一瞬の違和感
⚪︎鳥居小夜視点
十一さんの一撃により、敵に大きな傷を負わせることに成功した。雷喰いの攻撃は明らかにスピードが落ち、生み出される骸骨の数も減っていく。
「クーちゃん!」
八咫烏のクーちゃんに声をかけると、素早く滑空して敵の顔面へ翼の羽を飛ばして目くらましを仕掛けてくれた。その隙に一気に足元へ潜り込み、胴体の骨へ渾身の力で棍を叩きつける。硬い感触とともに、徐々に骨へヒビが入っていくのが分かった。
「何とかなりそうやな!」
琴さんも足元から生み出す風の力で連続の蹴りを叩き込み、着実に敵の身体を削っていく。
「油断は禁物だぞ!」
十一さんは迫り来る周囲の骸骨を、槍の一閃で豪快に薙ぎ払っていた。
勝利が見えかけたその時――雷喰いの巨体から、不吉な放電音がパチパチと鳴り響いた。巨大な口の中に、先ほど放たれた雷撃のエネルギーが再び猛然と滾りはじめる。強力な一撃を再び放つ気だ。
「電撃が来るぞ! 気をつけろ!」
十一さんが後方へ向けて警戒を呼びかける。
(顔の動きが緩慢だ……! いかに威力があろうとも、予備動作が大きいなら充分にかわせる。まずは安全に電撃をやり過ごしてから、一斉に総攻撃を仕掛けよう)
頭の中で素早く作戦を組み立て、攻撃を見極めるために雷喰いを凝視する。
――その時、強烈な違和感が走った。
口内で弾ける電気。先ほどは青白い雷光と火花の色だった。しかし今回は、その輝きの中に深淵のような黒が混ざり込んでいる。禍々しい、呪いのような黒。
そして次の瞬間、雷喰いはゆっくりと下――私たちの足元へ向けて頭部を向けた。
(まずい……目標は私たちじゃない、地面だ!)
一瞬で本能的な危機を察知し、私は喉が張り裂けんばかりに叫んでいた。
「まずい!! 飛んで!!」
叫ぶと同時に飛び上がり、差しのべられたクーちゃんの足に掴まって身体を宙へ浮かせる。私の声に反応した琴さんも、咄嗟に足元から巻き起こした風の力で浮き上がった。
直後、雷喰いは禍々しい黒を纏った放電を、勢いよく足元の地面へ放ち放った。凄まじい衝撃音とともに電撃が広がり、それと同時にどろりとした黒い影が津波のように地表を覆い尽くしていく。
「ぐっ……動かん!?」
地に足をつけていた十一さんの足元に黒い影が絡みつき、その場へ完全に固定してしまった。影を通じて電撃のダメージがジワジワと身体を蝕んでいく。ただの物理的な攻撃じゃない……多分、あの黒い影は強力な呪いの一種だ。まさかこれほど器用な広域足止めを使ってくるなんて……!
「なになに、何これ!?」
「くそっ、足が……!」
後方に控えていた鈴々莉さんとジョーさんまでもが、逃げ場を失って黒い影に捕まっているのが見えた。空中へ逃げられる能力を持つのは私と琴さんくらいだ。後衛の二人まで巻き込まれるのも無理はない。
一瞬の判断ミスが響き、戦局は一気に絶望的な窮地へと陥ってしまった。




