救いのストライク
⚪︎鳥居小夜視点
「矢木くん……!?」
直撃を受けた矢木くんは凄まじい衝撃に吹き飛ばされ、地面を無残に転がっていった。あの規模の雷撃だ、普通なら即死に違いない。あまりの光景に耐えきれず、私はぎゅっと目を瞑った。直視するのが怖かった。
退魔の家に生まれ育った私は、この厳しい稼業に長く身を置いている。危険と隣り合わせで、その時の覚悟だって、とうにできているつもりだった。
けれど、矢木くんは違う。彼はただのクラスメイトなのだ。今日も学校で同じ授業を受けていた、どこにでもいるはずの一般人なのだから。
たまたまうちのアルバイトに応募して、巻き込まれてしまっただけなのに――。
「い……」
えっ? 今、声が聞こえた……?
「いってーっ!!」
聞き覚えのある大声が響き渡り、私は驚きで目を丸くした。そんな!!まさか!!何で!?色々な感情が頭を巡る。
見れば、矢木くんが後方からボールのような物体を勢いよく投げつけるところだった。さすが野球部のレギュラーと言うべき抜群のコントロール。ストライク送球で投げ込まれた物体は私のすぐ近くに着弾し、割れ目から一気に煙を噴き出す。その煙が触れた瞬間、私を拘束していた禍々しい影と呪いが一気に霧散していった。
「映子さんに解呪の道具を渡されて来たんだ! 細かい話は後回しだぞ!」
血を流しながらも立ち上がった矢木くんは、剣を力強く構え直すと、群がる骸骨どもをガムシャラに薙ぎ払っていく。
一瞬、目の前の状況が理解できずに放心してしまった。けれど、身体を縛る枷はもうない。私はすぐさま地を蹴って立ち上がり、手に握った棍を力強く振るうのだった。




