地下室の大捜索とワーストコンビ
⚪︎ジョー視点
「無い!! 無い!! 無い!! まずいぞ映子、急げっ!」
「わかってますって……!」
俺と映子の二人は、オカルト出版社の地下にある散らかったラボへと駆け下りると、棚や道具箱をひっくり返して必死に探し物を始めた。
不穏な気配と戦闘の予感を察知し、俺と映子はある物を取りに地下へと降りたのだ。
ある物とは、特殊な霧を発生させる装置である。その霧は特殊な霊力で満たされており、戦闘用ではないが、重要な役割を持っている。その霧に包まれた空間や現象は、霊感のない一般人には一切見えなくなり、音すらも完全に遮断されるのだ。
うちの連中の戦闘は、どういうわけか派手なものが多すぎる。小夜は空を飛んで式神を操るし、鈴々莉は墨の図形を空中に飛ばして戦うし、涼はあろうことか骸骨の軍団なんかを召喚したりする。先日のような人目のない廃病院ならまだしも、こんな一般の街中で派手にやらかしたら、どうなるかなんて火を見るより明らかだった。
「映子!! お前はどう見ても有能な秘書キャラだろうが! なんで肝心の整理整頓がそんなにダメなんだよ!?」
「それはお互い様じゃないですか! ジョーさんだって普段は気だるそうなのに、いざという時に頼れるインテリ系みたいな抜群のキャラ付けがあってもいいじゃないですか!」
二人はガラクタを漁りながら、どうでもいい口論を繰り広げる。
そう、何を隠そう、俺と映子はこの『幽玄堂』における生活力ランキングで、堂々のワースト1位と2位を争うコンビなのだ。
毎日の食事は基本的にカップラーメンが主食。おまけに整理整頓も致命的に苦手で、掃除なんてした記憶すらない。そんな暇があるなら、新しい呪具の研究やオカルトの解析に時間を使いたいというのが共通の言い分だった。
「ちょっと、お二人さん! 地下室で一体何をやっとるんですか!」
階段をドタドタと降りてくる足音が響いたかと思うと、琴が大きな声を張り上げてやって来た。おそらく、周辺に霧が一向に発生しないのを不審に思って、確認しに降りて来たのだろう。
その傍らには、見慣れない和風の着物を着た少女が、おろおろと不安そうに佇んでいる。
「霧を発生させる機械が無いんだよ!! 琴も手伝えっ!」
少女の正体について気にかかる余裕すら、今の俺たちにはなかった。
「だから普段からちゃんと整理整頓しとけって言うたやろ!」
琴が呆れたように頭を抱えて怒鳴る。
「琴ちゃん、ごめん……! いつか片付けなきゃって頭では思ってて、つい後回しにしちゃってさぁ……」
映子が泣きそうになりながらも、必死に手を動かしてガラクタをかき分けていく。
琴は深い溜息をつき、やれやれといった表情を浮かべた。
「もしかして、社内にないなら車のトランクに積みっぱなしになってるとかはないの?」
その慧眼な一言に、俺と映子はハッとして顔を見合わせる。
「それだ……!」
「さすが琴ちゃん、目の付け所が違うわ! えーと、車の鍵は……っと」
ちなみに、琴の生活力は幽玄堂の中でもかなり常識的な方だ。もっとも、琴の言い分によれば「私の家事能力が人並みにあるって言われる時点で、この会社がおかしいんよ。肉をただ炒めただけで『料理ができる』とか言えるレベルじゃないからね」とのことだった。
「ほら、無くさんといてな」
琴はポケットからキーホルダーを取り出すと、ひょいと俺に放りよこす。
俺はそれを手際よくキャッチすると、霧の装置を取り出すために社用車へと走り出すのだった。




