笑顔の後始末
⚪︎矢木剛斗視点
強敵だった雷喰いを無事に倒し、その場にいた全員が胸を撫で下ろす。俺自身はただ映子さんに渡された解呪のボールを投げつけただけだったけれど、みんなの役に立てたなら何よりだ。
ホッと息をついたのも束の間、背後の方から激しくモノが燃え上がる嫌な音が響いた。
……あ、しまった! 輪入道の群れのことをすっかり忘れていた!
焦って剣を構え直した俺だったが、周りを見渡すと、他の全員はすでに武器を完璧に構え終えており、戦闘準備は万全の状態だった。さすがはプロの退魔師たちだ。
「すみません……ご迷惑をおかけしました」
手前の輪入道の陰から聞き覚えのある声が聞こえた。見れば、背の低い映子さんに肩を借りるようにして、涼さんが頭を下げて歩いてくるところだった。映子さんがかなり大変そうに見えたので、俺は慌てて駆け寄り、代わりに涼さんの肩を担いだ。
「矢木くん、ありがとうね。足元の呪いが消えたから様子を見に来てみたんだけど……どうやら無事に終わったみたいね」
周囲の惨状と崩れ落ちた雷喰いを見て、映子さんもほっと胸を撫で下ろす。
「涼、身体はもう大丈夫なん?」
「おかげさまで。命に別状はありませんよ」
琴さんの問いかけに、涼さんは穏やかな笑顔で答えてくれた。その言葉を聞いて、みんなの間に安堵の空気が広がる。
「すぐ治療しますね!」
鳥居が再び金色の霊鳥――ピーちゃんを喚び出すと、怪我を負った全員の治療に取りかかった。
「ありがとうございます、小夜さん。……さてと」
深々と礼を言った涼さんは、痛みが引いた腕をすっと上げ、自身の術で輪入道たちを自在に操り始めた。標的に指定されたのは、地面に散らばる雷喰いの残骸だ。
輪入道たちが残骸の周りを激しく走り回り、口から猛烈な炎を吐き散らして骨の欠片を徹底的に焼き払い始める。
「なあ鳥居……涼さんって、自分が怪我させられた仕返しにああいうエグいことやってんのかな?」
俺がそっと鳥居の耳元で囁くと、彼女は耐えきれずに思わず吹き出した。
「違う違う! あの手の強い怪異はね、骨の欠片がほんの少しでも残っていると、将来的にそこから再生して復活したりするのよ」
「だから、焼き尽くした後に聖水をかけて完全に仕上げをして終わり、ってわけだな」
隣からジョーさんが分かりやすく補足してくれる。
「ええ、絶対に……骨はおろか、灰の一粒すら残しませんよ」
車輪の炎に照らされながら、涼さんは満面の爽やかな笑顔でそう言った。……その完璧すぎる笑顔の奥にある執念が、正直言ってちょっと恐ろしかった。




