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(株)幽玄堂出版社の副業DAYS ~あなたの未練、私たちが叶えます。成仏エネルギーも回収します~  作者: 三海 古風


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間一髪の隠蔽工作

⚪︎八十八十一視点

「遅いっ!! 一体ジョーは何をやってやがるんだ……!」


 俺は苛立ちに任せて毒づく。烏天狗たちの攻撃は主に前を走る矢木へと集中しているため、俺はその隙をついて純粋に攻撃へと専念できていた。討伐スピードも普段よりずっと速い。だが、あまりもたもたしていると一般人が音を聞きつけて集まってきてしまう。


「どりゃああっ!!」


 矢木は大声で気合を入れながら、襲い来る攻撃を必死に回避している。気持ちは分からなくもないが、戦場でそんなに大声で叫ぶものじゃない。これは後できっちり注意しておかねばならないな。

 とは言え、矢木の成長速度には目を見張るものがある。武器を両刃の西洋剣に固定させ、敵の強烈な攻撃を受け止められるように盾を持たせた。打ち込みをやらせても、俺の繰り出す厳しい攻撃を回避させても、筋が良いのですぐに自分のものにしてしまう。おそらく霊力的な素養を抜きにすれば、これほど動ける若手は『八十八(やそはち)』の一門の中にもそうはいないはずだ。


 もっとも、本人にそんなことを言って調子に乗られては困るから、絶対に口には出さないが。


 そんなことを考えていると、ようやく社屋の入り口からジョーが飛び出してきた。


「おいっ、ジョー!! 隠蔽の霧はまだなのか!? 下手をすれば警察でも呼ばれる大騒ぎになるぞっ!」


 俺は手元の鎌を激しく振り回しながら怒鳴りつける。おおかた、どこにしまったか忘れて社内を探し回っていたのだろう。ジョーも、そして日影も、日常生活に関してはどうしようもなくズボラで、細かいことに気が回らない。日影にしても仕事の時はあんなに真面目で細部まで気が利くというのに、なぜそれが普段の生活に全く活かされないのか、まったく呆れてしまう。いくら会社が日常的に戦闘の場になるわけではないとはいえ、いざという時にこれでは気が緩みすぎている。


「説教は後だ……っ!」


 逃げるように車へと駆け寄ると、ジョーはトランクを乱暴に開き、中から小さなカンテラを取り出す。その中身は炎ではない。薄く立ち込めた霧が充満している。

 それを置きカンテラを灯す様に火を入れると、そこから瞬く間に白々とした濃い霧がもうもうと立ち昇り始める。それは周囲一帯をすっぽりと包み込む濃霧でありながら、不思議とこちらの視界を遮ることはなく、襲い来る敵の姿だけはハッキリと捉えることができる。相変わらずどういう呪術的理論で成り立っているのかは分からんが、実に便利な代物だ。

 ふと、霧の外側を見ると、何事かとガヤガヤと人が集まってくる足音やざわめきが聞こえてきた。


「ふぅ……、間一髪ってところか」


 額の汗を拭いながら、ジョーはその場にへたり込むように安心しきって座り込む。


「くつろいでる場合じゃないだろが、さっさと手伝え!!」


 俺はすかさず容赦のない喝を入れる。


「編集長使いが、荒すぎないか……?」


「……自業自得だな」


一言で切り捨てるのだった。


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