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(株)幽玄堂出版社の副業DAYS ~あなたの未練、私たちが叶えます。成仏エネルギーも回収します~  作者: 三海 古風


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営業担当 司涼

「ただいま戻りました」


 三人で話していると、ガラガラと扉を開けて一人の男性が入ってきた。

 七三分け気味にきっちりと整えられた髪に、知性的な雰囲気を漂わせるメガネ。着古されてはいるものの綺麗に手入れされたスーツを隙なく着こなしている。どこか優しげで、真面目さを絵に描いたような青年だ。


「お、涼お帰り~! 今日なぁ、新人くんがバイトで入ってくれてん。ちょうどみんなで話してたとこやで」


「ああ、ジョーさんが募集をかけていたアルバイトの方ですか?」


 涼さんと呼ばれた男性は納得したように頷くと、内ポケットからスッと名刺入れを取り出し、一枚の名刺を差し出してきた。俺は慌ててお辞儀をしながらそれを受け取る。


「僕は司(つかさ) 涼(りょう)と言います。主に営業を担当しています。よろしくお願いしますね」


 涼さんは深々と丁寧にお辞儀をした。あまりの礼儀正しさに引っ張られて、俺も思わず背筋を伸ばしてお辞儀を返す。どこまでも丁寧な人だな。


「俺、いや自分……私、矢木剛斗と申します! よろしくお願いしますっ!」


「ふふ、そんなに恐縮しなくても大丈夫ですよ。敬語で話すのは僕のただの性分ですから、楽にしてくださいね」


 涼さんは手を頭の後ろに回し、困ったように穏やかな笑みを浮かべた。


「涼さんはうちの会社で一番の常識人なんだよ。何か分からないことがあったら、涼さんに相談するといいよ」


 鳥居の信頼が半端じゃない。まあ、ここまでに紹介された怪しすぎるメンツを見ていれば、その気持ちは痛いほどよく分かる。この人がオアシスに見える。


「僕で分かることなら何でも聞いてくださいね」


 本当にいい人なんだな、と俺が感動していると、鳥居が不意に思い出したように付け加えた。


「ただね……涼さんは昼間はこんなに穏やかだけど、夜になると凄いんだよ!」


「ちょ、小夜さん!? 言い方!!」


「そうそう~、昼は大人しいサラリーマンやのに、夜になったらぐいぐい攻めてくるんやで~?」


 琴さんが自分の身体を抱きしめるようにして、くねくねと怪しげな動きをする。


「だから言い方!! 変な誤解を生むような表現はやめてください!」


 涼さんが顔を真っ赤にして慌てふためいている。


「ああ、なるほど! 夜の心霊現象の取材とかに行くと、凄腕を発揮するってことですね! 頭も良さそうですし!」


「そうそう! 本当に頼りになるんだよ」


 俺の解釈に、鳥居がまるで自分のことのように誇らしげに頷いた。


「なんや……ふたりとも純粋すぎるお子様やったか……」


「ハァ……とりあえず自分の名誉が守られてホッとしました……」


 不満そうにつまらなさそうな顔をする琴さんと、胸を撫で下ろして心底安堵のため息を漏らす涼さん。俺と鳥居が「夜の現場って大変そうだもんな」なんて話しているのを、二人は少し離れたところから微笑ましそうに眺めていた。


「けど……小夜ちゃんにも同年代の話せる友達ができて良かったわ。この会社、個性が強すぎるやつばっかりで気苦労も多かったやろうし」


「琴さん、自分がその個性的の筆頭だって自覚はあります?」


「もちろん!」


 悪びれもせず胸を張って笑う琴さんに、涼さんは「やっぱり自覚はあるんですね……」と頭を抱えるのだった。

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