来客
⚪︎宮板琴視点
「すまんすまん、悪かったって」
私は両手を合わせて拝む真似をしながら、面白がるように謝る。
小夜ちゃんはぷいっと頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。少しからかい過ぎてしまったやろか。
「けどな、日頃は退魔の仕事ばっかりで全然そういうことに興味がなかった小夜ちゃんが、ちゃんと青春してるみたいで、お姉ちゃんは嬉しいんやで」
私は少し声を和らげ、しみじみとしたトーンで言葉を続ける。だけど、これは本心や。いつも学校が終わると一目散にうちの会社へやって来て、友達と遊びに行ったなんて話は一度も聞いたことがない。ましてや、年頃の女の子らしい色恋の話題なんて一切なかったんやから。
「小夜ちゃんにもちゃんと年頃の感情があって、ほんまに安心したわ〜。これでも心配してたんやで」
「琴さん……っ」
私の言葉にしみじみとした実感がこもっていたのか、小夜ちゃんの尖っていた態度が少しだけ和らぎ、こちらをじっと見上げてくる。
――チョロい、チョロすぎやで小夜ちゃん。
私は内心で盛大にほくそ笑むのだった。
「あの、すみません。ここは『幽玄堂』さんであってますでしょうか?」
そんな和やかな空気を断ち切るように、ふと控えめな声がかけられた。
声のした方を振り返ると、そこには一人の少女が佇んでいた。年の頃は小夜ちゃんと同じくらい、高校生くらいやろうか。化粧気は一切ないけれど、ハッとするほど整った顔立ちの、和風な美人さんだ。身にまとっているのは清楚な着物姿で、腰まで届くまっすぐなロングヘアが日本人形を思わせる。
「ええ、幽玄堂であってますよ。何かご用ですか?」
私がそう答えると、少女はふうっと小さく息をつき、ホッと胸を撫で下ろした。
だが、その隣で小夜ちゃんは一瞬にして全身をこわばらせ、鋭い警戒心を剥き出しにしている。流石は退魔師、いざという時の切り替えの速さは見事なものや。
……けどな、小夜ちゃん。相手が誰であれ、もしかしたら大事なお客さん、つまり依頼者かもしれないんやから、初対面から露骨に警戒心を露わにするのはいかんでしょう。その辺りは、まだまだ若いなあと感じさせられる。
「ここが、その……幽霊の願い事を聞いてくれると噂で聞いて、伺いました」
そう言うと、少女は深々と頭を下げるのだった。




