青春の形
⚪︎矢木剛斗視点
俺の目の前で、雷喰いの巨体がパラパラと音を立てて崩れ落ちていく。激闘の終わりを実感し、自然と拳が上がった。
「やったぜ、鳥居!」
そのまま鳥居の方へと振り返った俺は、思わずその場で固まってしまった。彼女が泣いているのだ。それもただの涙ではなく、ポロポロと頬を濡らすほどの号泣だった。
「矢木くんが……私を庇って死んじゃったと思った……。その後も無茶しないでって言ったのに、全然聞いてくれないし……っ」
顔を手で覆い、そのままその場にへたり込んでしまう鳥居。俺は本気で焦りに焦った。女子を泣かせた経験なんて、これまでの人生で一度だってないぞ!
「あー、矢木くんが小夜ちゃんを泣かせたー」
琴さんが、まるで小学生のような茶化す口調で言ってくる。
「すまん鳥居! 今度からは絶対に無茶しないから!」
いや、この稼業で『次』があるかは分からないけれど。オロオロと狼狽えながら声をかける。そうだ、こういう時に雰囲気を変えるには――。
「よし、鳥居! ハイタッチだ!」
俺はパンッと手を高く掲げた。
「ハイタッチ……?」
「ほら、野球の試合に勝った時とかにやるやつだよ!」
鳥居も納得がいったのか、目を赤く腫らした照れくさそうな顔で、そっと手を上げてくれた。
「……なんか、青春っぽいね」
「俺も野球以外でこんな青春があるとは思わなかったけどな!」
そのまま、パチンと互いの手を叩き合わせた。
「鳥居も、まだ子供みたいな部分があったんだな。普段は俺たちに合わせて無理をしてたのかもしれないな」
「ふふ、案外矢木くんは、小夜ちゃんにとって本当の『王子様』になるかもな」
少し離れたところで、十一さんと琴さんがしみじみとそんな会話を交わしている。
「俺、今日の夜のことは一生忘れないぜ! 一生に一回きりの夜……ワンナイトだ!」
「そうだね。私たちのワンナイトだね!」
おお、なんという名言だろう。……あれ? なぜか琴さんがお腹を抱えて大爆笑し始め、十一さんは苦虫を噛み潰したような渋い顔をしているぞ。
「宮板、鳥居に意味を教えてやれ」
「十一さんが言えばええやんか」
「俺が教えたらセクハラになるだろうが」
「それもそうか」と納得した琴さんが、鳥居の耳元に身を寄せてコソコソと何かを囁いた。すると、鳥居の顔が瞬く間にゆでダコのように真っ赤になり、ジト目で鋭くこちらを睨みつけてきた。
「矢木くんのエッチ!!」
――バシィッ!!
乾いた音とともに、理不尽な平手打ちが俺の頬に飛んできた。
……えっ、なんで!?
「あははは! 最後までバッチリ決めや、王子様!」
ボイラー室に、琴さんの大爆笑がどこまでも響き渡るのだった。




