オカルト出版社の取材風景
⚪︎矢木剛斗視点
全員の治療を終えたところで、俺たちは地下のボイラー室から一階へと上がってきた。
「何か、建物の雰囲気が変わりませんでした? どこがどうとはうまく言えないんですけど……」
「おっ、分かるか? 俺たちの能力に感化されてきたのかもな」
ジョーさんは煙草に火をつけ、紫煙を燻らせながら言った。
「怪異がいなくなった証拠だよ。油断は禁物だが、もう大丈夫だろう」
「ジョーさんの『大丈夫』って、あんまり信憑性が……」
「ふふ、矢木くんも段々と分かってきたみたいだね。ジョーさんの適当さが」
鳥居が可笑しそうに小さく溜め息をつく。
「まあまあ。でも、今度は本当に大丈夫よ。カメラの映像にも変なものは何も映っていないから」
映子さんは苦笑いを浮かべながら、優しくジョーさんのフォローを入れた。
――妖魔退治が終われば、ここからは本来の仕事だ。ここはただの退魔集団ではなく、「オカルト出版社」なのだから。
映子さんは慣れた手つきで廃病院の内部をカメラで撮影し始めた。時には術でカメラを浮かせ、上空からのアングルも器用に収めている。
十一さんは何かアイデアが閃いたのか、手帳に鉛筆で猛烈な勢いで文字を殴り書きしていた。
鈴々莉さんも同様に、スケッチブックへ一心不乱に筆を走らせている。
二人とも一言も発さず、ただ黙々と己の作業に没頭していた。
「十一さんと鈴々莉さんって性格は正反対だけど、こういう集中する所はすごく似てるな」
「二人とも、表現者としてのプライドが人一倍高いからね」
感心しながら眺める俺の横で、鳥居が誇らしげに呟く。
「『激震!! 廃病院に潜む怪異!!』……うーん、なんかちゃうな……」
「ちなみに、雷喰いの件は伏せておいてくださいね?」
「分かっとるって」
一方では、琴さんがぶつぶつと独り言を呟きながら記事の構想を練り上げていた。こちらは十一さんたちとは対照的に、喋りながら頭を整理し、時折り涼さんに内容の確認や相談を持ちかけている。
戦いが終わったばかりの静かな廃病院に、それぞれの『仕事』に取りかからむ仲間たちの足音と声が心地よく響いていた。




