男性陣の恋愛事情
⚪︎ジョー視点
「……そこら辺の苦労は、よくわかりますよ」
涼も今日は内勤のようで、デスクの書類から顔を上げ、低いトーンで小夜と鈴々莉に同意した。
「ネクロマンサーの家系は希少で独特ですからね。ここは日本ですし、同業の人からも敬遠されることが多くて……」
そう言って、ハァと肩を落とす涼。
「涼も大変だな。その点、俺のエクソシスト系は日本では少ないが、世界規模で見れば最多だからな。家名に拘らなくてもいい」
「羨ましい限りです」
「知り合いを紹介してもいいが……エクソシストの女性はシスターが多いからなぁ」
「お気遣いありがとうございます」
俺はうなだれる涼の肩にポンと手を置き、軽く励ました。知り合いを紹介しようにも、教会系とネクロマンサーは圧倒的に相性が悪い。死霊を扱う者は、神に仕える職から見れば『生命への冒涜』に映るらしい。俺個人としては大して気にしちゃいないんだがな。
「あぁ〜っ、暑っ!!」
その時、バタンと勢いよく扉が開き、汗だくで疲労困憊の矢木が飛び込んできた。そのすぐ後ろから、平然とした顔で汗一つかいていない袴姿の十一が続いて入ってくる。
「十一さん、厳しすぎっすよ……!」
「お前は無駄な動きが多すぎるんだ」
見れば、十一が矢木を鍛え上げていたらしい。矢木の持つ『怪異に狙われやすい体質』は非常に危険だ。俺たちが守るにしても、自分の身を守る最低限の力くらいはつけてもらわなければ困る。
「二人ともお疲れさん。ちょうど今、家系の話をしてたんだよ。十一のところも大変だろ。結婚相手とかどうするんだ?」
八十八家も、古くから伝わる退魔士の名門だ。
「随分と唐突だな。……まあ、八十八家には見合いの申し込みが多いからな。もう少し年齢がいったら考えるさ」
十一は事もなげにそう答えた。
「へぇ、退魔士の家ってのも大変なんですね。俺は結婚とかモテたこと自体ないから、全然わかんないですよ」
「本質的には、矢木の家業とあまり変わんないぞ」
俺は紫煙をくゆらせながら、かるーく答えてやるのだった。




