………


 困りました。

 道が分かりません。

 私は今、どこにいるのでしょうか?


 怖い盗賊が来て、すごく怖い顔をしたお母さんに森に逃げるように言われて森に逃げ込みました。

 その時はとにかく一生懸命に走りました。

 いっぱいいっぱい走って疲れて、もう走れなくなるくらい走りました。

 疲れたので休んでいるといのししが来たので、また走ってその先に見付けた大きな木に登って、いのししから逃げ切りました。


 道が分からなくなってしまいました。


 何だか胸がきゅうってします。


 風が吹いて木々がざわざわする音が何だか怖いです。

 遠くの小鳥の声に交じって、ぎゃうぎゃうって何かの鳴き声が何だか怖いです。

 下草がかさかさ揺れるのが何だか怖いです。

 きつつきが木を叩く、だらららららって音が何だか怖いです。


 すごく怖いです。


 もう一度木の上に登ります。


 もしかしたらお母さんとお父さんが近くまで来ているかもしれません。

 迎えが来るまで待つ事にします。


 木の葉っぱがざわざわ。

 何かの動物がぎゃうぎゃう。

 草がかさかさ。

 きつつきがだらららららら。


 何だか怖い音がするけど、お母さんとお父さんを待ちます。


 木の葉っぱがざわざわ。

 何かの動物がぎゃうぎゃう。

 草がかさかさ。

 きつつきがだらららららら。


 ずいぶん経ちましたけど、お母さんとお父さんはまだ迎えに来ていません。

 大変です。

 もしかしたら、お母さんとお父さんは、私の居場所が分からなくて違うところを探しているのです。

 私の方からお母さんとお父さんの所に行かなくちゃいけません。


 木の葉っぱがざわざわ。

 何かの動物がぎゃうぎゃう。

 草がかさかさ。

 きつつきがだらららららら。


 怖い音は続いていましたけど、がまんです。

 お母さんとお父さんに会えない方が怖いです。


 私は勇気を振り絞って木の上から降りました。


 お母さんとお父さんの所に向かわなきゃいけません。

 お母さんとお父さんはきっとこっちの方です。


 わたしは今まで上っていた木から、ひときわ大きく張り出した枝の方に歩き出しました。


 どれくらい歩いたでしょうか?

 何か音がする度にすぐに近くの木に登り安全を確保します。

 大丈夫になると木から降りて、また歩きます。


 お母さんとお父さんにはまだ会えません。


 がさりと音がしました。


 私の目の前にいのししがいました。

 すごく大きないのししです。

 さっきのいのししです。


 私はすぐに走りました。


 その場で動けなくならなかった私を自分で褒めてあげたいです。


 いのししはぶきーって言いながら私を追いかけて来ました。


 私なんかよりいのししの方が断然足が速いです。

 このままではすぐに追いつかれてしまいます。


 すぐさま近くにあった大きな木に登りました。


 一生懸命登りました。

 私が、いのししが届かないくらいの高さの太い木の枝にたどり着いた時に、いのししは木の下に辿り着きました。

 いのししは私に届かないのがわかると、木の幹にどしんとしました。

 木がぐらぐらします。

 太い木の枝もぐわんぐわん揺れます。

 このままじゃ落ちちゃいます。


 私は一生懸命太い枝にしがみつきました。


 いのししは何度も、どしんどしんとしてきます。

 ぐわんぐわんと揺れる枝に私は一生懸命にしがみ続けました。


 すごく太い木の幹が折れちゃうんじゃないかってくらい、どしんどしんとされて、それでも一生懸命に枝にしがみ付いていると、いのししは諦めたのか帰って行きました。


 怖いです。


 涙がぽとぽとと落ちてきます。


 怖いです。

 上手く息が吸えません。


 ひっくひっくと息がこぼれます。


 もう、木の下には降りたくありません。


 怖いです。


 きっとまた、あのいのししに会っちゃいます。

 きっと、あのいのししはどこかの木の陰に隠れているんです。

 私が木の上から降りてくるのを待ち伏せているんです。


 私は木の上から降りられないまま、じっとしていました。

 色んな事があって疲れていたのでしょう、うとうととしてしまって、「あ」って思った時には地面に落ちていました。


 背中から落ちて、うまく息が吸えません。

 いのししが来る!

 そう思っても背中が痛くて、息も吸えなくて動けません。


 一生懸命動いて木の根元に辿り着きます。


 いのししが来ます。

 木の上に登らなくちゃいけません。

 でも、身体と手が震えてうまく幹を掴めません。

 もうだめです。

 いのししが来ます。


 涙が勝手にぽろぽろと落ちます。

 ひっくひっくと声が出ます。

 泣くのが止められません。


 何かが聞こえました。

 鳥の鳴き声や木の葉っぱがこすれる音じゃありません。

 きっと、いのししです!


 もうだめです。

 木の幹のしがみ付いたまま、ついに大きな声で泣き出してしまいました。


「大丈夫ー?」


 がさがさと音を立ててやって来たのは人間の女の人でした。


 いのししかと思っていたところに人間の女の人なのでびっくりして、思わず泣くのが止まっちゃいました。


 こんな森の中に人間の女の人です。

 しかも大人じゃありません。

 私よりおねえちゃんだけど、大人じゃありません。

 猟師にも見えません。


 盗賊。


 お母さん、お父さん。そして私を襲った盗賊が思い浮かびました。

 盗賊の人でしょうか?


 でも、盗賊には見えません。

 大人じゃないし、弓矢とか剣も持っていません。

 盗賊……ではないのでしょうか?


「迷子? こっちにおいで」


 人間の女の人は私に呼びかけて来ました。

 私は少し迷いましたけど、その人間の女の人の所に向かう事にしました。

 いのししが怖いです。

 またいつ来るかわかりません。

 早くここから逃げたいです。

 お母さんとお父さんに会いたいです。


 人間の女の人が両手を広げました。


 私は、その人間の女の人の胸の中に飛び込みました。

読んできださった方。ブックマークしてくださっている方。評価してくださっている方。

ありがとうございます。


誤字・脱字の報告。感想等お待ちしております。


第25話、第28話、第29話、閑話セリ視点1、閑話セリ視点2に付いていたサブタイトルの『ょぅじ゛ょ』の部分を『ょぅし゛ょ』に修正いたしました。

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