第26話 ょぅし゛ょ -薬を作るという事-
体調を崩した為、前回投稿予定だった11/7から1回飛ばしましての投稿となりました。
読んでくださっている方、遅れて申し訳ございません。
「じゃあ、すぐにでも行ってくるよ」
そう言って、エミリさんは立ち上がった。フィオさんもそれに続く。
「あ、待って。依頼料はどれくらいになるんでしょう?」
薬草の採集依頼しか出した事の無いわたしは、人探し? の依頼の相場が分かんない。
指名依頼として冒険者協会に出した書類にも、エミリさんとフィオさんを指名しただけで依頼内容は『内容は口頭で説明』ってしか書いていない。当然報酬金額も記入していない。
「基本報酬だけでいいよ」
「だね。まあ……結果が分かってるから…」
「基本報酬…?」
聞き慣れない言葉に疑問が浮かぶ。
「えっとね、人探しみたいな依頼の場合、基本報酬って言うのがあって、まあ…手付金みたいなものかな? 探し人が見付かる見付からないにかかわらず固定の金額。で、無事見付け出して来たら成功報酬が発生するの」
わたしの疑問にエミリさんは上げた腰を再び下ろす。
フィオさんもそれにならい席に着く。
エミリさんの説明にふむふむと頷き、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「でも、それって依頼だけ受けて『見付かりませんでした』って事にしたら依頼料だけ取られるって事ですよね?」
別にエミリさん達がそうだとは言わないけど、そういう事もあるんじゃないかな?
「まあ、そういう冒険者も残念ながらいるな」
「うん。だから基本報酬は二束三文で実際に見付け出して連れ帰った時に成功報酬でそれなりの金額を払うのが普通だよ。遠くの場合は船とかの料金とかを必要経費として上乗せしてね」
疑うつもりは無いけど、エミリさん達を疑う様な形になって、気を悪くするかなと思ったけど、特に態度に変わりはなかった。
「それにね、無事じゃ無くても、遺体だけでもーーって人も結構いるよ? さっきのシアちゃんじゃないけど、本当に死んじゃってしまったのかの確認の為に依頼する人もいるし。成功報酬は依頼人のさじ加減ひとつだよ」
「今回は街道に沿って行けばすぐの場所だし、結果も予想が付く。荷はすべて奪われているだろうし、その子の両親もまず助かってはいないだろう。だから基本報酬だけでいいんだ」
「疑うような聞き方をしてごめんなさい」
わたしはエミリさんとフィオさんの二人に頭を下げた。
二人の態度から怒ってはいないけど、疑うような聞き方をしたのは確か。
こういう時はきちんと謝っておかないといらない誤解を招く。
こういうのが積み重なって最悪の結果になる。
「シアちゃんが冒険者協会をあまり利用してないのは分かってるし、利用する時は薬草採集だけだしね。知らないから聞いてきたんでしょ? 別にそんな事で怒らないよ」
そう言ってエミリさんが笑う。
どうやら冒険者協会の依頼掲示板を毎回見てわたしの依頼をチェックしていたみたい。
「それに、きちんと『そこ』に気が付いたのは、むしろ良い事だぞ?」
フィオさんもわたしを褒めてくれた。
なんだかすごく照れる。
「シアの薬は高品質だからな。こういう事で恩を売って薬を多く廻してもらいたいって打算もある」
フィオさんがニヤリと笑う。
恩を売るーーとか、打算ーーとか言っているけど、全然嫌味っぽくない。
そう感じるのは何でなのかな?
でも……『高品質』?
わたしの薬が?
別に高価な材料を使ってはいないーーと言うか、いたって普通。どの薬屋でも使っている材料しか使っていない。
「高品質……でしょうか? わたしの薬が?」
「うん? 高品質に作っているーーワケではなさそうだな? その態度だと」
「はぁ……」
フィオさんの言葉に、何の事か分からないわたしは相槌を打つしかない。
「私達冒険者は怪我をする事が多い」
フィオさんはそこまで言って言葉を止める。
うん。まあ、それはわかる。
冒険者じゃないし、魔物とかと戦った事の無いわたしでもそれくらいはわかる。
「国や街の兵士とは違って薬とかを支給されるわけじゃないから、消耗品は自分達で調達しなきゃいけない。その中でも武器防具に次いで医薬品は重要なんだ。薬の品質も作る人によってピンからキリで贔屓の薬屋を見付けるのも冒険者の実力のうちだ」
「はぁ……」
えーっと…よく分からない。
話の流れ的に、わたしの薬をエミリさんとフィオさんは気に入ってくれて贔屓の店にしたいって事……かな?
だからと言ってわたしの薬が高品質って事はないでしょう。
さっきも言ったように、どこにでもあるような薬草しか使ってないし。
「もしかしてシアちゃん気が付いていない? シアちゃんのお店、確かにあまり繁盛はしていないでしょうけど、買いに来てる人、私達以外だと大体同じ人が来てるでしょう?」
エミリさんの言葉に、最近のお客さんを思い浮かべると……確かに、5~6組の冒険者が何度も来ている。
もちろん見覚えの無い人も来ているけど、露店を始めた頃に比べて最近は同じ人達が来ている。
単にリピーターが増えて嬉しかったけど…
「冒険者にそれぞれ実力差があるように、鍛冶師や商人。もちろん薬屋にだってそれぞれ実力差はある。実力差で品質の上下が出るのは当たり前だが、わざと品質を落として低品質な物を売られる事もあるからな。そんな中でシアの薬は高品質を維持している」
「で…でも、わたしより効果の高い薬を売る人なんていっぱいいますよ?」
「そりゃあ、シアの売っている薬は最低ランクの物だから高ランクになればなるほど効果が高くなるのは当たり前さ。低ランクの薬としちゃシアの薬は高品質なんだよ」
「今、シアちゃんのお店によく来ている冒険者のグループの多くは、私達の知り合いなんだよ? シアちゃんの薬の事、知り合いに話したんだ」
どうやら、最近よく来ている冒険者達はエミリさん達の知り合いで、わたしのお店を紹介してその結果来てくれたみたい。
でも、それって結局、わたしの薬じゃなく、エミリさんの紹介だからって事だと思う。
「あ、シアちゃん今、私の紹介だからお客さんが増えたって思ったでしょう?」
わたしの考えがわかったのか、エミリさんが続けた。
「私達も、紹介した冒険者も初心者や低ランクの冒険者だけど、だからってそこまで馬鹿じゃないよ? いくら知り合いの冒険者からの紹介だって品質の良くない薬を何度も買わないよ?」
「ああ、付き合いとかで一度くらい買っても、品質が悪いと分かれば何度も買いに来ない。同程度の品質なら今まで買っていた所で買う。物が薬だ。何度も買いに来ているのなら…そういう事だ」
え?
つまりはあれ?
エミリさんとフィオさんが言うように、わたしの薬は確かに低ランクだけど、低ランクの薬という括りの中だけで言えば高品質だから何度も買いに来る人がいる……と。
やばい。口元がにまにましてしまう。
それってわたしの薬が認められているって事じゃない。
確かに、わたしは薬を適当に作った事は無い。
それは、わたしに薬作りを教えてくれたグリアおばあちゃんから教わった事をそのままやっているだけ。
ーーああ、そうか。
わたしは納得する。
グリアおばあちゃんは薬作りを一切適当にしていなかった。
そして、適当にするという事を一切わたしに教えなかった。
ま、これくらいでいいだろうーーという事をしていなかった。
薬草の粉引きが荒ければ、怒らずにただにこにこと何度も何度もやり直しをさせられた。
だからグリアおばあちゃんは、あんな高齢になっても色んな町や村にお客さんがいたんだ。
薬を作るという事はどういうことか。
それをグリアおばあちゃんは教えてくれていた。
誇りとか、意地とか、そういうことじゃない。
薬師としての『あたりまえ』を教えてくれていた。
わたしは、グリアおばあちゃんがどれだけすごい薬師だったか改めて分かった。
そして、どれだけ大きなモノを受け取っていたのか。
「じゃ、今度こそ出発するよ」
そう言ってエミリさんとフィオさんは席を立った。
わたしもそれにならって立ち上がる。
総合案内のコーナーでわたしの依頼を『捜索依頼』として、依頼料やその他いろいろエミリさん、フィオさんと決めた内容を正式に登録した。
基本報酬は銅貨50枚で1人頭25枚という計算。
「お願いします」
わたしは冒険者協会を出て行くエミリさん達にぺこりと頭を下げた。
評価してくださった方。ブックマークしてくださった方。読んでくださった方。
ありがとうございます。
今回は、他の作家様を参考に、改行パターンなど書き方を変えてみました。
読みやすくなった。逆に読みにくくなった。今まで通りで問題ない。等、ご意見ございましたら参考にさせていただきます。
次回の投稿は11/15(土)を予定しています。
状況により前後することもあります。




