繋がれた希望
⚪︎ジョー視点
「おい鈴々莉、大丈夫か!?」
「大丈夫だけど、足が動かない……っ!」
鈴々莉も必死にもがいているが、足首から下が、がっちりと黒い影に固められているようで、一歩も動けない状態だった。
ビリビリとした電気の鈍い痛みが身体を駆け巡る。俺たちは二人そろって棒立ちのまま身動きが取れずにいた。……まあ不幸中の幸いなのは、敵である輪入道どもの動きも止まっていることくらいか。まったく、なんて無差別広範囲攻撃を繰り出してくれやがる。
「ジョーさん! 鈴々莉さん!」
大声で俺たちの名を呼ぶ声が響き、振り向くと矢木がこちらへ走ってくるのが見えた。
「お前、どうやって動いて……いや、今はいい! 映子から何か預かってないか!?」
「当たりです! なんか呪いを解くボールみたいなのを預かってきました!」
矢木が手に乗せて見せてきたのは、中身が透けて見える透明な球体だった。俺と映子が共同開発した呪具だ。中には極限まで濃縮した聖水が詰められている。さすが映子、こちらの窮状と戦局を完璧に読み切っているわけだ。
「俺たちは後でいい! 前線へ届けてやってくれ! あっちも相当苦戦しているはずだ!」
俺の言葉から瞬時に状況を察し、隣で鈴々莉が大きな矢印の術式を筆で描き始める。
「……って鈴々莉さん、その姿は!?」
全身が墨で真っ黒に染まった鈴々莉の姿を見て、矢木が思いきり目を丸くした。
「恥ずかしいから、あんまジロジロ見んな!!」
すまなそうに謝る矢木から、鈴々莉はフイと視線を落とす。
「よしっ、できた! 矢木っち、矢印に乗って! 全力で飛ばすから!」
矢木は軽快にジャンプし、墨の矢印の上へと飛び乗った。本気で呪いの類に対する異様な耐性を持っているんだな、あいつは。
「行けーーーーっ!!」
鈴々莉が叫ぶと同時に、漆黒の矢印は人が走るよりも遥かに速いスピードで一気に前線へと突き抜けていった。
前線へ向かう矢木を見送ると、俺はポケットから手持ちの聖水を取り出し、自分の足元へ回しかける。ジワジワとではあるが、固まっていた黒い呪いが解け始めていく。
「ねえ、ジョーさん……みんな無事だよね?」
いつもの強気な態度はどこへやら、鈴々莉が泣き出しそうな声で尋ねてきた。
「……まあな。信じるしかないさ。何、あいつらだって簡単にやられるような奴らじゃないだろ」
俺は足元の呪いを払いながら、静かにそう答えるのだった。




