第17話 新人冒険者 -違約金-
評価してくださった方。ブックマークしてくださった方。読んでくださった方。
ありがとうございます!
「***、ごめん、ごめん」
アレンさん達が冒険者協会に来たのは、もうすっかり太陽も登りきり、昼近くだった。とても早朝なんて時間じゃない。
「ダニガン****、******」
頭を掻きながら、申し訳なさそうにわたしに謝罪してくるアレンさん。
「おい、まてよ、***アレン*同じ**」
「エリー*、************?」
「ちょっと、わたしの*******?」
何やら言い争いを始めた。
ぷん、とアレンさん達全員からお酒の匂いがする。なるほど、昨夜、遅くまでお酒を飲んでいて寝坊したってところか。言い争いも、その事で罪の擦り付け合いってところかな?
アレンさん達は新人冒険者みたいで、新人ゆえに良い仕事を回してもらえず、今回のわたしの依頼も、わたしが同行する事で獲得できたみたいだし、嬉しくてハメを外したってところかな?
でも、それで寝坊してこんな時間に来たんじゃ、意味がない。
しかも一人が寝坊したんじゃなくて、全員が寝坊したって事はみんなで酒盛りしてたって事でしょ?
わたしが陽が昇る前からここで待っていたのに、その間、あなた達はぐーすか寝ていたわけなんだ? 少しでも生活費を節約する為にドリンクとかも頼まないでいて、いつ来るか分からないから食べ物の禁止の冒険者協会内で朝ごはんも抜いていたのに?
腹が立ってくる。
「ちょっと、遅くなっちゃった**、出発****」
アレンさんはわたしに出発を促した。
…はぁ?
わたしは、自然と半眼になるのが分かった。
ホタルクサは薬にする為には、朝に咲く花の部分を開花した状態で採取しなくちゃいけない。それは昨日のうちに言っていた。だから早朝に出発して昼前には現地に到着する様にしていたんだ。今から出発したんじゃ、到着するのはいつ? 夕方? 夜?
ーーはあ…
なるほど。
ため息を漏らしながら、わたしはアレンさん達が何故新人のままなのか、わかった気がした。
冒険者じゃないわたしでも、依頼の為に、何度か冒険者協会には来ているので冒険者の事は分かってきている。
確かに、新人という事でいい仕事は回してもらえない。だけど、それでも希に良い仕事を回してもらえるし、程度の低い依頼はむしろ良く回してもらえる。じゃなきゃ、いい仕事はともかく、程度の低い依頼まで回してもらえないんじゃ、冒険者のなり手が無くなるからだ。その辺を冒険者協会では調整しているみたい。
実際、わたしが何度か冒険者協会に出した依頼の全ては、新人や脱新人の冒険者達がこなしている。そして、わたしの様な簡単な依頼を2、3件こなせば新人から抜けられる。それすら出来ていないと言う事は…
アレンさん達ーー彼らの態度がその答えだ。
依頼前日、しかも早朝出発が分かっているのに、寝坊するほどお酒を飲み、朝どころか昼過ぎにのらりくらりとやって来る。そして「さあ、出発しよう」ときた。
呆れ果ててものが言えない。
今から出発して何をするの?
わたしがあなた達に依頼した物は何?
それはいつ、どこで手に入る物なの?
わたしはこの同行の為に、今日は露天を開けずにいるのよ?
今日稼げたはずのお金で黒パンが何個買えたのかしら?
「無理。ホタルクサ。朝だけ。失敗。依頼」
わたしはそう言うとソファから立ち上がった。
「は?」
アレンさんがきょとんとした顔になった。
「ちょ、ちょっと待って。依頼失敗って、****、*****?」
エリーさんがわたしに訪ねてくる。
は? 依頼失敗の理由すら分からないの? ホタルクサは朝に咲いた花を開花した状態で採取しなきゃいけないって昨日言ったよね? それで早朝に出発って事で納得したんだよね? 昨日のここでの話し合いは何だったのかな?
「行く。受付。違約金」
「い、違約金!?」
わたしの言葉に4人が同時に悲鳴じみた声を上げる。
新人って事であまり依頼をこなしているとは思えない。だから蓄えもあまり無いと思う。それに依頼失敗が度々発生すると、多分冒険者にはペナルティが発生するはずだ。彼らには酷だと思う。
でも、これは仕事だ。
ホタルクサを使った薬を頼まれていたわけじゃないからホタルクサが今回手に入らなくても、別段困るという事じゃない。でも、この同行の為に、わたしは一日の稼ぎが全く無かったわけだ。
おそらく、彼ら以外の冒険者に頼めば採取に同行する事も無く、露店を出しながら待ってるだけでホタルクサが手に入ったと思う。今回、わたしが同行する事にしたのは、彼らが新人で碌な依頼を回してもらてないから、薬草の知識が無いからーーそう、彼らに同情したからなのに。
彼らにはその辺を分かってもらわなくちゃいけない。
わたしは、彼らの悲鳴を聞き流し、受付に向かう。
「依頼。失敗。違約金。受け取る」
わたしの声に、受付の人が事務処理で下を向いていた顔をわたしに向ける。ちょうど受付は、朝に話した受付のお姉さんだった。
「あら…そう、*****来なかったのね…」
わたしが朝早くから冒険者協会でじっと待っていたのを、このお姉さんは分かっているんだろう。「大変だったわね…」といった感じでわたしに対応してくる。
「おい、おい。待って***、薬草採取***今から行けばいいだろ?」
アレンさんが、わたしと受付のお姉さんの会話に割り込んできた。
「あら、来た***」
昨日、担当してくれたのがこのお姉さんだ。アレンさんの事も覚えていたんだろう。
「依頼は、薬草採取だ。ちょっと遅く*****、今から行けば良い***。違約金***、******?」
アレンさんは受付のお姉さんに話しかける。
その言葉にお姉さんは、わたしの依頼内容を記入した書類を取り出してきて内容を確認する。
「依頼内容は薬草採取。******薬草はホタルクサ***。依頼期限は…うん。アレンさん。間違い無く依頼失敗です」
「*****?」
お姉さんの言葉にアレンさんはなおも食い下がる。
「ホタルクサを薬***使う******、必要***花****? ここにも**書いて****。ホタルクサの花は朝***咲かない******、今、出発*********、依頼失敗です」
「****知らなかったよ」
「昨日、話し*******、わたしは見て****? 実際、シアちゃんは朝から***待って******? あなた達、お酒匂い***。お酒の*****寝坊でしょう?」
お姉さんの言葉の中にわたしの名前が出ているから、わたしの肩を持ってくれてるんだと思う。すごく嬉しい。
「*****依頼失敗**。違約金が発生***」
「う…」
アレンさんが言葉に詰まる。
わたしはお姉さんに小さな紙切れを貰う。その紙には銅貨16枚と書かれていて、左側の報酬受け取り口を案内された。
違約金を貰うのは初めてだ。紙には銅貨16枚とあるから、最初に払った報酬の10枚、手数料の3枚。残りの3枚は慰謝料みたいなモノかな? それだげ返金されるみたい。
報酬受け取り口に着いたわたしは、さっき貰った紙を担当者に差し出す。カウンターが高いせいで背伸びしなきゃいけないのがキツイ。
受け取り口の担当者は目を丸くしてわたしと、違約金証書を見ていた。うん、そうだろう。わたしみたいなちっちゃい子が違約金を受け取りに来るなんて無いんだと思う。
多少挙動不審になりながらも、担当者は、わたしに銅貨16枚を返金してくれた。
違約金返金手続きも無事に終わった。わたしは帰ろうとしてさっきの中央受付を見るとアレンさん達はまだ受付のお姉さんに何かを言われていた。あの様子を見る限り、依頼失敗は今回だけじゃ無いんだと思う。随分絞られている。
さまあみろーー何ては思わないけど、いい気味だ。くらいには思う。今回の依頼失敗によって、今日受け取るはずだった薬草が手に入らない。同行も無為に終わったから今日稼げたはずの露天の売上も無い。今日のごはんが買えなくなるじゃない!
その日暮らしに近わたしにとって、たった数枚の銅貨が物凄い価値を持つ。
アレンさん達には、その辺をもっと分かってもらいたい。最悪、自分で獲物を捕って食べる事の出来る冒険者と違って、わたしみたいな底辺の薬屋には1日の稼ぎが物凄く重要だ。
何となくイライラした気分で冒険者協会を出た。
今日はもう家に帰るしかない。自分で薬草を採取するのも、この前したばかりだから控えた方がいいし。
ーーあ。
中央広場を出たあたりで足が止まる。
結局ホタルクサは無いのだから、依頼し直さなきゃいけない。イライラしていたから、そのまま冒険者協会から出て来てしまった。とは言っても、なんとなく、もう今日は戻る気になれない。
ーーはぁ。
ため息が出る。
明日にしよう。
次回の投稿は10/6(月)を予定しています。




