昇り龍
⚪︎雪墨鈴々莉視点
「菊ちゃん、すごーいっ! めっちゃやるじゃん!」
私は嬉しさのあまり、助手席に座る菊ちゃんにガバッと勢いよく抱きつく。本人は「天狗たちを何とか抑え込む立場だった」なんて謙遜していたけれど、肝心の守り石が壊れている状態なのにこれだけの迎撃ができるなんて凄すぎる。もしあの守り石が無事で全盛期の状態だったら、どれだけとんでもない実力だったんだろう。
「す、鈴々莉さん……ちょっと苦しいですっ! それに、迎撃の集中力が乱れちゃいますから……!」
「あ、ごめんごめん! ちょっと興奮しすぎちゃった!」
私は慌てて菊ちゃんからパッと体を離す。よし、これだけ菊ちゃんが頑張ってくれているんだから、私だって負けてられないよね!
私はすぐに愛用の筆を取り出し、車内の限られたスペースで勢いよく宙に絵を描き始める。今描き上げているのは、天を駆ける「竜」の絵だ。獰猛な表情や雄々しい姿はもちろん、一枚一枚の鱗や繊細な髭に至るまで、細部まで徹底して描き込んでいく。私の使う雪墨の術は、絵の描き込みが細かければ細かいほど、発動した時の実体化と威力が跳ね上がるのだ。
「ほう……中々気合が入っているな。見事な線だ、いい絵だな」
ふと隣から覗き込んだ十一が、感心したような声を漏らす。十一は表現や創作の道に厳しい男だし、他人の絵の出来栄えに関してでお世辞を言うような男じゃない。そんな彼が素直に褒めてくれるということは、今の私の絵が本当に最高の出来栄えだということの証拠だ。
「でしょーっ! これだけの傑作なんだから、あんな奴らなんて一網打尽にして吹き飛ばしてやるんだから!」
珍しく十一に褒められたことで、私のモチベーションは最高潮にまで高まり、さらに筆に気合が入るのだった。




