取材記者 宮板琴
「とりあえず内勤のメンバーはこの人たち。あとは取材記者と営業の二人がいるんだけど、今日は外に出てるみたい」
「へえ……いやぁ、なかなか個性的なメンツだな」
「あはは……みんないい人なんだけどね」
鳥居はどこか遠い目をして苦笑いを浮かべた。
「はーい! 琴ちゃん今帰ったでー!」
その時、勢いよく扉が開き、廊下に甲高い関西弁が響き渡った。
入ってきたのは、すらりと背が高くスタイルのいい女性だ。ショートカットの茶髪に、いつもニコニコと笑っているような綺麗な糸目が特徴的。カジュアルなジャケットをスタイリッシュに着こなしていて、いかにも仕事の出来るお姉さんといった雰囲気を漂わせている。
その女性――琴さんは、立ち尽くす俺と鳥居の姿を交互に見つめると、糸目をさらに細めてパッと顔を輝かせた。
「あ、ちょうどよかった! 琴さ――」
「小夜ちゃん、良かったやん〜っ!」
「ふぐっ!?」
鳥居の言葉を途中で遮り、琴さんは猛烈な勢いで鳥居に抱きついた。
「小夜ちゃん真面目でいい子なんやけど、うちの仕事に集中しすぎて『高校生らしい青春送れてるんかなぁ』ってずっと心配しててん! ちゃんと彼氏とか作ってるやんか〜!」
「ち、ちが――」
真っ赤になって慌てて否定しようとする鳥居だったが、琴さんの怒涛のマシンガントークは容赦なく鳥居の言葉を撃ち抜いていく。
「君が彼氏くんか! へえ、なかなかかっこええやん! 小夜ちゃんも堅物に見えて、意外と面食いやったんやねぇ」
「え、俺!?」
思わぬ巻き込まれ方に驚いて自分を指差すと、琴さんにバシバシと力強く肩を叩かれた。
「小夜ちゃん、真面目なんはええんやけど、箱入り娘なところあって意外と世間知らずやからな。割と天然なところもあるし。彼氏くん、よろしく頼むで!」
「な、ちょっと……っ!?」
勢いに押されっぱなしの鳥居の顔が、耳の先まで真っ赤に染まっていく。
「いやー、お姉さんめっちゃ嬉しいわ! よっしゃ、今夜は彼氏くんの歓迎会兼ねて宴会やね!」
「ち・が・い・ま・す!!」
ついに耐えかねた鳥居が、琴さんの言葉を遮るように一文字ずつ力を込めて叫んだ。
「今度アルバイトで入った矢木くんです!! 彼氏じゃありませんっ!!」
琴さんは一瞬だけポカンと糸目を丸くした。
「なんや……それなら早く言ってーなー」
一転して、心底つまらなさそうに残念そうな顔をする。
「うちは宮板 琴や。幽玄堂の取材担当。よろしくな、矢木くん!」
「あ、矢木剛斗です! よろしくお願いします!」
琴さんが勢いよく右手を差し出してきたので、圧倒されたまま握手に応じると、上下にぶんぶんと激しく振られた。
「まあでも、君もラッキーやで? うちの会社、見事に美人揃いやろ? こんな美女たちに囲まれて働くなんて、男冥利に尽きるんちゃう?」
そう言って、琴さんは糸目をキュッと細めて笑いながら、モデルみたいに艶めかしいセクシーポーズを決めてみせた。抜群のスタイルも相まって、めちゃくちゃ様になっている。
確かに、お世辞抜きでこの会社の女性陣は全員モデル並みに美人ばかりだ。
「いやあ、本当に皆さん美人ばかりでドキドキしますよ」
俺が素直に正直な感想を口にすると、隣からジトっとした視線が刺さった。
「はいはい。琴さんも、映子さんも、鈴々莉さんも、み〜んな美人ですよ。どうせ私は幼児体型ですよ……」
鳥居がどこか拗ねたように、ボソッと小さく呟く。
「いやいや、鳥居も十分美人だろーが」
「……っ!?」
思いついたまま口に出すと、鳥居は一瞬で顔を真っ赤にして、明後日の方向へ勢いよくそっぽを向いてしまった。
……あれ? 俺、また何かヘンなこと言ったか?
「ふふ〜ん? にいちゃん、やるやん……」
隣で琴さんが、狐みたいな糸目をニヨニヨと深めながら俺の肘をついてくるのだった。




