エンドライト
⚪︎矢木剛斗視点
「ふぅ……これで終わったな。みんな、本当にお疲れさん」
ジョーさんがそう声をかけると、全員が肩の力を抜いた。ジョーさんと十一さんはポケットから煙草とキセルを取り出し、安堵の紫煙を燻らせ始める。
「幽霊相手の何でも屋さんって、こういうことだったんですね……! 俺、本気で感動しました!」
胸の奥から湧き上がってきた素直な気持ちが、そのまま言葉になって口をついた。
「まあ……やりがいのある仕事ではあるな」
俺の真っ直ぐすぎる言葉が効いたのか、ジョーさんはどこか照れくさそうに頭を掻いた。
「私も退魔師の家系に生まれたけれど、幽霊の願いを聞き届けて成仏させるなんて発想、これまでなかったよ」
鳥居も深く頷き、心から賛同の声を寄せる。
「そんな大層なもんじゃないさ」
そう言って、ジョーさんは胸元にかかるロザリオを手で掲げて見せた。その中央に埋め込まれた宝石のような鉱石が、妖しくも美しい赤色の輝きを放っている。あれ……最初に見た時は確か、綺麗な青色をしていたはずだが。
「こいつは『エンドライト』って言ってな。幽霊が自らの意志で成仏する時に放つエネルギーを凝縮したものなんだ」
「へー、そうなんですか?」
頷いてはみたものの、正直イマイチピンとこない。
「幽霊が自分の意志で旅立つ時に出るエネルギーは、実に強大なものだと発見してな。それを永久機関のエネルギーへ変換して使用できるようにシステム化したのさ」
「はぁ……」
スケールの大きすぎる話に脳が追いつかず、間の抜けた声が漏れてしまう。
「つまり、永遠に切れずに使える乾電池みたいなものよ」
「なるほど! それならすごくよく分かります!」
映子さんが分かりやすく噛み砕いて教えてくれたおかげで、ようやく理解できて大きく頷いた。
「本来、退魔師ってのは人間からの依頼を受けて怪異の類を退治するものだ。だがこの方法なら、幽霊側の依頼をこなすことで独占市場を形成できる……って寸法さ!」
ジョーさんがニヤリと笑い、親指と人差し指で丸を作ってお金のポーズをしてみせた。会社である以上、利益を出さなきゃいけないのは重々理解できるのだが……せっかくの感動的な余韻が台無しで、ちょっとだけ興醒めしてしまった。
「ふふ、ジョーさんなりの照れ隠しだから気にしないでね」
「おい映子、それを言うなよ!」
映子さんがクスクスと笑いながら明かすと、ジョーさんが速攻でツッコミを入れる。そのやり取りがおかしくて、みんなで思わず笑い声を上げた。
「ちなみに、そのエンドライトって一体どこに使われているんですか?」
ふと気になって尋ねると、ジョーさんは無言で天井を指差した。
「えっと……照明ですか?」
「もっと上だ」
「飛行機……とか?」
「もう一つ上だな」
「空の上って……もしかして、宇宙ですか!?」
「大当たりだ」
「一番高価な代物だけどね。人工衛星みたいに、エネルギーの補給や交換が難しい極限の場所で重宝されているのよ」
ジョーさんがこれ以上ないほどのドヤ顔を浮かべる。……いや、これは本気でドヤ顔をしていいレベルの凄い技術だ。
「これ、科学界とか世界的な賞をいくつも取れるんじゃないですか!?」
「そんな面倒なもの、お断りだね。それに、世間に妖怪や幽霊の存在を表立って公表するわけにもいかないだろ?」
ジョーさんは紫煙をくゆらせながら、だるそうに肩をすくめて答えた。
「ジョーさんは、こういう人だから」
そう語る映子さんの表情は、どこかとても誇らしげで嬉しそうだった。




