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シア薬剤店  作者: レレナ
第1章
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第11話 シアの日常 -夕-

 早目に露店を閉めた私は、薬草採取の為、そのまま街の外に向かった。


 露店の荷物は、そのままデイバックに入れて行く。このデイバックはこの異世界に来た時に持っていた物で、そのまま使い続けている。元の世界の時の様に小物のみを入れているわけではなく、露店で使うすり鉢とかの道具を入れて使用しているので、この1年ちょっとでかなりくたびれてしまっている。


 露店の荷物を持ったままの採集になるけど、薬草はたくさん取るわけじゃないから構わない。たくさん採って、また協会に目を付けられるのはヤだし。


 門をくぐって街の外に出る。


 門の兵士に会釈してそのまま問題無く通過。以前にも同じような時間に何度か通過しているので顔は覚えられたみたい。まあ、どっちにしろ、外から街の中にはいる時には旅券や身分証明書なんかを提示して調べられるけど、街の中から出る分には、基本、特に何かを言われるわけじゃないけど。


 街を出てから歩いて10分。街の外の森に到着した。


 街の中とは違って、外では魔物が生息している。あまり街から離れるのは危険なので街から一番近いこの森、しかも森の外周のみで実際に森の中には入らないこの場所が私のいつもの採集場所だ。薬草の種類も量も微々たるモノで、いっぱい採ろうとしたところでどの道採れない。


 もっと森の奥に分け入ればいい薬草がいっぱいあるらしいし、ほかの森に行けばさらにいっぱいあるらしいけど、一人で薬草を採りに来ているし、10歳程度のこの身体では森の奥は体力的に無理。


 薬草を採取する時や調合する時に、小指の長さ位の刃物を使う事があるくらいで、私は武器を使った事は無いし、持っても無い。何かあった時にはどうしようもない。基本、魔物は街や人里、街道とかには出ないらしい。私が来ているこの森も、街が近いから魔物はすごく少ないし街が見える森の外周にはまず出ない。だけど、絶対じゃ無いので森の中には入らない。


 それに武器ってのはすごく高い。ごく一般的…らしいショートソードだって結構な値段がするし、家庭用の包丁とかと違って、武器として作られているナイフは包丁より短くても、いい値段がする。無理。私には買えない。


 そんな訳もあって、わたしは森には入らずに外周部だけで薬草を採取する。


 ツルの部分が固い薬草とかには刃物を使う時があるけど、ここに生えている薬草は、みんな手で千切れるやわらかいモノばっかりなので、地面にしゃがみ込み、ぷちぷちと千切っていく。


 根っこが広範囲に拡がっている種類の薬草もあって、それは私じゃ引っこ抜けないので諦める。


 ぷち、ぷち、ぷち、ぷちーー


 あまり出ないとはいえ、魔物は怖いから、一応周りを注意しながら、刃物を使わず手で千切り採れる物だけを採取していく。


 両方の手の平で持てるだけの薬草を採って今日は終わり。たくさん採って怒られるのはもうこりごり。


 背中からデイバックを下ろし、ファスナーを開けて中に仕舞う。固くてかさばるすり鉢とかの道具は下の方にあるから薬草は上の方にふわりと置く。ファスナーを閉め、今日の薬草採取は終わり。


 魔物とかが出る事も無く、今日も無事に採集が終わり、私は街に向かった。


 街に到着し、門の兵士に通行証を見せる。いちいち面倒くさいし顔は覚えられているから問題は無いはずだけど、決まりなので文句は無い。言葉があまり通じないハンデもあるし、あとから問題になるのはヤだ。


 街を出たのはまだまだ明るい昼間だったけど、それなりの時間がたっていた様で、街の中に入ったのは夕方になっていた。危なかった。日が暮れると門は閉ざされ、朝まで開けてもらえない。街の中はそれなりだけど、それでも門が閉じた夜間、街の外は正直治安が良いとは言えない。小さな子供一人じゃ、なおさらだ。


 グリアお婆ちゃんが死んだ後、部屋を荒らされた事がフラッシュバックする。


 ぶるっと身体が震えた。


 魔物も怖いけど、正直、人間の方が怖い。まだ魔物は見た事無いけど、魔物は言葉も通じないらしく、初めから襲い掛かってくるからわかりやすい。でも、言葉があまり通じないと言っても多少は意思疎通する事が出来る人間でも、ああやって部屋を荒らすのだ。そっちの方がずっと怖い。その場にいなかったから助かったんだと思う。


 辺りは夕日で赤く染まり始めている。露店は大体みんなそろそろ閉め始めている。これからがかき入れ時なのは宿屋やそこの食堂。そして歓楽街だ。


 部屋を荒らされた事のフラッシュバックで、私はこのまま露店を行う気分ではなかったので、そのまま場末の安アパートに向かう。


 異世界に来て初めて、ああ、そう言われてみればそうだね。と納得できたのがこの、宿屋とアパートと言う区別。宿屋と言うのは、冒険者とか行商人、旅行者が短期間だけ借りるような所で、金額もそれなりにする。たとえ安宿だとしても。対してアパートは街に長期間滞在したり定住する場合に用いられる。アパートとかで月極とかの期間契約してしまった方が安く済むからだ。小説やゲームじゃ、宿屋としか表記されていなかったから、こっちに来てから納得した。


 私の借りているアパートはそんな中でも最も安い部類。当初は保護者もいない10歳くらいの子供一人。イタズラかと思われた様で、門前払いを食らったけど、数少ない言葉で何とか納得してもらい借りる事が出来た。


 部屋を荒らされた事が、自分でもかなり精神的にキツイ事が分かっている。安アパートはどこも部屋に鍵が無いのが普通だったけど、鍵がかかる部屋を探し、見付けたのがここ。代わりに部屋の内装とかは完全にあきらめた。私のこの部屋は客室を増やす為に、物置を開けただけの部屋。そもそもが客を迎える様な造りじゃなかった。後から壁に無理矢理のこぎりで穴を開けただけの窓に、他の客室ではもう使えそうもない脚のゆがんだ小さなベット。クローゼットやスツール類は無い。テーブルも椅子もランプも無い。それだけの部屋。掃除はしていたようだけど、埃っぽさが取れ切れていない。その分安かったので、私はここに決めた。


 部屋に戻った私は、しっかりと扉に内側から鍵をかけ、荷物をベットの下に押し込む。今はまだ夕日があるからいいけど、ランプも買っていないから日が暮れれば真っ暗になる。


 ベットに腰掛ける。さっきのフラッシュバックがまだ、私の中でもやもや、じくじくとしている。


 はぁ、とため息が出る。


 テンションが最悪だ。


 日が落ちれば真っ暗で何も出来無くなる。私は薄い毛布を頭からかぶり、ベットの上で丸まる。


 明日には、この最悪なテンションも戻っているといいなぁ…

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